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幼馴染みは爆死するのが定め  作者: 明日今日
第十二章 四日目(3)生存への道
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月山多佳子からの提案

Side

月山多佳子視点

 多佳子は目の前にあるディスプレイを覗きながら笑った。脱出の為の結社への渡りは付けた。自分が持っている対【e】用のデッドリーポイズンを提供すればこの最夜に結社が自分一人を助けにくる価値は充分にあるだろう。

 あとしなければならない事は生き残っている者にチャンスを与えてやることくらいだ。

 市内の防犯カメラを隈なくチェックしてみたが生き残ってる者は少ない。この部屋にある複数のディスプレイには押し潰されて原型を留めていない公衆電話ボックスから流れる血、街を逃げまわる海賊みたいな髭の男性警官、そして、車で消防署へ向かった学生たちが映しだされている。

 とりあえず、脱出に必要なデータとルートは各自の端末に送信したがちゃんと届いているか──

 自動ドアの電子ロックを開けて物部が入ってきてすぐにそれを閉める。


「ずっと見ていたんですか?」


 物部はまるで多佳子が何もしてないかのように言う。


「やるべき事はやったわ。貴女こそ外には出ない方が良いわよ。あれはそんなに残っていないのだから」


 多佳子はディスプレイの隣りにある鏡で物部の様子を伺う。本来、こんなに度胸がある奴とは思えないが事が起きてからの態度がおかしい。事件直後の高揚のせいかとも思ったがこいつはそんな奴ではない。

 病院に入った時の様子を覗かせてもらったが最夜学園の女子高生たちはどこかプッツンしてるから行動できているのだろうけど、こいつはどこか違う。今までの間抜けな行動は演技だったのだろうか。

 デッドリーポイズンを保有している多佳子が化物だらけと化した研究所で生き残るのは当然の理屈なのだが物部の奴が生き残っているのは腑に落ちない部分がある。

 物部が何をしていたかを調べる必要があると多佳子は感じた。


「あれって何なんですか?」


「あれとは?」


 物部の言葉に多佳子は車椅子を反転させて彼女の方へと振り返った。


「あの拳銃のような物に入ってる薬品です」


「機密だと言った筈だけど……それにクリーチャーたちを殺せるならなんでも良いじゃない。中身なんてさ」


 はぐらかす多佳子の言葉に物部が微かに苛ついているように見える。


「でもあれが無くなったら綾たちは死にますよね?」


「無くなったらね。でも無くなることはないわ。生産までに時間は掛かるでしょうけど」


「時間が掛かるんですか?」


 多佳子にはその問いに反応した物部の瞳に好奇心ではなく獲物を狙う肉食獣のような光がちらりとだけ見えたような気がした。


「掛かるわね。それに製造方法を知ってるのはわたしだけだしね。材料を手に入れるのに時間が掛かるのが問題なのよって……そんな事よりも天津の婆さんは見つかったの?」


「彼女を探す理由はなんですか?」


 多佳子は衝動的に舌打ちしたくなったのを押さえ込んだ。


「彼女がわたしの持ち物を持って逃げた事は言ったわよね。それは研究成果なのよ。その成果を使えばこの忌々しい地獄から簡単に脱出できると思ったのでしょう。そんな事は出来っこないのに──」


 物部は一瞬考え込むような様子を見せるが多佳子の視線に気付いたのかすぐに笑みを浮かべて誤魔化した。


「出来ないんですか?」


「さっきから質問が多いわね。出来ないわよ。持って行ったものが違うもの。用途が違うものを持って行って望みが叶う訳ないじゃない。あれはわたしが私的に使おうと思って研究していたものよ。ただし出来た物は全く違うものだったけどね」


 多佳子は自虐的に嘲笑ってみせる。

 一瞬、物部の瞳が鋭い光を放つがまたすぐに消えた。


「私的に研究所の施設を使って良いんですか?」


「問題無いわよ。成果さえ出せばね。デッドリーポイズンも元々偶然出来たものだし……ペニシリンのように……いや、もしかしたら今回の事を見こうして神だか運命が仕掛けた悪戯かもね」


 多佳子は自虐的に呟いた。正直言えば元々は自分の足を治すために始めた事だがこんな結果になるだろうとは──


「デッドリーポイズン?」


 餌をチラつかせたら食い付いた。


「……【e】製のクリーチャーどもを駆逐する為の薬の名称よ。わたしが名付けた。あいつらにとっては猛毒でしょ? それこそ肉体すら液体化してしまう程の毒なんですから」


 多佳子はそれに気付かなかったように満足気な表情で語ってみせた。

 先程までと違って物部は黙り込んでいる。


「あと、あんたが期待してる天津の娘はまだ生きてるみたいよ。ただし一人減ったみたいだからここまで来れるかどうかは未知数だけど」


「そうですか……」


 今までと違って物部の歯切れが悪い。


「前から聞こうと思っていたけど、貴女が天津の娘に肩入れするのは何故? 特別な理由があるの?」


「面倒見てた子が死ぬよりは生きてる方が良いのは当然じゃないですか」


 もっともらしい発言だがそれを信じる多佳子ではない。


「あ、渡りをつけるついでに彼女たちの端末にここへ来るように連絡を入れておいたわ。貴女の期待通りに行くと良いわね」


 多佳子の言葉に物部は答えなかった。

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