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妙な態度

「ナイスなツッコミだった」


 兎川が親指を立っててアピールする。内巻きで顎のあたりまで伸びてるもみあげ部分が揺れた。


「ところで那名側。シャベルの刃先は研いだ方がいいのか?」


「人間相手なら研がない方がいい。あいつらはレウケってるから磨いでも問題ないけど」


 兎川はメモしていた。口調は男っぽいのに細かい奴。そういえば顔はヅカっぽくないから意外に乙女なのだろうか。


「時間がないから移動しながらでいい?」


 鈴音が横から口を挟む。

 直接、家に行くのか? 海人の言葉に首を横にふる。


「アーチェリー部の部室による。とてもじゃないけど素手で殴ってたら手が痛くて仕方がないから」


 鈴音が校舎に向かうのに釣られてあたし達も歩き出す。

 彼女が下駄箱で上履きの土を落としてるの見て気がついた。上履きの裏を見てみる──血が多少付着していた。


「上履きは捨てた方が良くない?」


「捨てて代わりがある訳ないし、足まで染み込まなければ何とかなるでしょう。それより山田の事なら気にしなくていい。みんなに嫌われてたから」


 鈴音の言葉にあたしは押し黙った。痛いところ突かれた気が──

 あたしは運動靴に履き替える。

 アーチェリー部の部室は校舎の奥で結構離れてる。車で送ってもらえばよかった。

 そこら辺に居る生徒たちが薙澤の指示なのか、競技用ハードルを校庭に運んでいた。バリケードの代用品だろう。かなり頼りないけど。

 そんな光景を横目にアーチェリー部部室に着いた。

 鈴音が鍵を取り出してドアを開ける。海人が開けようとした鈴音を止めて代わる。念の為だろう。


「開けるぞ」


 海人が金属バットを構えながらドアノブを回した。

 当然、レウケも何も居なかった。居たら困るけど。

 蛍光灯のスイッチを入れて鈴音は素早くコンパウンドボウ、化合弓と呼ばれる弓と矢筒と金属製の矢をかき集める。

 コンパウンドボウと言ったら分かりにくいだろうが映画有名なシリーズである乱暴な人が使ってた弓と言ったら分かりやすいのだろうか。

 これの矢に火薬付いてただけで武装ヘリを撃墜するんだからハリウッド映画のヒーローはズルい。

 どうせなら今すぐに誰か助けに来てくれたらいいのに──ターミネーターとかさ。


「使えるの?」


 鈴音は矢筒を腰に巻く。


「私のじゃないけど家に私物を取りに行くまでなら問題はないわ」


 確かにレウケってる連中の頭部を離れて狙えるならこれ以上頼もしい事はないが。


「先輩、居らっしゃってたんですね」


 後ろを見ると女子生徒と男子生徒が数人集まっていた。一年生と二年生だ。

 これ借りるから。あとお願い。と短く告げて鍵を渡そうとする。


「貴方たちも武装しておきなさい」


「そのつもりでした。ここに暫く居ますから鍵は要りません。部長来てないから生徒会長がお持ち下さい」


 今のリーダーなのか、日焼けしたこけしのような女子生徒が首を横に振った。

 アーチェリー部の部員たちは部室内に入って自分たちの弓を手に取って、武装の準備を始める。

 彼女はありがとうと短く告げて鍵を自分のポケットに戻す。


「天津生徒会長、ご一緒してよろしいでしょうか?」


 和弓を持った大和撫子が部室前に佇んでいた。濡れ鴉を連想させる黒髪に黒瞳で日本人形を思わせる容姿で学園一の美少女と名高い和泉葉子(いずみようこ)だった。

 弓を持つ姿が本当に似合っていて巴御前が現代に居たらこんな感じなんじゃないかと思ってしまう。

 いつも出来ている人垣はなく置いてきたのだろうか。


「取り巻きは?」


「おいてきました。危険な橋を渡るのならば、わたくしだけで良いと思ったので」


 風鈴のような声が部室に響く。


「なら急ぎましょう。あんまり多くても余計なのが増えるだけかもしれないから」


 サラリと酷いことを言う。確かに間違っては居ないのだけど。

 和泉はありがとうございますと神主みたいな角度で一礼する。

 今井ちゃん、頼んでいいわね? 任されました。とやり取りをこけしちゃんとして鈴音は部室から出てきた。

 ジャージ姿にコンパウンドボウは某映画の追手を思わせた。これで化合弓じゃなくてドラグノフ狙撃銃なら完璧なのに。


「またつまらない事を考えてるのでしょう? 裏から出るから急ぐわよ」


 冷たい指摘に思わず唇を尖らせてしまった。そんな姿を見て海人が手招きする。

 はいはい。置いて行かれるような真似はしませんよ。

 あたしは内心で毒気づきながら後を追った。向かうは裏門だ。

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