第四話 放課後
達彦と杏子が席を立ち智也のほうに歩いてくる。
「これからどうするよ智也は。俺は美術部に行くけどよ」
「どうしようかな。杏子はこの後どうするの?」
「私は料理部に行くつもりだけど。一緒に来てもいいわよ」
どうしようか。中学校の時みたいに帰宅部じゃまずいよね。
「さすがに料理部はね。どうしようか」
「まあ、好きにするといいさ。智也の自由だしよ」
智也が悩んでいると、思わぬところから助け舟が出た。
「まだ部活決まってないのなら、一緒に見に行こうよ」
声がした方を智也たちが見ると、机に寄り掛かって椿が立っていた。容姿にはあっていないけど、無駄に男らしい姿だった。
「え、僕のこと?」
智也が周りを見渡しながら聞き返す。椿は智也を指さす。
「うん、智也に言ったんだよ。いいでしょ」
「よかったじゃねえか智也。こんなかわいい子と見て回れるなんて」
杏子もうなずいている。椿も期待したようにこちらを見ている。
せっかく言ってくれてるし、そんな顔で見られたらちょっと断れないよな。
「わかった。一緒に行こう」
「やった」
嬉しそうに飛び上がる椿。達彦と杏子はそれを見て大げさだなと笑う。
椿は机から歩いてきて、智也の手をつかんだ。
「そうと決まれば早く行こうよ。ほら、早く」
「うわ、大胆だな」
椿に引っ張られていく智也。達彦と杏子が呆気にとられている間に、二人は教室から出て行った。
「行っちゃったわね。いきなり智也は気に入られたのかしら」
閉まったドアの方を見てそう言った。
「かもな。可愛い女の子に好かれるなんて幸せ者だよな」
そう軽い感じで言う達彦。しかしその表情はいつもと違いとても真面目なものだった。
それを見ていたクラスメイト達にとっては、そんな表情もするのかと言う程度の感覚でしかなかった。もしかしたら杏子は、その異常性に気づけたかもしれない。だが彼女はまだ扉の方を見ていた。
前回の投稿から大分、間が開いてしまいました。
文字数は増やすつもりだったのですが、区切りがいいとことなるとここになってしまい文字数があまり増えませんでした。