第2の試練
俺は試練の扉へ再び戻ると、先程の情熱の試練の扉は炎に燃えて消えていった。
俺はまた一つずつ試練の扉を確かめた。
おそらく最後の試練だろうと思われる「勝利の試練」はもちろん開かなかった。
勝利はきっと王として勝利を導けるかどうかの試練だろうから。
次に王として必要なのは今まだ俺に足りない勇気だ…。
俺は勇気の試練の扉に入った。
勇気の試練の先も灼熱の大地が続いていた。
先を歩き続けていると城下町が見えてきた。
石畳には市民の遺体が転がっていた。
きっと敵から逃げることが出来なかったのだろう……まだ先の未来がある小さな子どもから大人までこんな残酷な殺され方…一体誰が。
「なんて…酷いことを…。」
俺は小さな子どもの遺体を抱き上げ、強く抱き締めた。
俺はこれからルビーン国がこうなってしまったらこの市民達を守っていかないといけないんだ...。
絶対にこんなことはさせないッ…未来ある市民たちをこんな目に遭わせはしない!
すると街の先から悲鳴が聞こえてきた。
市民が助けを求めてるんだ...俺は抱き締めていた子どもをそっと降ろし、傍に植えられていた花を子どもの手に握らせた。
必ず俺が君たちを守ってやるからな…。
俺は涙を流しながら、その場を後にした。
街の中心地に向かうと多くの市民が囚われていた。
この街を襲撃した悪人は高笑いをしながら市民を残酷に殺していた。
「止めるんだッ!」と大声で叫ぶと悪人は俺の方を睨んできた。
「おい!若造!テメェも死にてぇのか!?」
すると悪人はこちらに向かって襲いかかってきた。
俺は剣を抜き、その悪人を斬り裂いた。
「許さない…、俺は市民を守り抜く…!」
悪人は黒いモヤになって消えた。
「親分!!助けて!!」
するとその悪人のボスはゆっくりと歩いて現れた。
その悪人は顔から下まで全て重い鉄の鎧を身にまとった悪人だった。
「お前が新たな王か?そなたに勇気があるかどうか試させてもらおうか?」
こいつを倒さないと…きっとこいつが市民を殺したんだ。俺はここで…こいつをやっつける、市民を守るためにも!
ただ情熱の試練にいた炎の魔人よりかなり手強そうな雰囲気が漂っていた。
きっと街に倒れていた市民もコイツが……。
俺はレイピアを構えた。
「お前…一体何者何だ?街をこんな風にして!!」
「私は黒炎の騎士だ、この街を支配するためにやってきたのだ。」
「お前が街に住む人々を殺ったのか…?」
「そうだな…私は手をかけてないが、私の可愛い部下が殺ったようだな…。だとしたらどうするのだ?」
「市民を傷つける悪人は…俺が許さない…!」
俺の中にあるルビーの力は滾らせていた。
きっと俺の今の気持ちを理解してくれているんだ…ルビーの力は。
俺も強くレイピアを握り、敵に向かっていった。
黒炎の騎士は鉄の鎧であるため、攻撃は何一つ通さなかった。
敵は持っていた大剣で俺を薙ぎ払った。
吹き飛ばされ壁に強く当たってしまった。
かなり重い一撃だな…本当に倒せるのか、まずあの鉄の鎧が問題だ…。
「どうした?若造。そんな弱い力で倒せると思っていたのか?今までの王と比べて弱すぎるな。」
「だろうな…炎の魔人にもあの歴代ルーベル王にも言われたよ…!」
俺は痛みを感じながらも壁から抜け出した。
レイピアを杖代わりにし、なんとか立ち上がった。
身体があちこち痛む...黒炎の騎士の弱点は一体…。
なんせあの鎧が問題だ…このレイピアじゃ勝てない。
「…ッ!?」
考えていると黒炎の騎士は大剣で薙ぎ払い攻撃を仕向けてきたのだった。
危うく首を斬られかけそうだった…。
「戦場において、敵は相手の隙を狙い攻撃をしてくる。わかっておらんのか?」
そうだ…相手に隙を見せてはいけない…。
いついかなる時も相手に集中して見ていないと…。
「立て!若造!貴様はルビーの力に選ばれた者だろ?怖じけていてどうする!男なら王ならシャキッとしろ!!」
わかってる…わかってんだよ…!
そんなことぐらい!立って…目の前にいる敵を倒さなきゃいけないことぐらい…!
だけど…上手く力が入らないんだよ!
ふと顔を上げた瞬間、黒炎の騎士は大剣を大きく振り上げ俺の首を切ろうとしていた。
あ…終わったわ、俺…。
「若造よ…サヨナラだな!!」
俺は覚悟した、その時…!!
俺が持っていたレイピアは勝手に俺の身体を動かし、黒炎の騎士の攻撃を弾いたのだった。
俺の中にあるルビーの力が働き、レイピアは姿を変え、真っ赤な刃を持つ大剣になったのだった。
「負けては駄目だ!君は立派な強い王になるんだろ!」
すると再び、俺の中に眠るルビーの力が呼びかけてきた。
そうだ…俺は負けてはいけない…俺は大切な市民を守るんだ…!!
俺は大剣を地面に突き刺し、立ち上がった。
「負けちゃ駄目なんだ…俺は!!」
俺の中にあるルビーの力は熱くなっていた。
悪者を成敗する情熱が滾らせていた。
今まで持ったことのない重たい大剣を持ち上げ、黒炎の騎士に斬りかかっていった。
「やっとやる気を出したか!素晴らしい!」
何度も斬りつけても全てを防がれた。
俺はルビーの力に動かされるがまま、黒炎の騎士を斬りつけた。
「そう何度も斬りつけても…無駄だ!」
すると黒炎の騎士は俺の攻撃を弾いた後、再度なぎ払いをしてきたのだった。
また飛ばされる!と思ったその時、恐怖で震える手で吹き飛ばし攻撃を弾いた。
すると吹き飛ばし攻撃は黒炎の騎士に当たり、吹き飛ばされたのだった。
まさか跳ね返されると思っていなかったのか?
黒炎の騎士の周りは砂埃が舞っていた。
俺は警戒しながら、黒炎の騎士に近づいた。
黒炎の騎士の仮面がガシャンと重たい音を立て、地面に落ちたのだった。
よく見ると俺と同じ髪の色をしている…それに顔もそっくりだ…。
俺は黒炎の騎士に触れようとすると手を強い力で掴まれた。
「よく似ているだろ?俺よ…。」
「俺?」
「俺は…お前が王として失脚し、黒炎の騎士となって復讐に燃え盛って、ルビーン国の民を根だやそうとしたお前だよ…!」
「失落…?」
王として失落した俺が目の前にいたのだった。
目の前にいる黒炎の騎士は失敗した俺の未来だった。
まさか俺は未来でこんな残酷になるのか…?
俺の目は怖さで揺らいでいた。
「お前は王として頑張ろうとした。だが…リュビの言うことを聞かずに色々な施策をしようとした。その施策は民をも怒らせてしまった。リュビは国民の声を聞き、俺を廃位させた。王を廃位させられ、怒り狂った俺は投獄していた悪人と手を組み、お前の大切だった唯一の親友焔も、リュビも民さえも殺めた…。」
焔もリュビも民も殺す?未来の俺が…?
俺は…そんなことしない!!
こいつは俺を…動揺させようとしてるだけだ!
俺は空いている手を強く握り、黒炎の騎士の顔を殴った。
「…ゲホッ。よく殴ったな…素晴らしい勇気があるじゃないか。随分と変わったな…昔の俺。」
黒炎の騎士は俺に少しだけ笑ってみせた。
違う…こいつは俺じゃない。
黒炎の騎士は俺の握っていた手を離し、懐に入っていた片方のイヤリングを取り出した。
「よく頑張ったな…、これは勇気の試練のもう片方のイヤリングだ。さらに強くなれる…。」
黒炎の騎士は俺の手に強く握らせた。
すると俺を強く抱き締めた。
「俺のようになるなよ…俺。リュビの言うことは絶対聞くんだ…、お前は…俺は立派な王になれる。民を守る勇気を忘れるんじゃないぞ…。」
俺の耳元で囁いた後、黒炎の騎士は黒いモヤになって消えてしまい、黒炎の騎士の鎧だけがその場に残ってしまった。
鎧からは一枚の写真が出てきた、騎士になった焔と王になった俺と一緒に笑顔で映っていた写真だった。
焔…、お前立派な騎士になるんだな…。
だとしたら黒炎の騎士は…本当に俺だったのか。
すると写真は炎に燃え、灰になって消えていった。
俺は黒炎の騎士だった俺のようになってはいけない…リュビの言うこと、民の願い…ちゃんと聞いてあげれる王にならないと…。
後ろには試練の扉が建っていた。
情熱の神器、勇気の神器を手に入れた俺は無気力だった今とは違う、王として民を守り導く人間になったんだ。
きっと最後の「勝利の試練」も上手くいくはずだ…。
大剣は元のレイピアの姿に戻り、俺はソードベルトに直し、試練の扉に入ったのだった。




