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幼馴染みは爆死するのが定め  作者: 明日今日
第十一章 四日目(2)最悪の敵
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検証

 あたしたちはいつもの空き教室に戻ってきた。こけしちゃんが体育館を燃やしたから自衛隊のヘリが物資とか投下してくれなくなったとか言ってたが果たしてそうなのだろうかと思いつつ残していた食料を噛じって胃に流し込んだ。

 全員が食べ終えた後で兎川が誰ともなく言い出した。


「あの子……抗ウィルス剤もワクチンも摂取してたな。どうしてああなってしまったんだろう」


「投与が遅かったのかもしれない。あの水弾は高濃度のウィルスが含まれてたらしいからタイムリミットまでの時間が短かったのかも」


 海人が暫く考えた後、そう告げる。


「予想以上に浸透するスピードが早かったのかも……若い方が進行が早かったりするのかな」


「ガンみたいにか……だとすると、勇彦くんの件があるから若さが関係するか判別に困るな」


 あたしの言葉に海人は答えながら鈴音の方を見た。彼女は何やら考え込んで居て気付いては居ない。


「海人、勇ちゃんはウィルスに耐性があったみたいだから彼女と同じにして考えては駄目よ。彼女はウィルスへの耐性が完璧じゃなかったからドライアドになってしまっただけの話」


 聞こえてないと思ってたら鈴音ははっきりと答えた。


「分かるの?」


 あたしは反射的に聞いていた。鈴音は押し黙ってる。そんな状況を焦れったく思ったのか、兎川が手のひらをこちらに向けて続きをと促す。


「さっきの今井への態度といい、ウィルスに感染しないかどうか分かるの?」


 鈴音は沈黙を守っている。意地悪ではなくて話すか話さないかを思案しているようだった。

 唇を歪ませた兎川が今度は海人の方を見て顎を縦に振って促している。そんな彼女に海人は肩を竦めた。

 真相に関して兎川は知りたくて仕方がないのかもしれない。両親がほぼ確実に死んだとすると出来る限りの情報を集めないと納得出来ないのかもしれない。


「鈴音、頼むよ。分かることがあるなら話してくれ」


 海人の一言に鈴音は彼の方をじっと見て動かない。


「聞きたいの? 根拠が無いかもしれないのに」


 兎川がムスッとしている。あたしもあんまり引っ張られたくない。だがあたしたちが言ってもスルーされるのがオチだろうな。海人が促さなきゃ意味が無いだろう。

 目覚めてからの鈴音は海人への態度が露骨だから困る。更に厄介なのが海人が今の鈴音に満更でもない様子なのが殊更に面白くない。


「頼むよ、聞かせてくれ」


 その言葉にようやく納得したのか鈴音はあたしたちの方に向き直る。


「今の状態になってから何となく分かるだけだよ。色と言うか、匂いと言うか、形容しがたいけど大雑把に分かるだけ。感染する人間と感染しない人間が」


 鈴音の回答に彼女以外の全員が押し黙る。


「あたしたちは分かるの? 感染するかしないか」


「まだよく分からないけど、少なくともレウケにはならないと思う」


 鈴音が奥歯に物がつまった言い方をする。


「まどろっこしいな。隠してないで話してくれ」


 兎川が椅子から立ち上がる。今にも掴みかかりそうに見えた。

 隣で落ち着いてと宥めるが効果がない。


「別に隠してる訳じゃない。単に分からないのよ。ワクチンと抗ウィルス剤のせいで」


 鈴音がため息を吐く。

 兎川は落ち着いたのか、納得したのか、椅子に腰を下ろした。


「つまり、ワクチンと抗ウィルス剤に阻害されてはっきりしないって事なのか」


「でも今井には言ってなかったけ?」


 あたしの言葉に兎川がまた反応してしまう。余計な事を言ってしまったか。

 鈴音が椅子を掴んであたしたちの方に近付いてきた。聞かれたくないって事か。仕方ないのであたしたちは全員距離を詰める。


「あの子は感染したら確実に変異すると思う。貴方達は……多分感染しないと思うけど保証できない」


 だから分からないと答えたのか。


「完全に感染しないなんて今の私には言い切れない」


 感染しないと油断して感染して死んだらマヌケだしな──


「そっか。自分たちが摂取してなかったら助かった連中も居たのか」


「もう少し早く分かっていたら結果が変わっていたなんて考えても仕方ないわよ」


 兎川が呟くがあたしが間を置かずに否定する。そんな話をしても意味ない。それに──


「あの子の件は感染までの個人差と狂犬病ワクチンの例があるから抗ウィルス剤の投与が遅すぎた可能性があるし」


 あたしのフォローにそっかと兎川は押し黙った。

「それよりも今後どうする? 少し休んだら脱出するのか?」


 海人がもっと重要な事を口にした。

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