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伝説の光龍でしたが、目覚めたら美少女になっていました ~英雄の末裔と巡る王国再建の旅~  作者: 九二重


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プロローグ:街中で劇を見る謎のカップル(?)

初投稿です!よろしくお願いします!

 昼下がりのヴェルディア王国のとある大きな街の広場は、子どもたちの歓声で賑わっていた。

石畳の一角に組まれた小さな木の舞台。その前には十数人もの子どもが座り込み、紙芝居屋の老人へ熱い視線を送っている。


「そして若き英雄は出会ったのじゃ! 空を裂き、光をまといて飛ぶ、一頭の龍に!」


 紙芝居がめくられる。

 描かれていたのは、白い体に金の瞳の龍だった。この国の伝説の象徴である光龍ディメトロだ。

 大きな翼を広げ、まばゆい光を放ちながら空を舞う姿に、子どもたちが一斉に歓声を上げる。


「うおおお!」

「龍だーっ!」

「かっけえ!」


 老人は満足げに頷いた。


「最初は反発し合っておった二人じゃが、やがて互いを認め合い、種族を超えた友となった。そして――」


 物語は続く。


 人々を傷つけ、苦しめてきた魔物との戦い。


 光龍をはじめとした志を共にする仲間との冒険。


 人々が健やかに、幸せに暮らすための国の建国。


 そして...。相棒である光龍ディメトロとの最期の別れ。


「光龍は戦いの中で命を落とした。しかし英雄はその遺志を継ぎ、人々のために国を治め続けたのじゃ」


 最後の紙芝居が閉じられる。

子どもたちは興奮気味に口々に感想を叫んだり、英雄の真似をしながら走り去っていった。


「やっぱ光竜最強!」

「英雄もかっこよかった!」

「うおお!光龍ソード!光龍ソード!」


 そんな声が遠ざかっていく。子ども達はもういない。

 だが、その場にはまだ二人の若者が残っていた。柔和な雰囲気の若い男とフードを目深にかぶった人物。遠目に立って紙芝居が終わった後も同じ方向を眺めている。


「相変わらず人気だな。この国じゃ定番の昔話だけど」


 柔らかな声でそう言ったのは、緑の瞳を持つ青年だった。


 陽光を映したような明るい茶髪。


 自然に口角の上がったどこか人を安心させる笑顔。


 冒険者らしい軽装の下に隠れているが、その立ち姿には育ちの良さが滲んでいる。

 そんな男性___アルは隣へ視線を向けた。

 そこには薄緑のマントを羽織った人物が立っていた。


 深く被ったフードのせいで顔は見えない。

 それでも、女性だと分かる。


 細い肩。


 しなやかな身体の線。


 風に揺れる光の加減で薄く黄味がかって見える白金色の髪。


 ただ立っているだけなのに妙に目を引く、不思議な存在感があった。


「ディーはこういう話、好きそうだよな」


「ふむ」


 短く返事をしたあと、ディーと呼ばれた彼女は片付け始めている紙芝居を行っていた方向を見つめた。


「悪くない話であった」


 若い女性の声だがいやに老人臭く偉そうな口調だ。そしてどこか懐かしむような声音だった。


「龍も英雄も、少々美化されすぎておる気はするがな。龍は上品すぎるし、英雄は言葉が少なすぎる。あいつはもっとはねっかえりでグイグイ行く男だったはずだ。トカゲ風情やあの坊主があまりにも神格化されすぎている」


「”トカゲ風情”とか”坊主”呼びって、光龍様や王様に随分偉そうなこと言うな~お前」


 悪くないと言った割には饒舌かつ辛口にあーだこーだ言うディーに、アルは不愉快になるでもなく、驚き半分興味半分で片眉を上げる。


「まるで知り合いみたいな言い方するよな」


「ふふん、知り合いであったかもしれぬな」


「何だよその言い方。まさか光竜ディメトロ本人だったりするのか?」


 アルは冗談めかした一言を投げかける。そんなありえない言葉に普通は否定なりなんなり反応はするだろう。


 だが。

 ディーの肩がぴくりと揺れた。

 ほんの一瞬だけ。

 ほんのわずかだけ。

 図星を突かれた人間の反応だった。


「…………」


「…………」


 しばしの沈黙。

 そんな中でも街の人々は賑やかだ。

 気まずい静寂の中、やがてディーは咳払いをひとつした。


「くだらぬ戯れ言よ」


 そう言ってふいっと顔を背ける。

 しかし背ける瞬間にフードの隙間から見えた耳は少し赤く、体の動きもぎこちない。

 アルヴィンは吹き出しそうになるのを必死に堪えた。


(やっぱり表情豊かなんだよなあ)


 本人はクールに、クレバーに上手く取り繕えているつもりなのだろう。

 だが隠し事が致命的に下手だ。


 まるで長年生きた賢者のように振る舞っているくせに、時々、世間知らずな少女の様にびっくりするほど分かりやすい。


「アルヴィン」


「アルって呼んでくれよ。どうしたんだ、ディー?」


「市場へ行くぞ」


 くるりと振り返ったディーの金色の瞳がフード越しでも分かるくらいに輝いていた。


「先ほど良い匂いがした。肉だ」


「肉」


「しかも牛肉の匂いだ」


 どうやら大事なことらしい。


「なるほど」


「アル、急がねば売り切れる」


 そう言うと彼女は足取り軽く歩き出した。

 どこか誇り高く。

 どこか無邪気に。

 まるで人の姿になった竜そのもののように。嬉々としているその後ろ姿が先程の劇を見て走り出した子どもと重なる。


 アルはそんな背中を見つめ、ふっと目を細めた。


「……本当に」


 小さく呟く。

誰にも聞こえないほどの声で。


「会いたかったよ」


 そして彼は笑いながら、その後を追った。


閲覧いただきありがとうございました!屋台みたいなスタンドで売ってるケバブとか食べてみたいですよね。

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