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幼馴染みは爆死するのが定め  作者: 明日今日
第十章 四日目(1)激動
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 あたしが思考を纏めようとした瞬間に鈴音がふらついた。一応まだ本調子で無いようにも見える。そんな彼女に海人が慌てて肩を貸す。

 鈴音は海人を見てるけど意識はこっちにも向けてるような気がする。


「どう思う?」


 あたしは聞かれてる可能性を考慮しつつ、鈴音から唇が見えない位置に移動しつつ、兎川に聞く。


「……正直言うと分からない。違和感はあるんだろうけどなんかモヤモヤする。天津には違いないんだけどプラスとかαとか付いてる感じ」


 言わんとする所は分かるけど変な喩え。


「実際に試してみるしかないわね」


「どうやって?」


「分からない」


 あたしの推測が当たっていたら丸聞こえなので敢えて言わない。思いついてないとも言うけど。

 なんじゃそりゃと言わんばかりの兎川の視線が微妙に冷たい。

 その視線のせいで閃いたのか、一つアイデアが浮かんできた。


「押してみよう」


 兎川は腕組みして微妙な表情をしてる。おまえは何を言っているんだと言いたげにも見える。


「その意図は?」


「とりあえず、見てたら分かるよ」


 あたしの言葉に兎川は腕を組んでいた右手を離して行ってこいよと促す。

 丁度、あたしの荷物の前で海人と鈴音が立っているので丁度いい。


「ちょっと退いてね」


 ワザと海人と鈴音の間を裂くように間を通り抜けようとする。だが鈴音は肩を貸されてる状態から引き離されたくないのか押し返してきた。或いはあたしの会話を聞いてたのだろうか。


「荷物取りたいんだから」


 今度はさっきよりも鈴音を強めに押してみる。でもビクともしない。

 兎川が押した時にはフラフラしてたのに──勿論、あたしの方がフィジカルで劣るので一概には比べられないがそれでも鈴音と比べたら余裕で勝ってるのに──。

 仕方ないので本気で押してみたがそれでも鈴音は揺らめきさえしない。体重を掛けて更に押すが結果は変わらない。顔が真っ赤になるほど押してみるがそれでも結果は変わらない。


「いつまでも戯れてないで……俺が避けるからそこまでにしてくれ。それに大地はどうしてそんな顔してるんだ。冗談なんだろう?」


 海人の呆れた声にあたしはゆっくり通す力を緩めて鈴音は距離をとる。押し勝った彼女は若干楽しそうだった。

 やっぱり聞こえていたとしか思えない。力比べはついでだったけど押し負けるとは思わなかった。

 息を整えてから避けた海人側から自分のリュックを取って兎川の元に戻る。


「本気で押したの?」


「とりあえず、教室の外で話すよ」


 あたしは教室のドアを開けて廊下に出る。兎川もそれに続いて出てドアを閉める。それを確認して階段の方まで移動する。

 ここでも聞こえてるかもしれないけど一応階段の手前であたしは立ち止まる。


「ここまで来る必要あるのか?」


「ここで来ても鈴音には聞こえてるかも。と言うか、聞こえてると思う」


 あたしがそう告げると兎川の顔色が変わった。先程までの疑いの表情ではなくて真剣な表情に──


「それは間違いないのか?」


「ワザと聞かせて押し返してくるかやってみたんだけど普通に押し負けた。演技じゃなくてマジで」


「フィジカルで勝る貴女が押し負けるなんて…」


 兎川は額に皺を作る。


「内容を知ってて押し返してるから聴覚もあたしたちとは桁違いかも」


「それはウィルスのせいと考える方が自然なのか」


「分からない。でも他に原因なんか思いつかない」


 あたしはその問いに声を絞り出すように答えた。

 兎川は真剣な表情で考え込んでいる。思いつめて変な方向にいかなきゃいいけど──


「大丈夫。そんな事はしない。それより押し返してこなかったらどうするつもりだった?」


「それはね、女の意地だし、多分、あたしは嫌われてるからさ」


 あたしは苦笑いで返した。


「そんな気はしてたけど笑えないな」


 兎川はあたしの答えに笑うしかないから笑っていた。

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