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幼馴染みは爆死するのが定め  作者: 明日今日
第六章 二日目(3)決定的な亀裂
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送り狼が来た!

 途中で渡された返り血用対策のレインコートを制服の上から羽織ってあたしたちが校庭に飛び出した時には既にレウケった犬が数匹入り込んでいた。ただでさえ犬は鬱陶しいのに凶暴化してるとか勘弁して欲しい。


「那名側、死角を補い為に組むぞ」


 後ろから追ってきている兎川がシャベルを構えながら雑種と思しき、レウケ(いぬ)が牽制する。

 あたしはその雑種レウケ犬にスティックで殴りかかる。だがあっさりと横に回避されてこっちに飛びかかってきた。

 ありゃ、やっぱり速い!

 横から割り込んできたシャベルが見事しレウケ犬を転倒させる。あたしはそこにスティックを全力で振り下ろして頭を砕く。そしてレウケ犬は身動き一つしなくなった。


「やっぱ二人がかりじゃないときついか」


 辺りを見渡して近くに居ないのを確かめてから呟く。


「猫もこんな感じだったの?」


「あれは小回りが利いてもっと酷かった」


 兎川が喋り終える前に悲鳴が響く。男子がレウケ犬3匹に襲われて体中を噛みまれ全身から血を流している。多分助からないだろう。

 でもあたしはそいつら目掛けて走った。彼に気を取られてる今のうちに犬の数を減らさないと──

 男子の脹脛に食らいついてる1匹の顔の左側にスティックを叩き込む。だが浅かったのか転がった先で着地し踏ん張りあたしを睨みつけている。よく見るとブルドッグみたいだ。本来大人しいはずなのに。

 横目で兎川を見るとシャベルの重みを利用して男子の首に食らいついていたのを喉を半ばまで切り裂いて活動を停止させた。

 クソ。スティックはハズレ武器?

 お互いの視界を補うように兎川と背中合わせの状況になる。


「なんかタフじゃない?」


「こんなもんだよ」


 兎川は泣ける言葉しか返さない。もう少し気の利いたジョークでも言って欲しいけどあたしも言えないので黙ってこっちを威嚇してるレウケブルドッグに集中する。

 後方からやってきた東がモップの柄と包丁を組み合わせた槍でブルドッグの頭部を串刺しにし絶命させた。そのまま校門の方へと走っていった。

 スケボーの防具を付けるからと言って一人で突貫とか無茶し過ぎだろう。


「援護する」


 あたしは兎川のフォローに回るべく彼女の左側に回る。男子に食いついていた最後の1匹だが大型犬だった。そのせいか攻めあぐねていた。

 スティックを真っ直ぐ持って槍のように突いて牽制する。飛びかかってきたところを上手いこと兎川に仕留めてもらうしかない。

 狙い通り、レウケった大型犬は飛びかかってきた。そして兎川のシャベルが左目の辺りに直撃したものの後方にすり抜けあたしたちに背後から襲いかかる。

 あたしはスティックを構え直して迎撃しようとする。だが襲いかかろうとした大型犬が悲鳴を上げた。

 後ろからやってきた鈴音がコンパウンドボウから放った矢が大型犬の左後ろ脚を射抜き地面と繫ぎ止めている。

 同じことを思ったのか、あたしと兎川が大型犬に攻撃を加えた。5回か6回頭部を陥没させるほど殴ってようやく動きを止めた。そして兎川がシャベルを首に突き刺してとどめを刺す。レインコートがなければ返り血で血塗れだっただろう。

 タフすぎるだろう。ショットガンでも欲しい。

 次は? 校門の方。と兎川と鈴音が会話している。門の方を見れば東が一人で2匹を相手に苦戦していた。


「援護お願い」


 鈴音に言うだけ言ってあたしは次の目標に向けて走りだした。東が相手にしてるのはチワワとダックスフントだが両方とも普通では信じられない凶暴な姿を見せている。そして的が小さいせいか思うように攻撃できないみたいだ。なら数で押すしかない。

 あたしはダックスフントの方にスティックを向けて牽制する。なのに全然効果がない。なら間に入って妨害してやる。東を遮るようにゆっくりとカニ歩きで移動する。

 獲物を隠されたことが気に障ったのかダックスフントがあたしに飛びかかってくる。スティックをフルスイング。転倒したところに左手で持ったスティックで頭を押さえて着けて両足で胴を全身の体重を掛けて踏みつけ動きを封じる。そしてレインコートの上からベルトに固定して挟んでいた消防斧を右手で取り、ダックスフントの首に振り下ろす。

 ダックスフントは首を落とされて動かなくなった。


「そっちは?」


 見たら兎川と東がチワワを倒していたが東の左足のスラックスには血が滲んでいた。


「大丈夫なの?」


 東を注意深く見てみるが今のところは大丈夫みたいだ。


「今のところ大丈夫だ。問題ない」


「おかしな状態になったら私が引導を渡してあげるから問題無いわよ」


 鈴音が冷たい言葉を投げかける。

 間違って射抜かれないように注意しよう。と東は肩を竦めていた。


「助けてくれ!」


 誰かの声が校門の外側から聞こえた。多分、白井の声だ。

 あんな奴でもサバゲー愛好会の連中よりマシなので校門の近くにあった椅子と机を使い、外が見える位置に登る。

 それを見て軽い目眩を覚えた。白井たち数人とレウケ犬数体とレウケった人間の群れがそこに存在した。機関銃で撃ちまくるか爆弾で吹っ飛ばすくらいじゃないと対処できなさそうな数。

 さすがにこれはヤバイってレベルじゃない。駄目だ、詰んだかもしれない。

 そんな事を思ってたら南の方から変な音が聞こえてきた。アスファルト舗装を削りながらそいつは姿を表した。──ブルドーザーである。

 レウケ犬とレウケ人間は轟音を響かせるブルドーザーに引き寄せられたのか民家へ逃げ込んだ白井たちを無視して突撃していく。どう見ても象対蟻の対決だった。

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