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幼馴染みは爆死するのが定め  作者: 明日今日
第六章 二日目(3)決定的な亀裂
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死者1名

 辺りに居た変異した生物だったものを踏み潰して校門前の道路をドス黒に染め上げた後、ブルドーザーは止まった。なんか人の良さそうで背の低い太ったおっちゃんが運転席から顔を出てくるがこんな状況下なんであんまり信用出来ない。


「わしは牛田茂夫(うしだしげお)と言うしがない最夜の土建屋だが嬢ちゃんたちは大丈夫か?」


 あたしが黙り込んでいると鈴音が答えた。


「ありがとうございます。助かりました」


「いいってことよ。わしはまだ残ってる奴らを駆逐してやらにゃならんから、じゃあな。嬢ちゃんたちも達者でな。生きてたらまた会おう」


 牛田と名乗ったおっさんは再びブルドーザーに乗って去っていった。あとには赤い絨毯と血と肉の塊と砕かれた骨らしき白い欠片が残されている。正直に言ってとても見れたような光景ではない。酷い悪臭と目を背けたくなる背徳感しかない。死の河と言う物が存在するのならこれの事なんだろうとすら思う。

 ブルドーザーの運転席ごしだから平気なのかもしれないが──人の形をした物をよく大量に轢いていけるな。


「よくこんな状態で平気だな」


「彼は私と同じタイプの人間だから気を付けた方がいい」


 兎川のボヤキに鈴音がポロッと呟く。


「多分、あんまり罪悪感を感じない人だと思うって事かしらね」


 鈴音がうそぶく。


 問い詰めてもどうせ喋らないだろうから流して事後処理を開始する。


「白井、終わったわよ。さっさと出てきなさいよ」


 出来るだけレウケたちを引き寄せないように聞こえるか聞こえないかくらいの声で呼んだ。

 白井と他2名が民家からノロノロと出てくる。彼は右足を怪我していた。でもこの状態で変異してないのならワクチンを打てば間に合うだろう。


「他の奴らはどうした?」


 レインコートを羽織って金属バットを手にしている海人が問う。同じく駆けつけた田中が須藤のワゴン車を動かして校門を開けられるようにする。


「散り散りになっちまった」


 その返答に誰も答えなかった。

 白井は海人が開けた校門を通り抜けて校庭に座り込む。見たら止血はしてあるみたいだし、依田先生待ちなのだから──


「海人は何してたの?」


「裏門からも犬が入ってきてたからその対処だよ」


 あたしの質問に答えながら校門を閉じる。そしてあたしたちが校門から離れたのを確認してから田中が再びワゴン車を戻した。

 そんな何度か繰り返された光景に油断してた。鉈を手にした誰かが白井に駆け寄って行く。よく見たら彼と行動を共にしていた不良グループの一人だった。


「止せ!」


 誰かの叫びを聞き入れることなく鉈は白井の右足にめり込んだ。白井の悲鳴と近くに居た鈴音が仰け反る。こっちを向いた時に彼女の右目から血が流れていた。多分、足を切った時に出た血か鉈に付いていたレウケの血だろう。

 いきなり、レウケになったりしないだろうな。海人はそれに気付いたのか慌てて鈴音に寄り添う。

 悔しいけど今は白井の方がヤバイ。

 鉈を持っている生徒はこれで大丈夫だなどと呻いている。そこへ東の拳がクリーンヒットしそいつは地面を転がり気絶する。鉈の方は地面を転がっていた。


「馬鹿野郎! 素人が足なんか切断するんじゃない!」


 東が怒りの声を上げる。確かにゾンビ映画とかで切断する描写はあったりするが素人がやって成功するわけがない。しかもこんな雑菌がいる野外でやるなんて自殺行為以外の何物でもない。

 あたしは白井に駆け寄って彼のズボンからベルトを抜き取って切断された右足に巻いて締め付ける。だが動脈を直接押さえないと駄目なのか、血は止まりそうにない。


「やっぱり、お前は優しいな」


 蚊の鳴くような声で白井が呻いた。思い出した。3年前の春に校門で佇んでボッチだったこいつに道を教えたことがあったか──そういえば、記憶の中のこいつは高校デビューのように見えた。


「なんだかな。……お前に、コナ掛け…とけばよかっ…た」


 それを言い終わる前に白井の体は震えだした。多分、レウケ化じゃなくて出血性ショックによるものだ。あたしは打つ手がなくなってすがるように校舎を見た。

 依田先生がこっちに走ってきているが──間に合いそうもない。


「ちょっと! 目を開けるのよ! 死んだら駄目!」


 あたしは白井を揺さぶってみたが反応は返ってこない。完全に事切れてしまう。

 唐突に右腕を引っ張られて白井から引き離された。顔を見たら東だった。


「君の幼馴染みじゃなくてすまないね」


「別に。それよりあんたも依田先生に見てもらいなさいよ」


 そうだなと東は答えて駆け寄ってきた依田先生の方へと歩いて行く。それと入れ替わりに来た生徒会の庶務たちが武器を手に白井の遺体に銃弾のように真っ直ぐ向かっていった。その後のことは想像がつく。

 あたしはそれを見たくなかったので海人と鈴音に視線を向ける。

 二言三言話しているが内容は聞かなくても分かった。観念したかのように鈴音が頷く。どんなに嫌っている母親の持ってきた物だろうとワクチンを打つしか選択肢はなかったのだから。

 白井の最後を思い返しながらやるせない気持ちになる。最夜の空はあたしの心境を嘲笑うかのように暗くなり始めていた。

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