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幼馴染みは爆死するのが定め  作者: 明日今日
第十四章 平静と言う名の仮面は剥がれ落ちる
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砕けた心

 兎川の助けを借りてあたしは休憩室のソファーに座り込んだ。彼女から海人と鈴音の話を聞いた時よりは酷くないが心がここに無いような感じだった。海人が今まで告白の返事を返さなかったのは正解だと我ながら思う。

 鈴音は椅子に座る勇儀の方を気にしている。海人は誰とも話したくないのか、少しでも体力を回復したいのか、目を瞑って畳の上に寝転がっている。


「落ち着いたか」


 あたしから海人と鈴音を遮るような位置に座る兎川が聞く。心遣いはありがたいけど信用されてないのかとも思わなくもないがそれほどあたしの取り乱し方がヤバく映ったのだろう。


「あんまり。正直に言えばなんか行動してる方が気が楽ではある。研究所まで残り何キロだったけ?」


「1kmちょっとくらいじゃないかな。この建物を介して行けばもう少し距離は稼げると思う。……鈴音の受け売りだが」


 最後の方で言葉に詰まったのはそのせいか。


「なあ、自分が口を挟む事じゃないけどちゃんと返事して判断しただけでも八幡は誠実な奴だと思うぞ。今は誤魔化したり出来たんだし」


 あたしは唇を噛む。言ってる事は間違いではない。むしろ正しい。


「何もこんなタイミングで話さなくても……」


「多分さ、巫女(ツスクル)との戦いでここから死ぬかもしれない可能性を考えたんじゃないかな。伝えられない想いより辛くても伝わった想いの方がいいと判断したんじゃないかと思うんだ」


 恐らく兎川の判断で間違いないと思う。でもあたしにはどうしても認めたくないという部分が引っかかってる。


「相手が死んで何も聞かないでその人の幻に囚われ続けるよりは吹っ切って欲しかったんじゃないか。恋愛経験が殆どない自分が言うとあれだけどさ。そういう判断をしてた八幡に対しては認めるべきだと思う。その結果がどうであれ……」


「そんな優しさ、ありがたくないよ」


 兎川にだけ聞こえる声で呟く。確実に鈴音は聞こえているだろうなとは思う

「そうだな。でも欺かれ続けるのとどっちが良いかと問われたら那名側はそっちの方が良いのか? ずっと欺かれ続けるのが……或いはずっと自分を欺き続けるのが」


 あたしはその問いに答えられなかった。(そら)姉ちゃんが言ってたのはこの事なのだろうか。そして、海人はそれを乗り越えたのだろうか。遠くに置き去りにされてしまったような気がする。

 勇儀に銃口を突きつけた時の兎川みたいな顔をしていたのだろうか。そんな風に考えると自分が弱い人間に思えてくる。少しは姉の言う事を聞いていたらこんな状況にはならなかったのだろうか。


「それに折角ここまで来れた戦友たちにこんな所で仲違いして欲しくない。こんな風に考える自分は間抜けだろうか」


 兎川が少しはにかんだ笑顔を見せた。凄く眩しい。


「だからさ、勝手なお願いだけど最夜を出るまででいいんだ。ちょっとプッツンしてた那名側で居て欲しいんだが」


 だが口から出た言葉は割と酷かった。


「ちょっとプッツンしてた那名側──」


 あたしは思わず復唱してしまう。


「あたし、そんな風に見られてたのか」


 割とショック。確かに変人那名側やプレッパー那名側とか散々に言われてたけど──


「あと割りとオヤジ臭い。匂いとかじゃなくて拘りが」


 失恋もショックだが兎川の追い打ちも酷い。地味に凹む所が割りと──


「……喧嘩売ってる?」


「一応、励ましてる。少しでも気を逸らせた方がマシだろう」


 真顔で言われてしまった。あんまり嬉しくない。


「言わなくていいから。少し休ませて」


「分かった」


 兎川はあたしの目の前から離れようとはしない。それどころか右手の小指を出してくる。


「ほら、指切り」


「色気のない話だな」


 やらないと休ませてくれなさそうなのであたしは右手の小指を差し出す。


『指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ます』


 兎川があたしの小指に小指を絡めて声に出すのでこっちも小さく声に出して応じる。


『指切った』


 それと同時に兎川があたしの小指を離した。こいつは妙にこういう事に拘るよななどと思う。


「暫く休むよ。悪いけど警戒をお願い」


 あたしはソファーに体を預けて瞼を閉じた。

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