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幕間
「――――――おしまい」
青年は、そういうと、ふーっとため息をついた。
私はたずねた。
「旅人は、どうして食べられてしまったの?」
青年は笑った。
「彼は罪を犯したから、森に魅入られてしまったんですよ。怪物は罪人を喰らって、その数だけ首を増やしていくのです」
館の主人は、そう言うと、テーブルの上をじっと見つめた。
「どうして、怪物は生まれたのかしら・・・」
「なにもないところからは、なにも生まれない。しかし、怪物は森から生まれた、と思うのがそもそも間違っているのかもしれないね」
いつのまにか、目の前の男の表情は、どこか悩ましげな色を帯びている。
私は、窓の外を見た。まだ嵐は止まない。
さて、と青年は言った。
「マリア、次は貴女の番です」
私は名前で呼ばれてどきりとした。
なにか胃の奥にひっかかるような、胸が苦しくなるような気持ちがした。
「ミスタ・オースティン」
「ウィリアムで結構ですよ」
私は深呼吸をした。
「それでは、ウィリアム・・・、私のお話は、ある一人の少女の半生にいたしましょう」