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幼馴染みは爆死するのが定め  作者: 明日今日
第十二章 四日目(3)生存への道
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見捨てるという選択肢

 ワゴン車が大通りに入った時だった。


『誰か聞こえますか? 助けて下さい』


 近くのラジオ局からなのか、スピーカーから周囲に助けを求める声が聞こえてくる。これが本当に助けを求めていてもレウケやエクセキューショナーたちを引き寄せるだけだ。

 多分、位置的にFM最夜の入ってる建物かもしれないが助けに行くのは躊躇われる。


「助けに行かないと」


 そんな事を口にする勇儀が声の聞こえてくる方にハンドルを切ろうとして助手席の海人がそのハンドルを握って阻止する。


「本当に助けを求めているとは限りませんから……それにこんな状況で大声を出したらレウケを引き寄せるようなものです」


 海人は自分に言い聞かせるようにゆっくりと話す。


「先生、残念ながら私たちは研究所へ向かう途中で誰かを助けてる余裕は無いから無理です。私たちは基本的にただの学生なんですから」


 鈴音も海人を援護するように口を挟む。あたしも助け舟を出すべきなんだが出来れば勇儀と話したくない。


「でも助けを」


「貴女はレウケを殺せますか? 私が知っている限りでは貴女は一度も武器を使ったことはないですよね?」


 鈴音は敢えて殺すと言う表現を使った。人間的には死んでいると見て間違いでは無いと思う。


「それは、そうですが」


「貴女は誰かを助ける為に命を賭けられますか? 例えばこの中の誰かが死ぬリスクを背負っても」


 鈴音は感情を殺した声で問う。そのやり取りを見てるあたしですらも震えそうな凄みがあった。

 車外を見ると周囲に居たレウケたちがFM最夜の入っていると思われるビルの方へと向かって動き出して行く。正直な話、レウケがあたしたちから興味を失ってくれるのはありがたい。でもそう考えるのは罪悪感が麻痺してる証左だろうとは思う。


「……それは」


「ハッキリと答えられないのは出来ないという意味ですよね?」


 返答に困る勇儀に追い打ちをかけるように鈴音が問う。


『お願い! 誰か助けて! いやぁ! 来ないで! 死にたくない!』


 あたしたちが押し問答してる間に状況は悪くなっているのか、DJらしき女性の声に悲壮感が増してくる。


「でも見捨てたら……」


「この叫び方から推察しますが今から言っても間に合わないと思いますよ」


 あたしたちに聞こえない音まで聞こえるのか鈴音はサラリと間に合わないと告げる。


「でも」


 まだ抵抗があるのか勇儀は反論しようとする。

 黙っている兎川はドラグノフ狙撃銃を触って勇儀から見えないように薬室から銃弾を抜いてマガジンを取り外す。


「自分の罪悪感の為に私たちを危険に晒すんですか? 教師のする事じゃないですよね?」


 鈴音の容赦無い言葉が続く。


「そ、それは……そうですが……」


 あ、焦れたい。勇儀を殴って気絶させる訳にもいかないし──


「そこまでにしてもらえますか。研究所へ急ぎますから車を出して下さい。これは命令です」


 兎川が安全装置を掛けてドラグノフ狙撃銃の銃口を運転席のシートに向ける。勿論、こんな状態で弾は出ない。そもそも暴発した時に備えて弾が入ってないのだから。

 海人と鈴音は何も言わないで兎川の次の言葉を待っているのか黙っている。


「撃つんですか?」


「従ってくれないならそうなります。とても残念ですが」


 兎川の瞳には感情が読み取れない。

 弾が入ってない事を知ってるけどあたしが勇儀の立場なら生きた心地がしない。

 勇儀は撃たないと思ってるのか殺されないと思ってるのか反応が鈍い。実際に兎川に撃つ気があるなら既に撃っているだろう。


『たしゅけて! たしゅけて!!! ヤダヤダ!』


 そこでスピーカーから聞こえてくる声は途絶えた。

 バックミラー越しに映った勇儀がオロオロしてるように見えた。


「俺は男だから間違えているかもしれませんがその左手の薬指に填めてるのは婚約指輪ですよね。先生にも待ってる人が居るのなら尚更誰かを助けている場合ではないと思うんですが違いますか?」


 膠着状態を見かねて海人が再び口を開く。優柔不断さを責めるよりも感情に訴えた方が良いかもしれない。


「……はい。その通りです。ごめんなさい。研究所へ向かいます」


 海人の言葉に勇儀は諦める。


「分かってますよね」


 念を押すように海人が問う。勇儀がはいと答えたのを確認してから海人はハンドルから手を離した。

 ワゴン車はノロノロと北へ向かって動き出した。それを見届けてから兎川は狙撃銃の銃口をシートから離して両手で抱え込んだ。


「申し訳ありません。自分はどうしても研究所に行きたいんです。生きて辿り着きたい。この事件の真実を知りたい」


 兎川は目を兎のように目を赤く腫らしている。そんな姿が親からはぐれて迷子になった幼子みたいに見えた。

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