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幼馴染みは爆死するのが定め  作者: 明日今日
第八章 三日目(2)祈りは虚しくて
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血液を探せ

 あたしたちは1階の薬剤部でエピネフリンや止血剤を手に入れて3階へ上がった。窓からは薄暗い太陽光と今にも電源が落ちそうな蛍光灯の明かりだけが頼りだ。

 ここにくるまで本当にあたしたちの足音しかしないのが不気味で仕方ない。獲物が狩場に入るのを待ってるみたいな雰囲気を感じる。本当に嫌な歓迎のされ方だ。どこからか見られてるのを強く感じる。あと床の一部が不自然に凹んでいた。


「ここを左に曲がったら階段とか渡り廊下とかあるけど無視して真っ直ぐに奥へ、そこが輸血部。そこにあったらいいけど」


 何気なく壁の一部を見て思わず声を上げそうになった。

 オナカスいた。と赤い──いや、間違いな血で書かれてた。それも幼稚園児がクレヨンで描き殴ったような酷い文字だった。それが余計に薄気味悪くこちらの心理に悪影響をもたらす。


「急ごう。10分くらいは経ってる」


 兎川の指摘に我に返る。そうだ。サッサとB型の血液を確保して学園に戻らなければ。


「そういえば、和泉ちゃんはワクチン接種を受けたんだったけ?」


「え、あ、はい。学園を出る前に受けました。痛かったですけど」


 なんか一瞬反応が鈍かったのが怖いぞ。それに右利きなのに左肩を庇っているような様子はない。

 ちゃんと見たら弾痕のような、いや弾痕が壁にあった。ジャック捜査官の言ったとおりに銃撃戦があったようだ。正直、特殊部隊の隊員なんか相手にしたくないな。

 ハラペコ。壁には落書きがあった。勿論、血で書かれている。


「いいから急ぐよ」


 鈴音は警戒しながらもあたしを抜かして早足で奥へと進もうとするが海人に腕を掴まれ隊列を引き戻される。諦めたのか元の位置に戻る。

 あたしはショットガンを構えながらゆっくりと奥へ向かって行く。正直、気分は良くない。廃病院の肝試しの方がマシだと思う。あっちは本当の化物が出ないから。

 ゆっくりと近付いてくる輸血部のプレートが見えてくる。床には血の跡が、いや、血が輸血部に続いていた。なんで人が行く場所にいるかな。

 たべたらオいしかったです。扉にそんな事が書いてあるし。

 海人が最後尾から前に出てきてあたしにハンドシグナルを送る。ドアを開けるのはあたしの担当か。ショットガンを下ろして右ポケット突っ込んでいた拳銃を取り出し、右手で構える。そして、左手で3、2、1、扉を体ごと押し込んで開ける。左には誰もいない。右にも誰もいないようだった。いやあたしたちの正面、血液保冷庫の近くに軍人らしい男が倒れていた。らしいというのは顔はガスマスクで覆われ、プロテクターを身に着けているのでハッキリとは分からない。

 ビビッて居ても仕方ないので素早く近寄って生死を確かめる。吸血鬼に血を抜かれたかのように干からび、首は肉を失うほど切り裂かれ頚椎が出ていた。レウケにならないのはいい事だ。余計なことは考えないでおこう。

 気になって余計なことだと思うがガスマスクを外してみる。外国人で──赤毛で彫りが深くロシア人っぽい。


「そんな事どうでもいいから」


 鈴音は血液保管庫を開け放ち、残っていたB型の血液を引ったくるようにショルダーバッグへとしまう。


「これは銃?」


 兎川が部屋の隅に落ちていたAK47らしきアサルトライフルを拾い上げる。目聡いな。


「アサルトライフルのAKシリーズだと思うが使えるか?」


 海人の言葉に色々弄ってみて、兎川はマガジンを外してみせる。学習が早すぎだろう。


「弾はあるみたい」


 そっかと海人は近くに落ちてたらしいマガジンを渡す。


「接近戦はそれを使え」


 了解。と素直にスリングベルトでドラグノフ狙撃銃とは別の肩にかけてベルトがクロスするが胸が目立ってない。勝った。本当に比べなきゃいけないのは鈴音だから虚しいだけけど──


「ガマンじだのがバカみたい」


 和泉が変な声を上げる。扉に内側から血文字で書かれていた。この部屋に入ったのは罠だったか。


「終わった。急いで出ましょう」


 鈴音が言い終わる前に蛍光灯が消えた。ライトを点けたまんまにしておいたとは言え暗い。


『電力が落ちました。只今、補助電源に切り替えます。しばらくお待ち下さい。繰り返します──』


 この部屋は暗すぎるのであたしは廊下への扉を開け放つ。その瞬間に後ろからブザーが鳴った。どこからか見れば血液保冷庫から赤いランプが点滅している。凄く、血液保冷庫に蹴りを入れたい衝動に駆られる。

 こんなタイミングで音を出すな。急いで出ないと化物どもが集まってくる。


「みんな、全力で逃げるぞ」


 海人が促す。でも遅かったようだ。


「ミつけたぁ。タベモノ」


 幾つかあった階段の、一番近い階段のすぐ脇にその声の主らしき女性看護師が立っていた。でも様子がおかしい。撃つべきか迷った瞬間、声がする。


「撃って!」


 叫びと同時に女性看護師の額に木製の矢が突き刺さった。即死の筈であるのに彼女は立っている。和泉の放つ矢はレウケやエクセキューショナーには必殺の一撃だったのに──


「嘘、どうして……」


 和泉自身もそう思っていたのかショックの声を上げる。

 あたしは炎に弱いとの言葉を思い出してショルダーバッグから取り出したアルコールランプをそのまま投げてぶつける。中身が女性看護師の全身に掛かる。

 同時にアサルトライフルの銃声が響いて女性看護師は炎に包まれ奥へと転がっていく。


「今のうちだ。走れ!」


 兎川の言葉に猛ダッシュであたしたちは走りだした。そして、奴が遠のいていくのは部屋の明るさが小さくなっていくので分かる。クソ。そこから降りた方が早いのに──

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