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幼馴染みは爆死するのが定め  作者: 明日今日
第十一章 四日目(2)最悪の敵
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吸血行動

 巫女(ツスクル)が去って安全確認をした後で保健室に入ったあたしたち四人を待ち受けていたのは干乾びて干物みたいになった依田先生だった。他にも保健室のベッドに寝ていた怪我人たちも同様の状態で発見された。

 状況はピラミッドの石室なんだろうが二言三言話したことがある人間もそうなっていたのだから気分は最悪だった。特に依田先生が亡くなってしまった事を実感するのが辛い。

 この4日間で散々世話になってきたのは言うまでもないが鈴音と薙澤の対立で指揮系統が無茶苦茶になった現時点で頼れる大人を失うのはキツイ。正直言ってもう統制を取るのは難しいかもしれない。


「噛むんじゃなくて吸血なのねと言うか水分の殆どを抜き取られたみたい」


 唯一の救いはレウケにならないと言う点だけだ。

 よく見たらなんか唾液みたいな液体が付着してるし、机の上の薬剤が入っていたアタッシュケースは中身が空になっていた。必要な物は残ってないし、残っていても巫女(ツスクル)の放ったウィルスを含んだ水分のせいで汚染されてる可能性が高いので長居しない方がいいようだ。

 もう一つ救いがあるとしたらここにあった薬品や包帯は全て使い尽くされていたことだけか。


巫女(ツスクル)が燃えなかったのは大量に水分を含んでたからかな」


 また余計な事を口にしていた。誰も答えられる筈がないのに。


「そうとしか考えられない。それにしてもめぼしい物も何もなしか」


「ならもう出た方がいいな」


 海人の言葉に四人とも無言で保健室を出た。


「どうでした?」


 鈴音に入らないように言われていたこけしちゃんが廊下に出た所で声を掛けてきた。見ない間に何かしてたのか、顔に煤が付いている。──さっき、火炎瓶投げたあたしのせいかもしれないけど。


「全員駄目だった。中は入らない方がいい」


 海人は押し留めるように両手を前に出す。

 今井は唇を一文字にして堪えるように沈黙した後で口を開いた。


「入ったりはしません。ただ……ほんの少し前にうちも抗ウィルス剤を投与してもらう為に保健室に居たので……これが運命の別れる瞬間なのかなと思っただけです」


 その言葉に全員が言葉を失いかけた時に鈴音が提案する。


「ここに居るのは避けた方がいいと思う。汚染されてる可能性が高いし、巫女(ツスクル)が戻ってくるとしたらここに居残るのは危険でしょう」


 鈴音は階段へ向かって歩き出した。

 それに続いてあたしたちもこの場から離れる為に後を追う。


巫女(ツスクル)? あいつの事ですか?」


「名前では呼ばない方が精神的負担が減る。だからそう呼ぶことにした。不満か?」


 兎川が周囲を警戒しながら答える。


「ただ……あいつには勿体無い呼び名だなと思っただけです」


 今井はそう言って黙り込んだ。単に好き嫌い以上に確執があるように思えるけど聞いても答えてはくれないだろう。

 階段の手前で勇儀が姿を表わす。レウケってるんじゃないだろうなと疑ってしまったが風紀委員たちが付いていたのですぐにそうではないと分かった。


「何かあったんでしょうか?」


「生徒の一人が変異して依田先生や保健室に寝かせていた者を含めて13人が亡くなりました」


 鈴音が巫女(ツスクル)が誰なのかを省いて死者が出たという事実だけを告げる。言わなくて正解だと思う。言っても取り乱すだけだろうし、いい結果にはならない。そこまで思って、人間だった頃の彼女と勇儀が行動したことがあったかあんまり思い出せない。そもそも面識あったけ。


「こっちは薙澤さんが家に帰りたいと言ってて聞かないの」


 勇儀の言葉に今井や風紀委員たちが表情を曇らせる。この期に及んで不満が爆発する事にならなきゃいいけど──

 ただ薙澤が家に帰りたいと言い出す気持ちも分からなくもない。住み慣れた家に帰ったらこの街の惨状が夢でいつもの日常が帰ってくるのだとしたらあたしもそれを願いたいがそんな訳にはいかない。

 女子寮で散々な目に遭ったのがこういう時に幸いするとは夢にも思わなかったが。


「無理に引き止めなきゃいいんじゃないですか。もうこの状況だとそういう風に言いたくなる気持ちは分かりますから」


 愛想が尽きたのか、今井が突き放すように言ってしまった。

 勇儀は反論する気力もないのか黙りこんでしまう。


「元部長、うちはこの事を知らせてきますので」


「分かったわ。空き教室にいるから」


 今井は一礼して風紀委員たちと共に去っていった。それを見届けてからあたしたちはいつもの空き教室へ向かって階段を上っていく。

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