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幼馴染みは爆死するのが定め  作者: 明日今日
第三章 選択肢
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パンドラの箱を開ける

 海人と兎川が依田先生を伴って戻ってきた。やっぱり依田先生は疲れきっている。何故か、こけしちゃんこと今井まで着いてきていた。手には医療道具と思しきかばんがぶら下がっている。

 こけしちゃんはメンバーを見渡して鈴音とあたしと兎川に対して一礼する。

 今井ちゃんなら大丈夫だろうと判断したのか、鈴音は何も言わない。


「一体なんだい? こんな身でも忙しいんだけど」


「申し訳ありません。どうしても見せたい物があってお呼びしました。ただ不用意に情報を漏らすと返って混乱を招きかねないのでご内密にお願いしたいのですが──」


 鈴音の声のトーンと表情で察したのか、真剣な表情で分かったと返事をする。


「勇ちゃん」


 弟くんが天津邸から持ってきた怪しいアタッシュケースを開ける。開放とともにヒンヤリとした空気が流れてきた。中に並んでいたのは1回分と思しき中身入りで使い捨ての注射器。そして消毒用アルコールなど摂取に必要な一式。でも14本しかない。


「ワクチンと書いてありますが私には本当にそうなのか判別が出来ません。効果があるかも」


 依田先生は中に入っていたマニュアルを取り出して真剣に読んでいる。

 これをどこで?との問いに鈴音は自宅ですとハッキリ答える。大丈夫なんだろうか。

 同じことを思ったのか、兎川が教室の外に誰か居ないかキョロキョロと探りを入れている。


「eに対するワクチンか。不活性ワクチンみたいだけどあれだけ強力なウィルスなら摂取するのは度胸がいるね」


「え? すぐに治ったりしないのですか?」


 難しい顔をしている依田先生と唖然としてる今井。


「癌のワクチンの副作用とか聞いたことないかい?」


 そういえばニュースでやってましたねと笑って誤魔化してる。


「言っておくけどワクチンだからどんなリスクがあるか分からないよ。普通のワクチンですら腫れに発熱とか色々な副作用があったんだから」


 依田先生は呆れている。


「僕が摂取してます。一週間前ですけど多分副作用は発熱です。ここ2日ほど寝込んでました」


 さすがに話題を変えるべきだと思ったのか、弟くんが話に割って入った。そして上着を脱いで上はランニングシャツだけになって右肩を、上腕をさらけ出す。

 肩には注射針の痕が二つ見えた気がした。

 その脱ぎっぷりに兎川が反応している。初めてみる乙女チックなオーラを出して瞳にハートマークでも書いてそうな雰囲気を醸し出す。

 弟くんと依田先生はそんな姿に気付かずに真剣なやり取りを交わしている。

 だがそんな兎川に気付いたのか、鈴音が兎川の視線の前に立ちはだかる。案の定、あたしの時と同じくマンツーマンディフェンスの攻防を繰り返す。あの時とは違ってお互いに正面向いてるけど──


「生徒会長殿、どいて頂けますか? 自分も興味あるのですが」


「何に興味があるのよ!」


 明らかに兎川の興味は弟くんの上半身だ。自分は海人に見られても大丈夫だったのに──なんか兎川に味方したくなってきたがさすがに止めに入った方が良さそうだ。

 海人もそう思ったのか鈴音を引き離そうとしている。ならあたしも同調しておくかと兎川を引き離しにかかる。


「そろそろやめておきなさいな」


 あたしは兎川を羽交い締めにして引き離そうとするが体重が向こうの方が重いのか、なかなか引き剥がせない。


「那名側、誤解だ。自分はそんな不健全な人間じゃない」


 普段なら何も言わないが今の兎川は不健全女子高生その物である。よだれ飛ばすな。


「不健全女」


 海人の引き剥がしにあっさり応じてこっちを睨みつけている鈴音がボソッと呟く。やっぱりこの女は毒舌である。


「眠れる魔性の女が何を言っているか」


 そこの言葉で鈴音の握りこぶしが震えている。殴りかかったりしないだろうな。あたしはそんなのに加担したくないぞ。


「うるさい! 大人しくしてろ!」


 耐えかねた依田先生が一括する。兎川は同時に大人しくなった。別に先生に怒られたからではない。弟くんが服を着替え終えてしまったからに過ぎない。

 こっちを向いて離せと言わんがばかりの視線を送る。言われなくてもお前なんかとくっつくかい!

 あたしは羽交い締めを解く。


「それでどうするの? 摂取するの? しないの? 言っておくけどこのアタッシュケースで冷やして置けるのも長くないからね」


「自分が受ける。傷の件もあるし」


 兎川が左手を挙げる。右手を挙げないのは背中の傷が影響してるのだろう。さっきの暴走は傷の痛みも忘れるような事だったのかよ。

 あたしはどうするか──


「うちもお願いしてもよろしいでしょうか?」


 名乗りでたのは今井だった。

 あたしは思わず、どうしてと聞いていた。


「恥ずかしながらうちは……メタ的な事を言うとモブだと思うんですよ。それでも生き残りたかったら特殊な事をしないといけないと思ったから……だからそのお願いします」


 ちょっとその言葉に胸を打たれてしまった。ビビってるあたしにはそんな積極的な度胸はない。かと言って七十二時間以内に決められないでレウケるのは冗談じゃないけどね。

 などと考えていたら鈴音がドサクサに紛れて海人の額に手を当てて熱を計っていた。


「平熱ね。私はどう」


 有無を言わさずに海人の手を取り、己の額に当てさせる。

 怒りであたしの頭の方が沸騰しそうだ。

 平熱だよ。とちょっと照れくさそうに手を引っ込めた。あたしだって計ってもらってないのに。

 あたしは海人に忍び寄る。


「あたくしは遠慮しておきます。注射針怖いから」


 和泉は両手と首を振って拒否する。


「出血異常はないわね?」


 確認の言葉にはいと短く答えている。

 海人に計ってもらおうと手を掴もうとする。だがあっさりと彼に避けられた。恥ずかしいことさせるなよって表情にかいてある。ケチ!


「なら海君と勇ちゃんには少し外してもらおうかな」


 鈴音は先手を打って海人と弟くんを教室から追い出してしまった。余計な事をしやがってと睨みつけると向こうは知らん振りしてるし。


「あんた達は?」


 依田先生の問いに二人揃って首を横に振ってしまうと言う同じリアクションをとってしまった。あー、あんまりいい気分じゃない。恐らく向こうもだろうけど。

 長く見積もってあと65時間か──

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