幸運で異世界に……
高校3年受験生真っ只中のある1人の男が、夜の暗い道を帰宅していた。
「んー……受験勉強は、またしなくてもいいかな?」
この男、こんなことは言ってるが、とびっきり頭が良いというわけではない。
成績なら中の上、または上の下ぐらいだろう。
ならばなぜ、こんなにも余裕なのか?
それは男の運がいいからだ。
男はさっき、またと言った。
それはつまり、前の受験でも勉強などしたことが無かったのだ。
だが、勉強してないのにも関わらず、彼のテストの結果は概ね良好。
記号、または番号などで答える問題に関しては、全て適当に選んで、全て当たっている。
そんなバカみたいに
アホみたいに、
現実味がないほど
だけど現実的に、
全て事実にして
そしてたった1つの真実で、
どうしようもなく
とてつもなく、
運がいいのだ。
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他に例を挙げるとすれば、
男が飛行機事故に巻き込まれた時、大勢が死んだ中1人無傷で生き残った。
なぜ、運のいい男が飛行機事故に? と思うだろう。
この日男は、何度も飛行機に乗ることを諦める出来事が多くあった。
きっと飛行機は、最初から落ちる運命だったのだ。
しかし、結局男は飛行機に乗ってしまった。
幸運を無視して……
事故が起きた飛行機の中で、
周りが死んでいく中で、
男は無傷で生き残った。
きっとこの時の男は、世界一悪運が強かったのだろう……
ニュースや新聞では、
奇跡の子、
神に愛されし者、
と呼ばれた。
しかし世の中、妬みや、面白半分で他人を貶す奴もいる。
あるネットでは、
1人無傷で生き残るなんて不気味な子、
悪魔の子、
真犯人(笑)、
計画犯(笑)、
などと噂された。
まあ、この情報は運良く男に知られることはなかった。
世界一運が良くても、イコール幸せだとは限らないかもしれない。
ーーーーー
つまり、
結局は何が言いたいかというと、
何を伝えたいかというと、
この男、有栖川聖夜は世界一運のいい男なのだ。
「毎日勉強勉強、学生って……つまらな……あれ?
なんか……ゆがん……で……」
突然、有栖川の周りの空間が歪み、
やがてーーー消えた。
この現象をもし、地球に神とやらがいたならば、驚いた程度では済まなかっただろう。
神でさえ予測、いや、想像すらしなかった現象だからだ。
有栖川は、
勇者召喚なんかされず、
だからと言って巻き込まれたわけでもなく、
謎の空間に入ったわけでもなく、
神様の間違いが起きたわけでもなく、
女神にお願いされたわけでもなく、
ましてやウサギにも出会わず、
異世界に行ってしまったのだ。
だったら何故、有栖川の身にこんなことが起きたのか?
それはきっと……
運が良かったからなのだろう。
ー後書きー
時間がないので不定期更新です。