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第7章
コインを一つの椀に集め、それをライラが持つ。トルネとネルで交代してシュカをおぶりながら、街の医者に連れて行く。
ドンドン
「先生!医者の先生!」
トルネが診療所の扉を拳で叩く。すると、中から白髪と白ひげを蓄えた老齢の医師が現れた。彼はネル達を一瞥すると、顔を歪めた。
「何だ、今は診療時間外だ、ガキ共」
「シュカを診てくれ、先生。ひどい熱なんだよ。このままじゃどうなるかわかんない、お願いします!」
地べたに額をこすり付けて懇願するトルネを見て、ライラが手に持っていた椀を差し出した。
「お金ならあります。これで、シュカを診てください!」
医師は訝しげに椀を受け取り、その中に入っている金額を確かめた。
「ふざけるな!こんな金で医者にかかろうってのか?これじゃ診察どころか薬も買えん。諦めるんだな。憎むなら、今のトマスとこの世界を憎め」
そう吐き捨て、医師の男はドアをバタンと閉めた。その残響が、三人の耳に木霊し、いつまでもこびりついていた。