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幼馴染みは爆死するのが定め  作者: 明日今日
最終章 朝はきたけれど
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遺言

 でも次の瞬間、突然苦しみだしたのはウロボロスの方だった。


「薬は注射より飲むのに限るだろう! ワン公! 猛毒のお味はどうだ」


 そっか、外が駄目なら中。口の中で直接デッドリーポイズンの発射機を使ったのか。

 苦しんでいる間に海人は口から左腕を引っこ抜いて代わりに右手に持っていたショットガンをウロボロスの口の中に突っ込んで発砲。ようやくマトモなダメージが通った。奴が怯んで距離を取る。


「ウゴォ。ガハァ。ナゼだ? ナゼ? オマエはヘンイしない? ヤツか! アマツにカマレテイタノカ! ヤツのウィルスがキサマをマモッタのか!」


 ウロボロスは海人を睨みつけた。彼の破れたシャツとブレザーの間から見えた首の左側に噛まれた痕みたいな赤い痣が見えた。鈴音の奴、どさくさに紛れて噛み付いてたのかよ。いつだ? あいつが変異してすぐか! 怒りかよく分からないどす黒い感情が湧いてくる。あいつ、生きてたら絶対あたしの手で殺す。同時に月山の態度がおかしかった理由も分かった。それでか。クソォ!

 あたしは怒りを給油ホースをウロボロスに向けて構え、レバーを引く。勢い良くガソリンが放物線を描きウロボロスを濡らす。


「くたばれ!」


 あたしはAKを放物線を描くガソリンに向けて撃つ。引火したガソリンは火炎放射器となってウロボロスを襲う。幾ら炎に強くてもこれには耐えられないだろう。

 ウロボロスは頭部を、全身を炎に包まれ、もがき苦しむ。炎じゃなくて酸素が供給できないのが効いてるのか。


「カトウなセイブツであるニンゲンごときに」


 奴は頭部の火を消して憎しみの声をあげる。

 しかし、ガソリンが尽きたのか、火炎放射器の火が消えてしまった。クソ。ふざけんなと思ったがこれ以上はあたしも熱くて持っていられなかったからどうしようもないか。


「大地、こいつは見た目より軽い! 巨躯に伴うだけの重さがないんだ!」


 左手を止血する事も出来ずに燃え盛るウロボロスから距離を取る海人が叫んだ。質量保存の法則を無視できなかったのか。見掛け倒しなのか。なら次の手でとどめを刺す。


「獣の姿になってもしょっぱいのは変わりなしか! 鮫谷!」


 あたしは消火栓へと走る。


「キサマからだ! キサマからコロしてやる!」


 怒り狂うウロボロスがあたしを追ってくる。上等だ。どっちが怒ってるかはっきりさせてやる。乙女の怒りを思い知れ!

 消火栓に辿り着いたあたしは強引に栓を外し、消火ホースを叩きつけるようにウロボロスに投げた。消火ホースは水を撒き散らしながら辺りを濡らす。


「ザンネンだったな。これでコンドこそオワリだ」


 その巨躯の一部を炭素化させながらウロボロスは前脚の爪であたしを殺せる間合いに入り込んだ。サッサと殺せばいいもの間抜けな奴。


「そんな事はないよ。大成功と言えるし」


 あたしの言葉にウロボロスは怪訝な表情を浮かべている。いや侮蔑か、ハッタリだと思ってる。その間に消火栓の上へと登った。


「海人!」


 あたしの意図に気付いていた海人がショットガンを発砲した。勿論、ウロボロスにではない。夜間照明のコードに向かってだ。

 そして奴が気付いて驚愕してる間に水で濡れた範囲から逃げ出す。同時に散弾で引きちぎれたコードの先端がウロボロスを中心に濡れたコンクリートの上へ落ちた。

 激しい音がしてウロボロスの断末魔とそれを現すかのように夜間照明が全部消えた。残っている光源はガソリンをばら撒いた影響でまだ燃えているヘリポートの一部と月明かりだけだった。

 重い体を引きずりながらあたしは海人の所へと辿り着いた。彼の左腕には大きな歯の痕が複数あるが指を動かしているのを確認出来るから見た目ほど酷い傷ではなさそうだ。なら問題は【e】だろうが奴の言っていた通りなら平気なんだろう。


「大丈夫……と言うか、いつ噛まれたのよ!」


 あたしは海人のブレザーの右袖を引きちぎって応急処置的に左腕全体を縛る。本当にしないよりはマシな処置だけど。


「多分、四日目。起きた時にはもう首がと言うか、肩が痛かった」


「言えよ!」


 あたしは逆ギレしていた。──やっぱり恋愛脳で感情的な女だ。自分の事ながら頭が痛くなる。多分、あたしより頭が痛いのは眼前の海人だろうけど。


「言ったら鈴音が誰かに殺されてるだろう」


 否定出来ないのが辛い。と言うか、そうなってるだろうな。


「ナナガワとハチマンごときニ……このシンカはマチガイか」


 ウロボロスの声にあたしと海人が振り返る。奴は全身をボロボロにされながらも立ち上がっていた。AKの銃口を向けて引き金を引くが弾が出ないのでブレザーのポケットから拳銃を構えた。

 海人は兎川が持っていた小さなシャベルを構える。あっちも弾切れか。これで勝てるのか。


「あんたにはお似合いの姿でしょう」


 あたしは苛立って言い返してやる。ハッタリでも強気にいかないと──


「オマエタチはニンゲンジャナイ。イズレオモイシル」


 ウロボロスは襲って来ずに口を開いた。


「ニンゲンからミレバ、キサマたちもバケモノだと言うジジツに。ソトにデテ苦しむがいい」


 ウロボロスは哄笑を上げながらその眼から光を失い、地面に倒れ込んだ。そしてデッドリーポイズンを食らったクリーチャーたちの動画と同じようにその姿を液状化してこの世から消えた。

 何故かその呪いの言葉を聞いて海人は笑っていた。あたしには彼が笑う意味がちっとも理解できない。化物に成り果てた鮫谷の末期の言葉だけどハッタリでも間違いでもないのに──


「何がおかしいの?」


「いや、つまらない事さ。こんな奴に諭されるとはね」


 その要領を得ない回答にあたしは怪訝な顔をしていたが近付いてくる爆音に顔をあげる。ヘリだ。自衛隊のヘリ。


「今になってくるなよ。あと5分早ければこっちは楽だったのに」


「それを言わないであげようよ。……いや、言うべきか。せめて後少し早ければ──」


 あたしはライトでヘリに合図しながら兎川の事を浮かべて呟いた。

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