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嘆きの森  作者: 遠野沙子
序章
4/9

館の主人

エントランスの真ん中から、長く伸びた、幅広の階段の上に、男が立っていた。


「こんな夜中に客人とは、珍しいこともあるものです」


そういって彼はほほえんだ、ような気がした。


「ごめんなさい、勝手に入ったりして・・・誰もいないと思ったので・・・」


私はあわてて言い訳した。

それを彼は、階段を下りながら静かに聴いていた。 

私はドアの近くにいるから、階段のふもとにいる男との距離はけっこうある。

でも、彼が若いということはわかった。

まだ20代だろう、少なくとも私と10も違わないはずだ。

すらりと伸びた細身のからだによく合っている、黒い紳士服。

髪の色も黒檀のように美しい。

でも肌はまるで日に当たっていないかのように白い。


「この雨ですから、大変だったでしょう。かわいそうに、服がぼろぼろだ」

青年に言われて、私は自分の身なりを見た。

かぎざきだらけのスカートに、エプロン。

足も腕も泥だらけで、ところどころ血がにじんでいる。

靴はいつのまにか片方なくしていた。

それを見たら、だんだん痛みを感じてきた。


青年はいつのまにか私の近くに来ていて、手を差し出していた。

「おいでなさい、手当てをしましょう。ついでに、泊まっていくといい。こんなお嬢さんを、一人放り出すことはできません」


私は困惑して彼を見上げた。


なに、心配することはありませんよ、わたしはなにもしませんから。

彼はそんなふうでほほえんだ。



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