「壁ドン。」
その日は
早く終わったから。
明日の現場の
下見をして帰ろ、
今は雨上がってるけど、
なんか明日もダメそうかな
とか、考えながら
トラックで
細い路地から県道に、
下校中の小学生に
注意しながら左折して…、
(…あ、ここか、
仮囲いで中が見えん、
ゲート閉まってるし。
ちょっと路駐して…、)
…なんて思いながら。
県道脇に
その現場は有った。
新築の小さな
デイケアセンターだ。
ハザードを点滅させて
トラックから降りた。
見れば、
近くにはバス停が有り、
長時間の駐車はまずい。
(取り敢えず、
チラッと見よう、)
気分的に焦っていたのかも
知れない。
…車道と歩道の境の
小さな植え込みを
華麗に飛び越したんだが、
(加齢に、じゃないぜ?)
雨水で路面が
濡れていたのだろうか、
ツルっ!て滑って転んでさ
スローモーションで
説明すると
…前のめりに…、
…現場の仮囲いに…、
…頭をぶつけながら…、
…膝を、強打、したんだ。
「ぐっ!おうふっ!」
思わず声が出ちゃったよ。
(泣)
よく、漫画なんかで
目から星が出た、
なんての有るけどさ、
俺は黒い点々が見えたね、
(泣)
頭は、くらくら、
膝は、ど痛いわ、、、、
子供だったら泣いてるぜ?
「くーっ!!!」
って立ち上がりながら
とにかく
痛いわ、腹立たしいわで、
現場の仮囲いを
ドンドンドンドンって
叩きながら、、、、
頭やら膝やらさすって…、
「あっ!まいちゃん見て!
壁ドンよっ!!」
「わぁっ!あたし、本物、
初めて見たわっ!」
(へ????)
「キスマイの◯◯くんなら
良かったのにー!」
「あ、知ってる、あたしも
テレビで見たー。」
(ちがう、ちがうぞ…?)
振り向くと、そこには
ヘルメットを背負って
ランドセルをかぶった
ちなう、反対、、、
小さな小学生女子が
3人でこっちを見てる。
(は?壁ドン?)
…猛烈に痛いんだけどさ、
なんか
からかいたくなって、、、
一回戻ってからのー、
振り向き様に怪獣の手で、
「ガオーっっ!!!」
って、やった。
「きゃーっ!!!」
って予想以上の
大声出してさ、
緊急事態的に逃げ出した。
(え?うそ?)))
何事かとバス停にいた人が
数人、
一斉にこちらを見る。
おばさん達と
赤ちゃん抱いたママさん、
…赤ちゃん泣き出したー!!
雨上がりの内にと
犬の散歩に
出て来たであろう、
近所のおばさんは
犬を抱き抱えて
来た道を戻る、
(ぉ…、、、、)
自分で耳が
赤くなって行くのが
はっきりと確認出来たわ。
…は…恥ずかしい、、、。
(ダ、ダメだ、帰ろう、。)
足をかばいながら
トラックに乗り込んで、
逃げる様に、、、
まあ、
現場の下見は諦めた。
思うに…、
…チビ達はきっと俺が
転んだ瞬間は
見てないんだろう。
段取りの都合で
その現場には
翌々日位に行ったんだ。
まあ、
頭も膝もたいした事は
無かったし、良かったよ。
…だけどね…、、、
…現場の仮囲いにね、、、
「不審者注意!!!
見たら聞いたら即通報!!」
って、貼って有ったんだ。
もう、俺の事だよね??
どう考えても…・
…う、、、、、、へこー。
あの現場、
もう行きたくない。
みんなが俺を
見てる気がする…。
(泣)