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幼馴染みは爆死するのが定め  作者: 明日今日
最終章 朝はきたけれど
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分断

 あたしたちはヘリポートへのエレベーターに向かって移動を開始した。

 とにかく北側のエレベーターに乗らないとヘリポートには辿り着けない。先程みたいな展開にならないように鈴音の耳を頼ると同時に警戒も怠らない。

 自分だけになったら立ち直れないかもしれないがそれでも脱出しないと。兎川の為にも死ねない。あたしはAKの銃身を強く握り絞める。


「思い詰めてないで行くわよ」


 鈴音が先を譲った。そんなにあたしは不安定に見えるのか。


「先に行けよ」


 海人にまで促されてしまった。


「分かったよ。そんなに心配されなくても大丈夫。あたしは死ねない理由が出来たから」


 言われた通り先頭に立って進む。地震なのか建物の揺れが酷い。月山の言ってた実験の影響で建物にダメージが出ていてもおかしくない。


「この揺れなんだろう」


 あたしは天井を気にしながら不安になる。


「倉庫で爆発させるなと言ってたのが正解だったと言う事かも」


「あんまり、深く真意を問いたくない発言だな」


 海人が一番後ろで後方を警戒しながら嘆く。


「推測だけど浄水設備とこの研究所の地下が繋がっているなら爆発の余波で研究所の地下全体にダメージが出てても不思議じゃない。その影響で建物の重心に歪みが生じたとしたら倒壊してもおかしくない。それにここは元は炭鉱だったからそれもあって地盤が崩れやすくなっているかも」


 鈴音の推測は笑えない展開を想像してしまう。逃げ出す前に山の土砂に埋もれる羽目になるとか洒落にもならない。


「なんでそんな所に……実験に失敗した時には全部土砂の下に埋めるつもりだったのか」


「そう考えるのが自然でしょうね」


 鈴音の冷たい声がすぐ後ろでする。


「急いだ方が良いのは確かだな」


 廊下の角で振り返ると海人がこちらに背を向けて肩を竦めていた。

 揺れの間隔が短くなってきているような気がする。


「大地、次のT字路を右だ」


 廊下へと飛び出し、エレベーターへの道である右側の通路を覗く。月山が言ってたとおり準備してくれていたのかレウケも他のクリーチャーたちの姿も見当たらない。銃弾が少ないので出来るだけ戦いたくない。

 あたしはエレベーターがあると言われた方に進む。目的のエレベーターはまだ見えない。鈍い音で獣の叫び声も聞こえてきそうな振動が建物を襲う。

 何故かあたしは嫌な予感がして振り返った。

 鈴音が手前を歩いていた海人を両手で思い切り突き飛ばした。突然の事に彼は反応できずに転がるように床を滑る。

 あたしが抗議の声をあげようとした瞬間に海人が居た辺りの天井が崩落し、鉄筋が音を立てて通路を塞ぐ。

 埃を上げて埋まる通路、視界が悪くて鈴音の姿がよく見えない。


「なんで俺を助けた」


 自分の負った怪我と痛みを無視して立ち上がった海人の声には怒りが含まれてた。


「咄嗟に体が動いただけよ。深い意味は無いわ」


 微かに煙が晴れた隙間と埋もれた瓦礫の隙間から向こうが見える。そこから見える鈴音は落ちてきた鉄骨には挟まれなかったようだが左腕から赤い糸を垂らしていた。天井が落ちてきた時に怪我をして出た血だろう。

 そして鈴音が愛用していたコンパウンドボウも壊れたのか床に転がっていた。

 この瓦礫を避けてる暇はないし、そもそも素手で撤去できそうには思えない。


「私なら大丈夫。身体能力で逃げ回れるし、この聴覚があるから別ルートで追いかける。だから先に行って」


 傷を負い、武器を失った鈴音はなんかミステリーとかの最後に建物に取り残されて死ぬ犯人役のヒロインみたいで悔しい。


「絶対に追いかけてくるよな? 姿を消すのは無しだぞ」


 不安そうに海人が鈴音を見た。それがあたしじゃないのは悔しいがさっきから聞いてると不吉な事しか言ってない。


「貴方から消えたりしないよ。やりたい事が出来たから。それに借りを返してもらってない」


「まだあれ貸しなのか?」


 こんな時なのにそんな事しか言わない鈴音に海人が少し呆れていた。

 聞いてると本当にヒロインみたいな事を言っている。


「当然じゃない。海人こそ気を付けて上の方で咆哮が聞こえる。動物系クリーチャーかも」


 悔しがってる場合じゃなかった。それが当たっているなら最後の難関が待ち構えてる事になる。


「駆除してヘリポートで待ってる」


「うん。了解した」


 鈴音は親指を立ってみせた。それを遮るようにまた天井が落ちて完全に通路が埋まってしまった。


「行こう。ここで埋まりたくないだろう」


 あたしが声を掛けあぐねていると海人がショットガンを構え直してエレベーターの方へと歩き出す。


「あーあー。恋敵の為に猛獣駆除なんて笑えないな」


 自分を鼓舞するのも兼ねて嫌味のように大きな声で言ってやる。海人の背中が苦笑してるように見えた。

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