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始まりの感情
──血塗れた我が家に転がった両親の亡骸に、体の力が抜けていく。
先程まで逃げろと叫んでいた、自分を守ろうと必死になっていたその表情が能面のように失せていくのをただ見つめながら、少年は恐怖、責念、絶望、そして諦念を味わっていた。
次は自分がこうなる番だと。
目の前に、それを執行するモノの存在をどうしようもなく認識しながら。
……と、それを見つめる影が、不意に姿を消す。
糸が切れるように霞んで黒く塗りつぶされていく意識の中、響くサイレンと足音は、新たに少年に安堵と、怒りと、虚無感を味わわせた。