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幼馴染みは爆死するのが定め  作者: 明日今日
第八章 三日目(2)祈りは虚しくて
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何故、FBI?

 あたしたちを乗せたワゴンは牛田のオッサンのブルドーザーの護衛もあって無事に市民病院に着いた。自分の仕事は終わったと判断したのか彼のブルドーザーはそのままUターンして大通りの方へと引き返していった。

 車内から見る市民病院は事件前には白い清潔感を表す7階建てだったが今から見ると所々薄汚れていて窓ガラスには血液が付着してたり、一部割れていた。ロビーを見ると静かでうす気味が悪く玄関前のロータリーは放置された車で視界が利かない。

 車の駆動音で音でレウケたちが集まってくるかと思われたがそれもない。エクセキューショナーになったのか、潰し合いをしているのか、あたしには材料が少なくて判断できない。

 ふと窓から空を見ると黒い煙と雲に覆われて太陽は見えないし、時間も分からなくなってきている。仕方ないので腕時計を見た。8時回っていた。急がないと弟くんがヤバい。


「先生は残っていて下さい。出来るだけ音を立てないであと人が来ても絶対に乗せたり反応しないように……30分で戻るつもりですが1時間以内に携帯電話で連絡がなかったり、私たちが戻らない場合は学園に戻って下さい」


 鈴音が指示してワゴン車から降りる。あたしも辺りを警戒しながらワゴン車から出た。それに続いて兎川、和泉、海人と車外へと姿を表わす。

 あたしと兎川を先頭に半開きになっていた自動ドアをくぐり、受付ロビーへ進入する。辺りには薬品臭に血の臭いと腐敗臭みたいな気持ち悪い臭いが漂ってきた。

 そこに、受付カウンターを背にした誰かが座り込んでる。どうやら外国人男性みたいだが受付ロビーは薄暗くて見えないのでネックライトを点灯させる。だが向こうは右手で何かを向けた。銃だろうなと思う。


「アイム、ヒューマン。ドント・シュート・ミー!」


 あたしはつたない英語でショットガンを下ろして両手を上げる。問答無用で撃ってもいいけど別に撃ち合いたくはない。向こうの方が腕は上なのかもしれないから。

 それに光に照らしだされた彼はスーツ姿の40代で彫りが深い格好いいオッサンだったがあたしの趣味ではない。そして彼は右肩の部分を血に染め、右太ももに包帯を巻いている。多分、助からないしこの状態では動かせなさそうだった。

 彼は銃を下ろしてくれた。こっちに害意がないのは分かってもらえたらしい。

 呆れたような表情をした鈴音が無造作に近付いて話しかけた。


「Does it help roasted ?」


「No, thank you.I'm already useless.Are you survival?」


「Yeah」


 あたしにはもう駄目だから助けなくていいと言ったくらいしか聞き取れない。


「日本語は喋れますか?」


 和泉が日本語で話しかけた。確かに日本語で喋ってもらえるなら助けるけど──


「ああ、少しだけなら。私はFBIのジャック・オーランド。君たちはここに何をしに来たんだ。この病院はヘル……地獄だ。用がないなら早く出たほうがいい」


 普通に喋ってるし──あたしが馬鹿みたいじゃないか。横目で見ると鈴音がちょっとムスッとしていた。それに兎川は笑いを堪えながら辺りを警戒し、海人は無反応で反対側を警戒している。


「酷い怪我ですが何が遭ったんですか?」


 和泉が心配そうに聞く。


「ガスマスクをした軍人とゾンビみたいな奴じゃない新型のモンスターだ。モンスターには銃が通じにくい。それに接近するな。ホースのようなモンスターは分からないがツリー女にはファイアーが効くから燃やせ」


 ホース? 馬の事か。それに樹の女に火が効くと言ってるのだろうか?


「どうしてこの最夜に? ティル・ナ・ノーグか?」


 警戒してた筈の兎川が口を挟む。真相を知りたいという欲求が強すぎるのだろうか


「ティル・ナ・ノーグか……奴らにはもっと上に黒幕がいる。私は相棒とともにそれを調べていたが相棒を失い、このザマだ」


 あたしは一瞬硬直してしまった。もっと上がいるってなんだよ。ティル・ナ・ノーグはアメリカにある国際的な製薬会社だったような気がするぞ。それの上、もっと上がいるってなんだよ。


「上とは?」


「結社と呼ばれている事しか分かってない。そいつらの手はFBIや合衆国政府にも入り込んでるらしい。多分、日本政府にも」


 ドラグノフ狙撃銃を素で持ち込んでるから嫌な予感はしたんだけど──そこまでとは泣けるな。そんなのと戦争するとかならきゃいいが。

 みんな、黙って聞き入っているところを鈴音が口を開いた。


「血液保管庫がどこにあるか分かりますか?」


「すまない。分からない」


 鈴音は彼への興味を失ったのか、L字型ライトを点灯させ、受付カウンターの中に回りこむ。多分、彼女は病院の見取り図を探しているのだろう。


「病院内を捜索するなら、FBI身分証明証と私のショルダーバッグを持っていって役立ててくれ。その代わりに家族への伝言と私の始末を頼んでいいか? あいつらみたいにはなりたくない」


 バッチと身分証明証は家族に渡して欲しいと言うことなんだろう。

 ジャック捜査官は結構重いショルダーバッグと右手に握っていたオートマチック拳銃のSIG SAUER P229を渡す。あたしはショルダーバッグを右肩に掛けて拳銃を上着の右ポケットに、身分証明証は左ポケットにしまった。


「分かりました。伝言は?」


 映画で見たことあるけどこういう場面は辛い。特にあたしは小さくて母さんの死に目に立ち会えなかったから余計に──


「愛してると伝えてくれ」


「はい。生きて最夜を脱出できたら必ず伝えます」


 和泉が細長い果物ナイフを渡してきた。あたしが返事をしてしまったとは言え、いい気分じゃない。


「君たちの行く末に神の祝福を」


「あなたにも」


 ジャック捜査官が目を瞑って言い終わったのを確認して、あたしは彼の右耳から果物ナイフを突き立てる──そして1人の命の火が消えた。

 果物ナイフをそのままにしてあたしはショルダーバッグを覗き込む。弾丸がフルに込められた拳銃のカートリッジが4つ。弾は9mmじゃなくて麻薬捜査官の使うとか言われてる.40S&W弾か──一応今回の事態が起きた時の備えで持ってきてるのか。

 ヤバい兆候があるなら逃げたかったよ。鈴音の言葉じゃないけどこんな事が起きるなんて信じないだろうけど──


「1Fに薬剤部、3Fに輸血部があるみたい。そこにエピネフリンと血液保管庫がある筈」


 いつもの淡々とした口調ではない。希望が先立って浮き足立っているように見えた。


「ケンタウロス。ウィルスによる感染が進んだ男性感染者が変異した姿。前腕が足に変異し更に4本の腕を生やしたクリーチャー。殺傷力の高い前足で馬のように対象を蹴り殺し新たに生えた4本の腕で獲物を引きちぎる。-ウィルスへの耐性が全く無い者はこの姿にはならない。レウケと呼ばれるアンデッド状態を飛ばしてこの姿になる。別名はトゥミコロクル。アイヌ語で戦士の意味」


 東のタブレットで確認していた海人が冷水を被せるように呟く。

 鈴音はちょっとだけムッとしてからすぐにいつものポーカーフェイスに戻った。でもなんか嬉しそうなのか面白くない。


「ホース……馬のことだったんですね」


「ドライアド。ウィルスによる感染が進んだ女性感染者が変異した姿。容姿は頭部の花びらのせいで白無垢を被った女性のように見える。ウィルスの影響で植物のDNAを取り込んだと推測される。通称はツスクル。アイヌ語で巫女」


「とんだ動物園にご招待か。笑えないな」


 兎川が警戒しつつもため息を吐く。


「それに72時間まであと4時間しか無いよ」


「千客万来だな。それじゃあ、出会わない内にサッサと要るものパクって逃げますか」


 あたしの言葉に兎川が珍しく皮肉を言ってのけた。警官の娘だろう。お前は色々吹っ切れすぎだ。

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