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幼馴染みは爆死するのが定め  作者: 明日今日
第六章 二日目(3)決定的な亀裂
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内緒話

 鈴音と東がワクチンの摂取を受けたの見届けた後、あたしはアーチェリー部が占拠する空き教室から動く気にはなれなかった。夕食を取ってからも動く気にはなれなかった。

 いつものメンバーとアーチェリー部の部員が何人か居た。疲れて黙り込んでいるものも居れば、隣にいる者と話して少しでも不安を和らげようとしている。


「那名側先輩、大丈夫ですか?」


 こけしちゃんが心配して声を掛けてくれたが気の抜けたサイダーみたいな対応しか返せなかった。


「一応平気。ただ殆ど関わってない人間でも結構ダメージ受けるものなのだなと思ってただけ」


「つまり、あんまり大丈夫じゃないんですね」


 彼女の言葉に苦笑いするしかなかった。

 黙り込んでいた鈴音が立ち上がって口を開いた。この場にいる全員に向かって宣言するように──


「私が生徒会の会計である薙澤たちと決定的な対立を起こしたことを知っている者も何人か居るでしょう。……私は生徒会長の職を辞して最夜市脱出計画に専念しようと思っています。身勝手だと思う人が居るのも当然の反応だろうけど私は弟を救う事に全力を注ぎたいと考えてます。それに状況は刻々と悪化していっています。今までは人だけだった変異も鳩に猫にとうとう犬にまで広がりました。これ以上、悪化したら恐らく私たちだけでは対処できないでしょう。昼間の出来事もブルドーザーの方が助けてくれなければ全滅していたかもしれない」


 その発言に驚いた者も居たが大半は黙って聞いていた。銃撃事件の件も伝わっているのか責めるような素振りを見せる者は居なかった。


「状況がヤバいのも悪化していってるのも分かりました。でもどうやって最夜市から脱出するんですか? それが決まってないと逃げられないじゃないですか」


 一番反応しないと思われた今井が口を挟んだ。或いは分かった上で口を挟んだのかもしれないけど──


「陸路は駄目という話もあるからヘリで逃げることを考えています。レスキュー隊員たちに拾ってもらえる消防署か病院、或いは研究所やその関連の施設、もしくは自衛隊と連絡をつける方法を考えています」


「それは全て不確実な方法じゃないですか」


 今井は冷淡な言葉を返す。余りにテキパキと返すのでなんか台本でそう書いてあったような感じさえする。


「そうですね。そうかもしれない。でも私はこの場に籠城する事には耐えられそうにないので……行動を共にしてくれる方を募っています」


 あたしは手を上げた。海人も兎川も和泉も弟くんも──だが今井は黙ってそのやり取りを聞いていた。他のアーチェリー部の女子生徒も鈴音と視線が合うと首を横に振って拒否する。


「賛同してくれた方々にひとまずありがとうと言わせてもらうわ。拒否した子も考えが変わったら言って欲しい。あたしが学校を出るまでなら融通が利くかもしれないから」


 鈴音はそう告げた。


「一ついいかな」


 挙手した兎川の言葉にどうぞと短く告げる。


「一応、理由だけ言って表明しておきたくて。自分は、自分は今回の件がどうして起きたのか真相を知りたい。だからできることなら研究所へ行って本当にウィルスのせいで今回の件が引き起こされたのか確かめたい。それが貴女に付いていく理由」


 次に和泉が喋り出した。


「わたくしは物資が足りなくなる可能性と寒波が来て抜け出せなくなったら嫌だから脱出を選択します。置いて行かれるのも嫌だし、それにもし先発隊が脱出できてもヘリが飛べなかったり助けが来れない状態は辛いです」


 次は弟くんが──


「男なのに情けないかもしれないけどこんな化物が徘徊する街に居たくないです」


 そして、弟くんはあたしと海人を見た。


「じゃあ、俺だな。正直に言って脱出計画は無謀な気もしなくもないが女子と勇彦くんだけで行かせるものバツが悪いだろう。だから天津生徒会長が本気で脱出を提案するなら俺も付きあわせてもらうよ。あとそれから……俺も怪物たちとダンスするのは御免こうむる。出来るならなんとか抜け出したいし、この街には居たくない。ホラー映画は得意じゃないんだ」


 海人は最後の最後で戯けてみせた。ちょっと彼の膝が震えている。無理しなくてもいいのに。


「あたしは、正直疲れた。確かにレウケたちはなんとかなるレベルかもしれない。でも人間だったのを倒すのは正直堪える。人間性を鈍らせなきゃいけないくらい酷い状況なら最夜から出て行きたい。それが偽らざる本音。あたしもここには執着ないしね」


 ここで執着があるとしたら海人が居るくらいしかない。誰かが指摘してたようにあたしも恋愛脳なのかもしれない。


「否定的な意見出したうちが言うのもあれなんですけど残るメリットもあんまりないですよね」


 今井はシレッと言い放ってしまった。アーチェリー部の生徒たちも固まっている。

「残るメリットか……あと2、3日は持ち堪えられるんじゃないか。象や逃げ出した肉食獣とか来なければの話だが」


 兎川が独り言のように言った。

 レウケ犬の襲撃だけでも大変だったのにそんなの来られたら逃げるしかない。


「一応、お巡りさんの奮戦もあって相打ちにはなったんですよね」


 和泉の言葉に持ってる情報を整理してみる。ブースが大通り外れビルに入っているFM最夜からの情報だからあたしたちよりはマシな精度の情報にしか過ぎない。

 ここは市内中心部からかなり外れてるけどレウケった肉食獣たちが獲物を食べ尽くしてこっちにやってこないとは限らないのだから──

 警官隊の話に兎川がどんな反応をしているか慌てて確かめるが表情を殺してるのか黙って話を聞いている。


「結局、立て篭もるにしても堀と塀が基準に足りてないのがな……刑務所くらいなら基準を満たせるのかもしれないが」


 海人は諦めたような態度を見せる。

 当然だが最夜市には刑務所のような施設はない。あったとしても警察署に留置所があるくらいだろうけど。

 結局、残るも地獄、脱出の為に行動するのも地獄なのか。

 最終的にこの話し合いは結論が出ないままお流れになり、2日目を終えることになった。

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