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嘆きの森  作者: 遠野沙子
序章
5/9

違和感

青年について、階段を上り、二階にあがった。

エントランスは吹き抜けになっているので、エントランスを見下ろすようなかたちで壁に沿って歩く。

曲がり角があって、廊下へ入る。

その廊下も広くて、長くて、突き当りは見えない。

床はやっぱり赤いビロードの絨毯で、壁は白いつるつるした象牙。

ところどころ大きな肖像画がかけてある。


青年は、きょろきょろ回りを見回している私の前を歩きながら話した。


「私は、この屋敷に一人で住んでいるので、ちょうど退屈していました。普段から来客もおらず、ほんとうに一人で暮らしていましたから」


私は、緊張しているので、はぁ・・・とだけしか言えなかった。


「申し遅れましたが、私の名前はウィリアム・オースティン。貴女は?」


「マリア・・・です。マリア・ウェストウッドです」


ウィリアム・・・。

私は目の前を歩く青年の背中を見た。

肩幅がとても細い。華奢だ。

髪はさらさらしている。

白いうなじに髪がかかっている。


「マリア、貴女はこの近くの村の人間ですか?」


「はい、もともとはこの村で、家の畑を守っておりました。7年前に奉公に出てから、初めて帰ってきたのです。それが、森の中で道を失ってしまって・・・」


「そうですか、災難でしたね」


青年は、そういうと、少し振り返って私に微笑みかけた。


あれ・・・?

なんだろう、この気持ち・・・

ずうっと前に、こ の ひ  と     を―――――――――




それから、私は廊下の途中で部屋に入り、傷の消毒をしてもらい、新しい服も出してもらった。

着替えている間、青年は部屋の外で待っていた。


着替え終わって部屋から出ると、青年は、よく似合っています、と言ってほほえんだ。


「まるで、あなたのために誂えたようだ」


それから、彼は廊下の突き当たりの大きな黒い扉を開けた。


「おはいりなさい」


彼は扉を開けて、招き入れるように私の左手を取った。

ひんやりしているけれど、どこか懐かしい温かみがあった。




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