シンデレラガール
今日も自分の寿命を延ばすために餌をばら撒く伴埼亮治(主人公)。そして彼の餌に引っかかり今日も犠牲者が・・・。死神に付き纏われている彼がとった行動は。愛を取るか命を取るかは彼方次第。
一限目 古文。
「―――であるからして、ここの意味が―――」
先生が授業の内容の説明をしている。
俺は授業に集中し、ノートに書いていく。
―――トントン―――
俺の肩を叩く人がいる。
「なあ、亮治。あれはどういう意味なのだ?」
叩いた人物は褥であった。
着物姿で長い黒髪、切れ長の目で色白の肌の超絶美人。
たぶん俺が今まであった女性の中でNo1の人物であり理想の女性だ。
「・・・今授業中だから後にしろ」
しかし俺はそっけない返事を返した。
「余が聞いているのに何だその言い方は。いいから教えろ」
しつこく聞いてくる。
「・・・黙ってくれ。今大事な所なんだ」
俺も今話している所は次の中間テストで間違いなく出るのが分かっている為、褥の質問答えることが出来ない。
「・・・・・・むぅ。仕方ない・・・」
どうやら分かってくれたらしいと思い俺は授業に集中しようとした時
「・・・刈るか・・・」
そう言って褥は鎌を出し俺の首元に刃を当てた。
「やめろ馬鹿!!」
俺は立ち上がり大声を上げた。
「・・・伴埼。廊下に立ってろ」
先生は眉間に皺を寄せ言った。
周りの奴らは
「ば~か」
「さっさと行けよ」
「ざまぁw」
と言う男子(愚民)共や
「伴埼君が可哀想だから止めてよ先生!」
「亮くんどこか具合悪いの?保健室一緒に行く?」
「ちょっと!何あんたどさくさに紛れて言ってるのよ!!」
「せんせ~い。私眠いから廊下に立っててもいいですか~?」
「私も~」
と言う女子(クラス全員)が一斉に言った。
「お前達静かにせんか!!授業中だぞ!?」
先生が怒鳴るがまったく聞こうとしない。
「・・・・・・はぁ」
俺はその騒動の中
「どうやら今日の授業はここまでだな」
と言って、廊下に出た。
「・・・おい褥」
廊下に出てすぐ俺はその女性の名前を呼んだ。
「何だ?」
褥は不機嫌そうに応えた。
「いや、何でお前が不機嫌になってんの?なりたいのはこっちだよ!」
って言いたかったが言ったら殺されそうだったので堪えた。
「お前な~、授業中に鎌を向けるなよ。マジで怖いから」
「それは余の問いに応えない亮治が悪い」
そっぽ向いて頬を膨らます。
その行動は正直萌えた。
だが俺は堪えて
「あのなぁ~。そんなんで簡単に魂刈られたら俺が苦労している意味なくなるだろ!大体お前は俺と契約している死神だろ!?そんなんでいいのか!?」
そう、この女性は人間ではなく死神である。なぜ俺の傍に死神がいるかというのは第一話を読んでくれると助かります。(べ、別にめんどくさいとかじゃないからね!・・・すみません)
「そんなの余の勝手だ」
「・・・死んだら閻魔に言うぞ?」
「・・・・・・」
額に脂汗を掻く褥。
「・・・卑怯だぞ」
「五月蝿い!お前がそんな事するのが悪いからだ!!」
「むむむ・・・」
「いいか?今後はそう事は止めてくれ。質問は後で絶対教えてやるから授業はちゃんと受けさせてくれ」
と言った。
なぜそんな事を言うかというと、俺は元々頭は良いがそれで勉強を怠ることが嫌いで(勉強以外でも)、何事にも努力をして結果を出すのを心掛けている。
・・・って言うのは三割ぐらいで後の七割は、真面目に授業を受けている俺の姿に見惚れる女子達の視線を独占する為だ。
「・・・わかった」
渋々と了承した褥だが
「・・・約束を破ったら刈るから・・・な?」
鎌を取り出して妖艶に微笑んだ。
「・・・・・・わかりました」
こうして一時限目は終了した。
その後の小休憩。
俺はお手洗い(トイレ)を済ませ教室に戻る途中
「いた!」
曲がり角を曲がる所で誰かとぶつかった。
「あ、ごめんよ」
俺はそう言って尻餅をついている女子に手を差し伸べた。
「曲がり角で君の姿が見えなかったよ。怪我してないかい?」
俺は魅力的な笑顔(営業スマイル)で言った。
「あ、私こそ余所見をしていたので・・・ってええ!?伴埼君!!」
その女子は大きな声を上げた。
顔は前髪で隠しているから見えなかったが驚いているのは伝わった。
「ん?俺の名前がどうしたの?(やれやれイケメンは辛いぜ・・・)」
「あ、いえ・・・その・・・な、何でも無いです!」
「そう?そういえば君は2-Cの藍咲友香さんだよね?」
「私の事知ってるんですか!?」
「ああ、知ってるよ(そりゃあな、そんだけ背の高い女子なんてお前以外いないからな)」
彼女は身長175cmと女子の中では一番背が高いので有名である。あだ名はのっぽさん。本人には秘密である。
「(しかしこう間近で見ると、やっぱ大きいな・・・)」
背は俺の方がほんの少し上だがやはり大きい。
しかしよくよく見ると、彼女の足はすらりとして長く、スタイルも制服からではわからないが、俺の直感ではボン!キュッ!ボン!であると告げている。
「・・・伴埼君に知ってもらえて嬉しいです」
「何か言った?」
藍咲さんがぼそりと言った言葉は俺の耳にしっかりと聞こえていたが俺はわざと聞き返した。
「い、いえ。何でもないです!」
藍咲さんは両手と顔をブンブンと激しく振った。
「友香~次の授業の体育遅れる・・・って、伴埼君だ~!!」
藍咲さんの友達だと思う人物が声を掛けに来たが、俺の存在に気づくと猛スピードで近づいてきた。
「伴埼君こんな所で会えるなんて!これって運命!?」
「それはどうかな?運命だったらいいね」
俺は営業スマイルで返した。
「ほら響子。私を呼びに来たんでしょ?ご、ごめんなさい伴埼君」
「あ!ちょっと待ってよ~。今伴埼君と・・・って引っ張らないで~!!」
そう言って藍咲さんは友達の響子の後襟を片手で持って引きずって去っていった。
去る時に何度か振り返り俺に頭を下げていた。
「・・・・・・すげえ~力・・・」
俺は呆気にとられていた。
「・・・ふむ」
すると褥が頷いた。
「どうした?」
「・・・次の獲物は決まった」
「獲物って?」
「お前の罪滅ぼしのだ」
「誰?」
「あの女子だ」
褥は指差した方向を見る。
「・・・響子って子か?」
「違う。・・・もう一人の方だ」
「もう一人って・・・藍咲~!?」
「そうだ」
「何でだよ!」
俺は理由を聞いた。
「簡単だ。あやつがお前に惚れてるからだ」
「・・・・・・・・・え?」
「なにを驚いておる。お前は面だけはいいのだから当然だろう」
「確かにそうだけどよ・・・他じゃダメなのか?」
「ダメだ。もうターゲットは変更できん」
「・・・マジかよ~」
俺はうな垂れた。
二時限目 数学
「・・・・おい何だこの文字は?」
相変わらず褥は俺に質問してくる。
「(こいつ、さっき言った事聞いてたのかよ・・・)」
「今は授業中だ。終わったら教えてやるから」
「・・・仕方ない・・・」
しぶしぶ了承してくれた。
俺は再び授業に集中した。
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・おい、亮治」
「・・・・・・」
「聞いてるのか?」
「・・・・・・・・・」
「・・・こっちを向け」
褥は黒板とノートを交互に動かしている俺の頭を無理やり窓に向けた。
――――ゴキッ!!――――
「―――――――!!」
俺は言葉を発することが出来ないほどの痛みを生じた。
そのまま俺は机に顔を突っ伏して暫く動けなくなった。
「おい。寝るでない」
俺の頭をつつく褥。
「(こいつ・・・いつか絶対仕返ししてやる)」
心に復讐を誓い渋々頭を上げる。
「・・・なんだよ」
首をさすりながら言った。
「・・・窓を見てみろ」
「あ?窓?」
褥の言うとおり窓を見た。
「あれは2-Cか」
外を見るとグラウンドで2-Cの女子が高飛びをしていた。
「あれがどうしたんだ?」
「よく見てみろ」
「よく見てみろって・・・ん?あれは」
俺は次に高飛びをしようとしている人物を見た。
「藍咲か」
藍咲が助走をつけ走った。
「相変わらずでかいな・・・」
そして綺麗な背面とびで棒を飛び越えた瞬間
「!!」
俺は確かに見た。
前髪で顔が見えない藍咲の顔を
「ほう・・・中々の美人じゃの」
褥が言うとおり美人だった。
切れ長で流れるような目は、褥とは違い優しい感じがした。それに今は体操服なので肌は制服より露出している為色気が出ている。同学年なのに2つ3つ年上に見えた。
「・・・あいつ、あんなに美人だったのか・・・」
俺はそう言いながらメモリー(脳)にしっかりと焼き付けて保存した。
視力2.0で良かった・・・。
「ふふ・・・お前の目もまだまだじゃのう」
妖艶に微笑む褥。
「う・・・うるせえよ」
そういうが、褥の言うとおりだった。
「(まだまだ俺の眼も甘いな・・・目先の美人だけがすべてじゃないって事か・・・)」
「・・・やる気が出たみたいだな」
俺から発せられるオーラ(イヤラシイ色)を見抜いた?褥は言った。まあ、あながち間違ってはいない。
「ああ。やっぱり俺の獲物は極上じゃないといけないからな」
悪意をたっぷり込めた笑みでにやけた。
「・・・お前本当に中身は最悪じゃの・・・」
「・・・うるせえよ。俺は自分の命(寿命)がほしいんだよ」
「それで?もう計画は建ててあるのか?」
「・・・まかせろ。俺を誰だと思ってる」
不敵な笑みを浮かべ俺は授業に集中した。
「(・・・昼休みが勝負だな)」
昼休み
俺は購買にいた。
ここの学校の購買は一言で言えば戦場である。
腹をすかせた学生が己の食料を確保する為に食糧供給(購買のおばちゃん)の人に声を張り上げている。
「おばちゃん!!カレーパンとカツサンド!」
「クリームパンとサンドイッチ!」
「コロッケパン!」
「・・・やれやれ相変わらずここは戦場だな」
俺は購買に群がる狼(学生)を見ていた。
そして、その狼の群れの中に一際目立つ羊を見つけ、俺は近づいていった。
「・・・・・・」
「どうしたの?パン買わないの?」
「え・・・伴埼君!?」
「亮治でいいよ藍咲さん。藍咲さんも昼は購買なんだね」
俺の存在に気づいた羊(藍咲)は驚いていた。
「う、うん。とも・・・亮治君も?」
「ああ、俺は今日たまたま弁当を忘れてね。だから購買に来たんだ」
嘘だけどね。
「それより買わないのかい?なくなっちゃうよ?」
「うん。買いたいんだけど・・・」
そう言って藍咲は購買に群がる生徒達を見た。
「中々買えなくて・・・」
前髪で見えない顔だが、俺はその顔を覚えているからどんな表情をしてるか容易にわかる。
「なら俺が買ってきてあげるよ。なにがいい?」
「いや、いいよ。亮治君の迷惑になるし」
「迷惑じゃないよ。それに早く買わないと食べたいパンがなくなるよ?」
「でも・・・」
「遠慮しなくていいよ(早くしろよ)」
「・・・じゃあ、カスタードパンとジャムパン・・・」
「OK。ちょっと行って来るよ」
俺はそう言って群れの中に飛び込んだ。
「ごめん。ちょっといいかな?」
「え・・・伴埼君!?」
「こんにちわ。通してくれる?」
「ハ・・・ハイ!皆伴埼君が通るから道開けてー!!」
一人の女子がそう言うと購買に群がっていた学生(女子全員と女子の圧力に負けた男子)が道を開けた。
「ありがとう皆」
爽やかな作り笑顔でお礼を言った。
「おばちゃん、カスタードパンとジャムパン。それと、チョココロネとメロンパンとホットドック」
「あいよー!」
そう言うとおばちゃんは注文したパンを渡してくれた。
「全部で650円ね」
「はい」
俺はお金を渡して藍咲の所に戻った。
「お待たせ」
パンが入っている紙袋を見せた。
「す、すごい」
「そうかな?(当たり前だろ俺が言えば不可能な事は無い)」
「そうだよ。私が言っても皆道を開けてくれる事なんてないから」
「たまたま運が良かっただけだよ。それよりどうかな?一緒に食べない?」
俺は広場にあるベンチを指差した。
「俺、藍咲さんと話したいことがあるんだ。・・・だめかな?」
魅力を最大限まで引き出した微笑を向けた。
「ッ!!わ、わたしで良ければ!!」
ちょろいな。
俺と藍咲はベンチに座り買ったパンを食べた。
「そういえば藍咲さんって運動神経いいんだね」
「え、そ、そうかな」
「うん。今日の二時限目の時たまたま見たんだよね。藍咲さんが飛ぶ姿」
「~///」
恥ずかしそうに俯く藍咲
「それにちょくちょく運動部の人に声かけられるよね?部活は入ってないの?」
「う、うん。私帰宅部だから。それに運動はあまり好きじゃないの」
「どうして?」
「・・・顔が・・・見えるから・・・」
「顔が?」
「うん・・・私自分の顔に自身がないんだ」
「あんなに綺麗な顔してるのに?」
「わ、私なんか全然ですよ!」
俺の言った言葉に動揺する。
「背はでかいし、暗いし、影薄いし、女の子っぽくないし・・・」
自分でそこまで言うか?って思いながら聞いていた。
「(なるほどな。自分に自信がないのか・・・なら)」
「そんなことないと思うな」
「え?」
「藍咲さんは美人だし女の子だと思うな。モデルみたいに背が高くて。暗いのは髪で顔を隠しているからだから切るか上げるかしたらきっと他の男子達も君の事見直すよ?もしかしたら惚れるかもね」
「:。%&?!」
驚いたのか何か意味不明なことを言った。
「(こいつ大丈夫か・・・)」
暫くあたふたしていたが落ち着くと
「私にはそんな魅力ないです。亮治君に声を掛けてもらえるのだって私が物珍しいからだし・・・」
「(ッチここまで言ってもだめか)」
「おい亮治」
不意に褥が話しかけた。
「なんだよ」
「この女子自分にえらく自信がないと見える」
「そんなのわかってるよ。だから自信が持てるように言ってるんじゃないか」
「それだけでは足りぬ」
「・・・何が足りないんだよ?」
「実際に変われば中身も変わる」
そう言って褥は姿を消した。
「・・・・・・なるほどな」
「何がです?」
「藍咲さん今度の休みの日予定ある?」
「今度の休み?ないけど・・・」
「なら俺と出かけない?」
そして休日
俺は駅近くの噴水に立っていた。
俺を通り過ぎる人は皆(女限定)振り返る。
「(学校でも外でも俺は一番だな)」
優越感に浸りながら俺は彼女を待っていた。
「もうそろそろだな」
噴水に設置されたある時計を見た。
時間は十時五分前。
俺は一時間前から待っている。
待ち合わせで遅れる事は男として最低だ。
「お、お待たせしました」
そうこうしている内に彼女が来た。
「俺も今来た所だから大丈夫だよ。藍咲さん」
藍咲の姿を見た。
「(中々のセンスだな)」
藍咲が着ていた服装はボーイッシュ系で上は黒のカーディガンの長袖下はジーパン、頭にはキャスケットを被っていた。
「藍咲さん。その服装とても似合ってるよ(できたら下はスカートが良かったな)」
「そ、そうですか。ありがとうございます」
顔を真っ赤にして照れている。
少し可愛いと思ってしまった。
「どこに行くんです?」
藍咲には行き先を伝えなかった。
いや、伝えたんだが、あの時藍咲は俺から誘いを受けた時放心状態になっていて俺がなにを話しても上の空だった。
「付いて来たらわかるよ」
俺は藍咲の手をとってあるお店に行った。
暫くして
「ここだよ」
俺が連れてきたところは美容院だった。
「亮治君が切るの?」
「いや、俺じゃないよ。藍咲が切るんだ」
「え?」
「ほら入ろうよ」
俺と藍咲は店に入った。
「いらっしゃいませ~」
出迎えてくれたのは女口調の男の店員だった。
「すみません。彼女に似合う髪形お願いします」
「あら、いけめんの男ね。彼女さん?」
「それは秘密です(気持ち悪いオカマだな)」
「ん~いいわね♪秘密を持っている男は♪いいわ。わたしにまかせて」
そう言って店員は藍咲を連れて行った。
俺はその間ソファーに座って本を読んだ。
「なあ亮治よ」
「どうした褥」
「ここは何の店だ?」
「ああ、ここは美容院って言ってその人にあった髪型に切ってくれるお店だ」
「髪を切るのか」
そう言って褥は自分の髪を見た。
「何だお前も切りたいのか」
「・・・いや遠慮しておく」
「・・・・・・」
暫くして
「お・ま・た・せ♪」
さっきの店員が藍咲を連れて戻ってきた。
「ど、どうですか?」
「・・・・・・・・・」
顔を覆い隠していた前髪はバッサリと切られてその素顔があらわになっていた。
この世に倭撫子はいた。
「この子髪とても綺麗で艶が良かったから切ったのは前髪だけよ」
確かに切ったのは前髪だけだったがそれだけで印象がかなり変わった。
それに今着ている服装が完璧マッチしていた。モデルみたいだった。
「・・・褥どうだ?」
俺は褥に声を掛けた。
「ふむ。綺麗な女子になったな」
「褥もそう思うか」
「・・・亮治顔が赤いぞ」
「!き、きのせいだよ」
「あ、あの亮治君。にあって・・・るかな?」
恥ずかしそうに俯くその姿は可愛すぎる。
「ああ、似合ってるよ」
俺は本心で言った。
「あ、ありがとう」
嬉しそうに笑ってくれた。
「(やべぇな。ここまで変わるか・・・美人過ぎだろ)」
「ちょっとあなた達」
オカマ店員がデジカメを持って言った。
「あなた達お似合いなカップルだから写真取らせて頂戴♪」
そう言って強引に俺と藍咲をくっつけて
「はい。チ~ズ♪」
写真を撮られた。
「すぐに現像するから待ってて」
ウキウキしながら現像しに行くオカマ。
5分位してオカマは戻ってきて写真を渡してきた。
「はい。お待たせ。お幸せにネ♪」
美容院から出ると、俺と藍咲はいろんなお店に行った。(もちろん手を繋いで)
藍咲は学校の時と違ってかなり積極的になった。
たぶん、髪を切って自分の魅力に気づいたのだろう。
おどおどした雰囲気はなく明るく笑うようになっていた。
「(ここまで変わるとは)」
俺は藍咲の元気な姿を見て嬉しくなった。
道を歩いていると俺の姿を見て振り返る女達と、藍咲の姿を見て振り返る男達ばかりだった。
「私達カップルと思われてるのかな?」
嬉しそうに聞いてくる藍咲に俺は
「そうかもね」
と応えてあげた。
そうして俺達は日が傾く時間まで遊んだ。
本当のカップルみたいに・・・。
「今日はありがとう亮治君」
最初に待ち合わせた噴水で藍咲がお礼を言った。
「いや、俺は何もしてないよ(・・・そろそろか)」
藍咲は頭を横に振り
「ううん。亮治君のおかげで自分に自信が持てた」
「良かったね」
「それでね自信が持てたついで見たいにな感じになるけど・・・」
きたか・・・。
後ろを見ると褥は鎌を準備している。
―――シャッ。シャッ―――
砥石で鎌を研がないで下さい。マジで怖いです。
「選ぶのはお前の自由だ。愛(藍咲)を取るか、己の命を取るか・・・」
「私!亮治君の事が好きです」
その言葉と共に後ろの噴水が大きく噴射した。
なんてロマンチックな光景だろう。
水しぶきが藍咲にかかって光より綺麗に見えた。
「(クッ!!こんな演出をしやがって!神様は、いやこれは閻魔様の罠か!)」
俺の心に大きなダメージを与える。
「いつも遠くでしか見れなかったけど、あの時偶然にぶつかって初めて目の前で見れた時私の想いはより強くなりました」
―――ブン!ブン!―――
後ろで鎌を振る褥。
やめろ!俺の魂を駆る練習をするな!!
冷や汗をかく。
「そして今。私はあなたに似合う女になれたと思っています。」
頬を赤らめて俺の目を見て言うその姿は可憐だった。
「(やべーメッチャ可愛すぎる!正直こんな女他にいない!今逃すとこの先絶対後悔する!!)」
俺のセンサーそう告げていた。
「・・・さて」
褥は準備完了し俺の首に鎌を当てる。
「いつでもいいぞ。安心しろ痛みを感じることなく刈ってやる」
妖艶微笑む。
やめろ!そんな脅迫されたら選択肢なんて一つしかないじゃないか!!いや一つしかないけど・・・。
「私と付き合ってください!」
「・・・・・・・・・」
永遠に感じるような沈黙の時間。
「・・・・・・ごめん」
俺は口を開いた。
「・・・私じゃダメなんですね・・・」
悲しそうな表情を向ける。
「(ヤメテクレそんな顔で俺を見ないでくれ!本当は付き合いたいよ!?でも俺には・・・)」
後ろに視線を移す。
俺の首に鎌を構えたまま微動だにしない褥の姿。
「(はやく振れ。振らなければ寿命が延びぬぞ?)」
と告げている目だった。
「ああ、ダメだね。お前みたいなのっぽを好きになるはずなんて0%だよ。髪形が変わったくらいで何自惚れてるの?自分の魅力と俺の魅力が対等だと思ってるの?やめてくれ俺はお前より上なんだ。精々自分にあった男を探すんだな。・・・じゃあな」
俺はそう言って藍咲の姿を確認せずに後ろを振り向き歩いていった。
きっと藍咲はその場で泣いているに違いない。
だけど、俺は
「何だ今の振り方は?」
褥が話を振りかけてきた。
「あれでは三日しか伸びぬぞ?」
「まだ終わりじゃねーよ」
俺はそう言ってポケットに入っていた写真を取り出し
グシャグシャに丸めて
藍咲に届くように投げた。
「これでどうだ?」
「・・・三週間」
「まあまあか」
自分の命が延びたことに安堵する俺であった。