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アロエ  作者: 小日向雛
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第26話 共同作業:後編

「何かご用でしょうか?」


明らかに怪しい男5人組に、カウンターの男性が声をかけた。


しかし男は何も言わずに、カウンターの男性をじろりと見た。


「そちらのアタッシュケースはお預かりしてもよろしいですか?」


全員が1つずつ保持している黒光りしたアタッシュケースに、男性が触れようと男に近寄った。


その瞬間


「触れるな」


男の地に響くような低い声と同時に、激しく高い音が耳をつんざいた。


それは紛れも無い男の胸元から姿を現した拳銃から出た音だった。


突然の銃声に、ビル内に悲鳴が飛び交う。


「騒ぐんじゃねえ!」


そうして威嚇のためにもう1発、空に向かって銃声が響く。


「このビルは俺達が占拠する。さぁ、痛い目見たくなかったら黙って従いな」




「うっ、腹痛ぇ」


急に腹を押さえて背中を丸くした高瀬。


「何か変なものでも食ったのか?それともハルに毒でも盛られたか」


「お前葵のこと何だと思ってんだ。俺にそんなことするわけねぇだろ」


そう言いながらも、高瀬の腹からは「グギュルルル」という音が響いている。


「俺ちょっとトイレ行ってくるから、お前は仕事続けてろ」


腹を抑えながらトイレに駆け込む高瀬を見て、春平は溜息をつきながら再び仕事に没頭する。


「ちょっと高瀬どうしたのよ?」


「腹痛いらしいですよ」


「全く情けないんだからー」


ぷんぷんと怒る田中を興味有り気に春平は見つめていた。


そんな矢先のことだった。




突然、後頭部に銃口を打ち付けられた。




「(まいったな)」


春平はしゃがみ込んで頭を抱えるような体勢を取らされていた。


ロビーに会社員全員が集合させられ、監視されている状態の中、春平は現状を整理していた。


今このロビーには社員全員、そして拳銃を持つ男が4人。もう1人は他に人間が居ないのかビル内を確認中なのだろう。


たった今、このビルはこの男達によって占拠されている。


目的は何だ。


1番早く思いついたのは金だ。つまりは強盗。


それか、社長に何かしらの恨みを持つ人間の反抗か。


「おい!てめぇだよ聞いてんのか!」


どん、と背中を蹴られて我に返る。どうやら男に声をかけられていたようだった。


「はい……?」


「外に警察が来ているらしいからな。ちょいと現状を教えて脅してやらなきゃならないんだ。お前、人質として俺についてこい」


春平は何も答えずに男を見上げた。


「何だよその目は」


銃口を頬にぐいぐいと押し付けられて春平は目線を逸らした。


そうして立ち上がって共に入り口へと向かう。


春平は両手を上げて歩き続ける。後ろからは男が春平の後頭部に銃口を突きつけているのが感じられた。


「早く歩け」



チッ、この野郎。



苛つく感情を抑えて言うことを聞き、そのまま歩き続ける。


「―――っと」


突然、春平は両手を上げるのをやめた。


「どうした」


「トイレ行ってもいいですか?」


「ふざけるな」


「ふざけてません。本当にやばいんです」


「我慢しろ」


「無理です、も、漏れそう」


春平は顔を真っ青にして冷や汗をかいている。その様子をじっと睨みつけて、男は長い溜息をついた。


「下手な真似はするなよ」


そう言って後ろから銃口を突きつけたまま入り口付近のトイレへと向かう。


完全に周りの人間がいなく、2人だけの空間を確認してから春平は呟いた。


「右よーし、左よーし」


「!?」


「強盗する日にちと、人質役の選択ミス。それが大きな人生のミスに繋がったな、親父さん?」


くるりと方向転換して、男を見つめる春平。表情は自信に満ち溢れた笑顔だ。


「てめぇ!」


男が引き金を引くのより早く、春平は男のみぞおちを強打した。


小さな悲鳴をあげたが、そのまま春平は男を掴みあげて、地面に叩きつける。


「高校の時の柔道の授業がこんなにも役立つもんだとは思ってもいなかったな」


ふぅと溜息をついた春平の目の前には、倒れてピクリとも動かない男の姿。おそらくは頭部を強打したか。


春平は男の持つ拳銃を目にして、急に恐怖を感じた。


「怖ぇえ!俺、こんな武器目の前にしてよくやったなー。じゃ、これは貰っとくか」


慎重に手から銃口を奪い取って、男はトイレの個室に縛り付けておいた。


「よっし」


これからどうしようかと思案して、ゆっくりとトイレの窓から外の様子を窺う。


外には、大勢の警察が待っている。できるだけ刺激しないように行動は起こしてはいないが、防弾に関しては準備万端といったところだ。


それにしても春平にしては不都合。


「ったく。こんなにサツが居たんじゃやりにくくてかなわないな。こりゃ超過料金とらなきゃ割に合わないっての」


自分で呟いて、そういえば高瀬どうしたかな、と春平は考えていた。











「だー!ったく何なんだよ畜生!」


高瀬は1人叫んで、1人でトイレにこもっていた。


「やっぱり葵か?葵に何か盛られたか?」


激しく悲鳴を出す腹を押さえて、高瀬は滝のように流れてくる汗を拭った。


「しかし」


高瀬は全神経を耳に集中させた。


何やらやけに静かなのだ。まぁ、もう6時になるので、不思議ではないといえば不思議でもないのだが。


「嫌な予感がする。感だけど」


「おーいうんこたれ」


聞き捨てならない発言が聞こえて、高瀬はギクリと肩を竦めた。


「腹の調子はどうよ」


紛れもなく春平の声だ。


「最高よぉ」


「そっか。んじゃあ洩らしてでも出てきてもらおうかな」


その声がふざけている様ではなく、真剣な声音だったので、高瀬は個室の中で違和感を覚えていた。


「外で何があった」


「特に何も。別に高瀬がうんこしてる間にビル内に強盗がやってきて占拠されたなんていう事件は起きてないさ」


「強盗か……」


「社員全員がロビーに集められている。集められていないのは、個室に隠れてた高瀬ぐらいだよ」


高瀬はふむ、と考え込んだ。


自分がトイレに入って居る間にビルは強盗により占拠された。今この状況で自由なのは、高瀬と、春平と


「社長はどうした」


「ロビーには居なかった」


「そうか」


ほっと一安心して溜息をつくと、高瀬は事の矛盾さに気付いた。


「……どうして社員が全員人質にされてんのに、お前だけ自由に歩き回ってんだよ」


「自由じゃねぇって。外にサツが集まっててさ、脅しの為に強盗が俺を外に連れて行こうとしたんだけど、まぁ、まんまと脱出してお前がいるトイレまでやってきたって話さ」


「成る程ねぇ。で、その強盗は?」


「下の階の便所の個室でネンネだよ。銃もってたから頂戴してきた」


個室の外でガチャリという金属音が聞こえて、高瀬は背筋を凍らせた。


「よくやるなお前。怖くねぇのかよ」


「倒してからすっげー怖かった」


苦笑いが聞こえる。


気付けば腹痛は収まってきている。


「奴らの狙いは何だと思う、春平」


いつになく真剣な声音に春平は驚きつつも、しっかりと反応する。


「そうだな。おそらくは社長か、金。もしくは両方」


「どっちにしろ社長には危害が加わるかな」


そんな声の突如、個室のドアが豪快に音を立てて開けられる。中からは怒りに目を吊り上げた高瀬が出てくる。


「それじゃあ行こうか」


高瀬の双眸はメガネの下で輝いていた。



平穏なビルに突如現れた強盗たち。

彼らの目的は一体……っ!

次回、反撃開始です。

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