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アロエ  作者: 小日向雛
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第2話 高校事情

午前8時。


美羽のアパートのドアがどんどんと鳴る。



またストーカー!?



美羽は恐怖で布団の中に潜る。

すると鍵が開いたような音がして、美羽は身動きがとれなくなった。


足音が少しずつ近づいて美羽は体を丸くする。


「きゃっ」

勢いよく布団をはがされ短く悲鳴をあげる美羽にビックリする春平。


「なぁ〜にが『きゃっ』だよ。もう8時なのにのんきに寝やがって。俺は7時50分から待ってたぞ」

ふんっと鼻を鳴らす春平をゆっくりと見上げる。


「正田さん……。どうしたんですか。その格好」


「ん。現代の高校生だよ。ほら、美羽ちゃんの学校の制服だよ」

じゃん! とポーズをとる春平をまじまじと見る。


髪の毛は茶色に戻し、若干立たせている。そしてメガネをかけている。


「なつかしいなぁ〜制服! っと言っても俺中・高は学ランだったからブレザーは初めてなんだよな」


うきうきと話す春平を見て違和感が生じる美羽。


「な、何歳なんですか……」


「あれっ、言ってなかったっけ? 20歳だよ」


一気に顔の血の気が引いてきた美羽を見て、春平はそろそろと美羽から離れていく。


「ありえない! まだ高校生か中学生だと思ってたのに!」


「マジで!? やった! 俺中学生の依頼もこなせるじゃん!」


苦し紛れにそう言って美羽に、ハンガーにかかっていた制服を放り投げる。


「お、俺外で待ってるから早く着替えてねっ! マジで学校遅刻するから」




しばらくして、美羽が部屋から出てきた。


「おっ。可愛いね! それじゃあ行こう!」

と美羽の腕を強引に引っ張って走り出す。


「待ってください正田さん!」


「のん。今日の俺は野田カイだよ!」


「の、野田さん!?」


息を切らして苦しそうに叫ぶ美羽。


「うん! でも、美羽ちゃんの彼氏だから、カイって呼んで!」


「はぁ!?」


「俺も美羽って呼ぶから」


「ちょっ、正田さん!」


「カイだってば」


顔が一瞬赤くなる。が、美羽は意を決して叫ぶ。


「〜〜〜カイっ! 手、痛い」


「え゛っ!?」

春平は美羽の手を放して立ち止まる。


「ごめん。力入っちゃったかな」


心配そうに美羽の手を見ると、美羽は静かに泣き出した。

それを見て春平はぎくっと肩を動かす。


「そんなに痛かった!?」

おろおろとする春平を置いて歩き出す。









転校生として同じクラスになった春平と美羽。


そんななか、美羽は春平が意外にもモテるので、近づきにくくて女子と話している。


「美羽〜! 昼御飯食べよ」


ぱたぱたと手を振る春平を見て、美羽は納得のいかない様子で春平のもとへ歩く。




「今日は夕食美羽の家で食べるから」


「!? 何で!」


「だって〜、できるだけ一緒にいた方がいいっしょ」


その言葉についつい納得してしまう。


「そういえば、今朝どうやって私の部屋に侵入したんですか。合鍵も渡してないのに」


「ピッキング」


それは犯罪ですよ! と叫びたいが自業自得だと口をつぐんだ。



もともと起きなかった私が悪いんだし、しょうがないか。

昨日は怖くて中々眠れなかったし。



昨日春平が去ったあとに、実は無言電話が何度もかかってきたのだ。


しかし、それを春平は知らない。



言った方がいいのかな。



「あ、あの……」


「カイ―――――!」

遠くから数名の女子の言葉が美羽の言葉と重なってしまって、春平には届かなかった。


「お隣邪魔させていただきま〜す」

と、有無を聞かずに春平の隣に座る女子を見て、

「別に今言わなくてもいいか」と、美羽は弁当を食べ始めた。










放課後、一緒にアパートへ戻るが、郵便受けを見て今にも倒れそうな顔をした美羽を、春平は後ろからしっかりと支える。



しっかりと、今日も封筒が入っていた。



「中、見ていい?」

反応が返ってこない美羽を無視して、封筒を取り上げる。


その中には大量の美羽の写真が出てきた。


学校に登校中や、家の中での行動まで。


中には着替えの最中のものまであった。


「はぁ〜。よく撮れてるね。これ、貰っていい?」


にっこりと微笑んで楽しそうに言う軽々しい言動が美羽の地雷を踏んでしまった。


その瞬間、春平は何が起こったのか理解できなかった。


気付けば自分の左頬が熱を帯びていた。


「ふざけないでっ!」


美羽の頬から雫が落ちているのも気にせずに、春平は不機嫌そうに美羽を睨み付ける。


「別にふざけてねぇよ」


「じゃあ何だって言うの!?」


春平は何も答えずに横を向く。


「俺今日はもう帰る。明日の朝また8時に迎えに行っから」

春平は封筒を持ったまま、美羽に背を向けた。




部屋に入り、部屋着に着替えると、玄関のドアが鳴り響いた。


一瞬びくりと肩を動かしたが、春平かと思いドアに近づく。


「しょ……」


「別れろ」


時間が止まってしまったような感覚に陥った。


「あの男と別れろ」


美羽は身動きがとれなかった。


荒い呼吸がドア越しに聞こえてくる。

かなり興奮しているのだろう。


美羽は殺されるのではないかと錯覚した。


「おい。美羽。俺の彼女になるって約束しただろ!」


どんどんと繰り返しドアを叩くストーカー。


もちろん、そんな約束はしていない。


美羽は腰が抜けて座り込んでしまった。


「なぁ美羽……。裏切らないでくれよ。俺はお前を愛してんだよ」

少し優しい声が聞こえて、足音が遠ざかっていくのが分かる。


美羽は急いでバッグの中に入っている携帯を震える手で握りしめる。


春平と連絡をとりたくても電話番号を知らない。

アロエの連絡先さえ知らない。



馬鹿だ……私。



アロエに行きたくても外に出ればストーカーが待ち伏せしているかもしれない。

監禁されたような状態で、とりあえずカーテンを閉めて布団に潜るしかなかった。






春平はただ封筒の中の写真を見つめていた。


「しゅんちゃん! ほっぺたどうしたの!?」


「うぉうっ!」

後ろから美浜さんに左頬を触られて後頭部で顔を攻撃してしまう。


「ぎゃっ! は、鼻つぶれるって」


「あ、ごめん」


「で、どうしたの、それ」


口は笑っているのに目は心配そうに細くなっている、不自然な表情だ。


「ちょっと。客に」

ふぅ、とため息をもらして写真に目を戻す。









「美羽……」



「別れろよ」



「愛してる、美羽……」



何度も何度も留守電のメッセージに入れられる伝言。


気がおかしくなりそうだ。








そして美羽は、紐のほどけた運動靴で必死にアロエに向かった。




毎回読みづらい文章ですみません……。

もっと上手く表現できるように頑張ります!

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