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幼馴染みは爆死するのが定め  作者: 明日今日
第三章 選択肢
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勝手な品評会

 あたしは荷物を取りに行ってから学園内にアイスホッケーの道具があったことを思い出して慌てて倉庫へ向かう。スティックだけでも回収できたのは幸いだ。ただし防具は何も残っていなくてスティックも最後の一つだったけど──

 しかしやっと金属バットから解放されると思ったのだけどいざ振ってみたらなんかしっくり来ないから困る。

 あ、そういえば映画で消防斧があったのを思い出した。学園にあるとは思えないけど近くの消火栓を開けてみた。

 あった。ありがとう神様などと叫びたくなったけど夜遅くなってきてるのでやめたけど。八百万の神のお導きかもしれない。いやそれならそもそもこんな事態に巻き込むなよとも思わなくもないが怒って状況を悪くされても困るから考えなかった事に──

 とりあえず、斧はリュックに入れておこう。

 電気は普段から点けているから仕方ないけど人影がチラついてるのは困るから外から見えないように移動しろとの指示が回ってきている。そんなに受け入れたくないのかとも言いたくもないが蛍光灯も一部ワザと消してたりするのに協力したから、あたしも人の事は言えないか。


「今回の件で誰が一番頼れると思う?」


 なんか不穏な内容とも思えるの会話が聞こえてきたので中腰で音を立てないように移動して該当の教室のドア前で聞き耳を立てる。生徒会へのクーデターとかだったら笑えない。生存率が下がるぞ。


「どっちに付くって話なら生徒会長かな。薙澤会計はなんか打たれ弱そう。ゾンビ? レウケ? アンデッド倒してないし、一度崩れたら精神立て直せなさそう」


「いや、テラダよ、そう言うのじゃなくてどの男子に付いて行きたいかだ」


 おお。とどよめきが起こる。いきなり男子品評会となった。オイオイ、真剣にクーデター疑ったあたしが馬鹿みたいじゃないか。


「なるほど、それなら東一択だな。頭脳明晰、サッカー部のエース。そしてあのフィジカルに文句つけようがなくない?」


「えー生徒会選挙で負けたのとかちょっと腹の黒そうな所が信用出来ないかな。あんた、自分が好きな男で選んでない? このサバイバルを生き残れる男よ。好みじゃなくてさ」


 言い負かされたのかその子の悩んでる声が聞こえてくる。


「じゃあ、アサダ! お前は誰がいいと思うのよ」


「お前言うな! ……3-Bの八幡海人。最近、会長の覚えめでたいじゃない。あいつ、ちょっと変わってるけどアウトドア派で火の起こし方とか知ってるのよ。生徒会長のグループなら助かりそうじゃない。それに女と付き合ったことないらしいから女に免疫なさそうだし、簡単な色仕掛け通じそうじゃない?」


 正解を導き出したような声だ。


 確かにあたしが知る限り女と付き合ってたことなんて見たことないけどムカつくぞ。


「あのエセ眼鏡は逆に駄目だって! あたし、聞いたけど色々忙しい時期に会計が臨時の庶務に任命しようとしたら天津会長が強硬に反対したってさ。絶対出来てるよ。夏休み中に。だから自分の手元においておきたいから反対してるのよ。そんなの絶対にただの関係じゃないって」


 え、それは聞き捨てならないぞ。


「あれは薙澤の嫌がらせだって。生徒会長と仲悪いの知ってるでしょう。生徒会長のイチャイチャしてる時間を削りたいだけよ。てめぇは男連れて生徒会に入ってるくせにさ」


 マジか?と声が響く。お前だけ声の音量がでかくてやかましいよ。

 案の定、他の3人にたしなめれる。


「薙澤は天津会長と仲悪いんじゃなくて認めてもらいたいのよ。あの人、変なこだわりあるからさ」


 マジかとまた聞こえてくる。そしてすぐに声の主は大人しくなった。


「それに八幡海人は駄目だって。天津会長だけならともかくフレッパー那名側まで着いてくるし」


 あたしかよ。でもその慧眼は褒めてもいい。でもフレッパー那名側はないだろう。そんなに外れてないけどさ。


「あー火炎瓶那名側か。あいつも個々としては優秀だけど付いていくにはね……ちょっと嫌かな。うちが言うのもあれだけど那名側は恋愛脳だからな。揉め事を起こして一行を全滅させそうなキャラじゃない?」


 殴り込んでやろうかと思ったが黙って聞いている。あー最悪。火炎瓶の作り方なんぞ教えるんじゃなかった。頭を掻きむしる。


「八幡と言う楽園には鮫二匹ついてるから駄目か」


「あれは鮫なんてレベルじゃないでしょう。それこそ怪獣大決戦レベル。ゴジラ対キングギドラみたいなもん」


 本当に人をなんだと思ってるのか──あたしと鈴音が戦ったら街が吹っ飛ぶんかい!


「妖艶で魔性の女の生徒会長と幼馴染みの対決とかドロドロしそう。見てる分には超楽しそうだけどね。でも巻き込まれたくない」


 全滅必至とかツッコミ入れてやがるし。

 あんまり人前で争うのはやめとこ。見世物になるのはごめんだ。


「それにもう一つ。5月頃に八幡に告白した奴がいるけど好きな人が居るからと断られたらしいよ。それも一回りくらい大人の女だってさ」


 えーマジか。とか聞こえてくる。好きな人は天姉ちゃんだろうけど告白されたなんて聞いてないぞ。


「じゃあ、誰にするのさ? さっきも言ってたけど田中は嫌よ。あいつは頼りにならないし、八幡の周りうろつく二匹の悪魔より質が悪いのがいるし」


 怪獣の次は悪魔呼ばわりか。


「大穴で白井は?」


 マジありえねぇとまた大声が響いて暫く沈黙が続く。まさか、奴の名前が出るとはみんな切羽詰まってるのか。


「アサダ、趣味悪すぎ」


「残っててリーダーシップとかありそうなの残ってないじゃん。あいつ、意外に先見の明があるから生き残れるかもよ。裏門で風紀委員と生徒会長に啖呵切ってたしさ。あと自転車で移動してたし」


 あんな光景まで見られてたのか。校舎の上の階から見てたのかな。


「勇敢と無謀は違うじゃない。それなら東の方がいいじゃん」


「あいつは八幡を借りて男子寮まで行ったみたいだけど何人か怪我して帰ってきてたじゃない。リーダーシップないよ。今回の事態を把握してないし駄目駄目じゃん。生徒会長になれなかったのは見通しの甘さよ」


 テレビの芸能人の文句を言うようにボロクソに言い放つ。女特有の辛辣さである。さすがに同情を禁じ得ない。こいつらはレウケと交戦したことあるのか。噛まれずに返り血も極力浴びないで倒すなんて至難の技なのに──


「でも男子が駄目なら和泉か兎川の方がいいな」


 その発言に教室内の他3人が凍りつく。ちょっと引いてる雰囲気。


「那名側先輩」


 ちょっと遠くから要らない呼びかけをする和泉。同時にドアの向こうではビックリするような動揺が伝わってくる。一刻も早く離れるべきだ。

 仕方ないのであたしは何かを落としたフリをしながら立ち上がった。


「そんな所に屈んで──」


「落し物。もう見つかった」


 あたしは彼女の言葉を遮ってこの場から離れることにする。ワザと声を掛けたのか状況を理解してないのか分からないけど厄介な子だと思う

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