十人十色なスタイル
「あら、流石に攻撃職が三人もいるだけあって早いわね」
ベルセルクの拠点で、杏子さん作の和菓子をつまみながら三人でのんびりしていた私たちの耳に、紅葉さんの落ち着いた声が入ってきた。
別にチアたちが飛龍討伐に掛かった時間も長いわけではない。杏子さんの威力重視で調整されたスキルのおかげで、私たちはチアたちよりも早く拠点に戻って来ることが出来た、要するに杏子さんが強かったということなのだ。
「あらあらっ、そのお菓子私の分ももちろんありますわよね?ねぇ?」
「そう言うと思てな、ほれ」
「気が利きますわね杏子は本当に!」
「緑茶もあるで」
紅葉さんは以外にも和菓子が好きらしい。口調から勝手に洋菓子のイメージが強かったのだ。
いやしかしこの杏子さんが作った大福、冗談抜きですごく美味しい。コンビニやスーパーで売られているものでは絶対に味わえない手作りならではの素朴で温かみのある味や食感、私は大福をこれ程までに美味しいと感じたことは生まれてこの方一度も無かったかもしれない。
杏子さん曰く、これはあくまでこの世界にある食材で作った大福に限りなく近い食べ物らしい。たが完成度とこだわりが感じられる目の前の食べ物は、私を含め口にした全ての人が大福だと認めるだろう。
「チアお疲れ様」
「お姉さんもお疲れ様です」
クエストに向かう時は涙目だったチアだが、クエストで何かあったのだろう、今はいつもの笑顔に戻っていた。
「紅葉さん、思ったより危ない人じゃないみたいです」
「おぉ無事だったんだ」
「用心するに越したことはありませんけど」
それからは互いのクエスト攻略の成り行きを語り合いつつお茶や和菓子を摘む会になった。
船長さんの職業は剣士で、錨を模した武器を鎌のように振り回す特殊な戦闘をしていたらしい。チアはそのどこまでも好きなものを推していく性格に憧れたんだとか。
紅葉さんは特に特殊な独自のスタイルを貫いていたようで、最近のアップデートで追加された投げナイフを投げずにそれをメインの武器として使っていたらしい。現状投げナイフには各属性が付与されたものがあり、非魔法職勢の属性スキル系を使用した直後などに使用されることが多い。ただあらかじめ敵の弱点属性を知っておかなければその威力は微々たるものとなるため、私のような初見の緊張感を味わいたい人向けではないのである。投げナイフの仕様として、自分の手から離れた後に物体に触れ、離れることで消える。そもそもナイフを手放さなければ良いという悪知恵にも近い考えを紅葉さんは実行しているのだ。
そしてシュナイデンとの相性が非常に良かったとチアは言っていた。
紅葉さんは自らの指と指の間に三本ものナイフを挟み込み、引っかくような攻撃を一度の接近で何度も繰り返すという。これが可能なのはナイフが全武器の中で最も軽いからだと言える。私もこの前試しに持ってみたが、重めのシャーペンよりやや重いくらいだったことを覚えている。
投げてよし切ってもよしのユニークな戦い方を私も見てみたいと思った瞬間だった。
「僕ほとんど戦えなかったよー......」
「まいいじゃねぇかそういう時があってもよ」
「豆粒さんには丁度良い扱いですわ」
「いやぁうちはユキ子と二人で戦いたかったんだけやけど」
「つまりそう言うことですわね」
「そうかー......そうなのかー.......」
「少なくても嫌われてはいないだろうから安心しろよ.....くくく」
ベルセルクのメンバーは仲が良い....らしい。
短いですがきりが良いのです。ごめんなさい。




