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宝石の力を持つ者  作者:
ルビーの力を持つ者
13/14

グラナートへ

翌朝、俺は戦闘服に着替え玄関に向かった。

玄関にはリュビと男の子と...知らない兵士がいた。

ここに来て、数日しかまだ過ごしていないから会えてない人は沢山いる…。

多分この兵士も凄い人なんだろうな…。


するとその兵士は、俺の前に出てきて片膝をつけて忠誠ポーズを取った。


「お初にお目にかかります、陛下。私はルビーン国の騎士団長のラールと申します。この度、陛下がグラナートに行くというのを聞き、護衛として共に向かわせて頂きたく思います。」


「ああ頼む。心強い限りだ。」


俺はラールと目線を合わせ、彼の肩を叩いた。

心強い、とっても助かる。

いくら試練を1人で勝ち抜いたとはいえ、あの時は仲間がいなくてどれ程寂しい思いをしたか。


「ラールは、メラーの兄でもあります。数々の苦難をも勝ち抜いてきた素晴らしい騎士であります。」


「メラーの兄!?」


あのメラーの兄!?

見たことはないがメラーの能力も凄いと思うが、兄まで凄腕だと…。兄妹揃って凄いものだな。


「王様、はやくいこう!」


「わかったよ、君の住むグラナートに向かおう。」


「待ってください、陛下。最後に。守りの加護を。」


リュビは俺の胸に手を当て、魔力らしきものを流し込んだ。


「私にはこれしか出来ません。きっと私の加護が陛下を守り抜いてくださるはずです。」


リュビを見るとまた顔色が悪くなっていた。

俺は心配になり、リュビの両手を握りしめた。

すると少しだけ顔色が良くなっていた。


「陛下の力は素晴らしいですね…。」


「なるべく早く帰れるようにする。」


「待っていますね。」


リュビは俺のことを強く抱き締めた。

試練の時から俺はずっとリュビの悲しむ顔しか見ていない。本当はこんなことしたらいけないの分かってはいるんだが…。

このグラナートの件が終われば、一緒にいてやれる。

だからしばらく待っていてくれ。

俺はリュビを強く抱きしめ返したのだった。


「さあ参りましょう。陛下。」


俺はリュビから離れると優しい笑顔で見つめていた。


「行ってきます。」


「行ってらっしゃいませ、陛下。」


俺はリュビに頷き、俺とラールと男の子は車に乗り込んだのだった。

この時俺はグラナートが悲惨な状態になっているとは思いもしなかったのである。


―――


車はグラナートに向けて走らせていた。

首都ルビーンからグラナートに走っていくにつれて、段々と寂れた風景が目に入ってきた。

首都にしかいたことなかったからまさか道中がこんな風になっていたとは思いもしなかった。

グラナートが良いエリアになれば、いずれ綺麗に整備してあげよう。


「そういえば君、名前なんて言うんだい?」


「俺の名前?」


「まさかないのか?」


男の子と喋っていたメラーに視線を向けると首を横に振った。


「俺産まれてすぐ孤児院に入れられたから…。そこでの名前はミュル。ゴミだからって名前付けられたんだ。」


「酷い…。本当に治安が悪いんだな…。」


「他の子もそうなんだ。悪意のある名前ばかり。」


まだ未来のある子どもたちにそんな名前をつけるなんて…。一体グラナートはどうなっているんだ。


「辛かったな…。一体グラナートで何が起きているんだい?」


「俺にもよく分かんないんだ…。最近になってグラナートにロッホとかいう男が現れて、そいつが何かしているらしくて…。でも俺は見たんだ、グラナートを治めている領主様が街をむちゃくちゃにしているのを。」


グラナートを治めている領主がむちゃくちゃにしている…だと?

各エリアを治める者はアカデミーを主席で卒業且つルーベル王にかなり尽くしてきた人間のみが選ばれていたはず…どういうことだ。

だがロッホとかいう男は一体…?


「陛下、これはかなり由々しき事態ですね…。治安を悪くさせているのは領主なのかもしれません。」


「だろうな。ミュルが嘘をつくような感じではないしな…。とりあえず問い詰めてみないと…。」


「王様、俺らのグラナートをお救いください!!」


ミュルは俺に強く抱きついてきた。

ミュルからは救ってほしいという気持ちが十二分に伝わってきた。どうにかしてやらないといけないな。


━━━


グラナートに到着すると街の中は誰かいる気配するなかったのだ。

治安が良ければ、ルビーンのように民は血気盛んとしているはずなんだが…全く感じれなかった。

想像していたよりかなり悲惨な状態だ。


車から降り、そのままグラナートの領主の屋敷に向かった。

なんだか…やたらと静かだな。

屋敷の門から見える庭園には召使いさえ誰もいなかったのだ。

そして屋敷の入口に着くと待っていたのはグラナートの領主らしき人と召使い達だった。


「ようこそおいでくださいました、新国王陛下。私はこのグラナートの領主グラナトと申します。新国王陛下にお会いできて光栄です。」


するとグラナトは俺の手を握ってきた。

グラナトか、常に不気味に笑顔を保っていて、なんだか全く感情が読めない奴だな…。


「それで国王陛下、我が領地グラナートをお助け頂けると聞いたのですが…。」


「ああそうだな。その件で参ったのだ。」


きっとこの会談、リュビが上手く手配してくれたのだろう。本当に優秀な侍従だ。


「では客間へ、案内させていただきますね。あっ、お付きの2人は別室へ案内させますね。」


「私は……ッ!」


ラールはグラナトに抵抗しようとしたが俺は彼を押さえた。


「ラール、俺は試練を勝ち抜いてきた王だ。身に変なことがあったとしても大丈夫だ。ミュルを頼む。」


「…わかりました、陛下。」


ラールは溢れる怒りを抑え、ミュルと共に別室へ向かったのだった。

離れる時、ミュルはこちらを見つめていた。

きっと俺のことを心配してくれているのだろう。


「では参りましょうか、陛下。」


「…ああ。」


俺はグラナトと共に客間に向かったのだった。


―――


屋敷の客間は綺麗な赤いソファーとローテーブルが置かれていた。

客をもてなす必要があるものだけが置かれているという感じか。

金に目が眩んでいるという訳ではなさそうだな…。


「陛下、グラナートの治安について何か聞かれていますか?」


「あっ…ああ。賊が暴れているとか。」


「そうです。最近ロッホとかいう男が現れまして…その男が賊を率いて街をむちゃくちゃにしておりまして。そのロッホとかいう男を仕留めていただきたいのです。」


「ロッホとかいう男は一体何者なんですか?」


グラナトのニコニコしていた目は開かれたのだった。

グラナトの目は綺麗な真っ赤な瞳をしていた。

綺麗だが…何を考えているのかはさっぱり読めない。


「ロッホは他の街から来た野蛮人でしてね…。力もない私からグラナートを奪おうとしているのですよ。知能も品性の欠片もない男がなってもいいのですか?」


「確かに…だが私はこのルビーンを治める王だ。自分の目で確かめる。」


するとグラナトは俺の答えを聞いて、高笑いをしたのだった。


「へぇ…まあいいでしょう。陛下の目で見て頂いた方がいいでしょう。私が本当の事を言っているか、ホラを吹いてるか?」


俺より凄い圧を感じる…。

何か俺の秘密を握っているような感覚がした。

まるで脅しをかけるような目で俺を見ている。

この男…何かおかしい。


「何故自分でカタをつけないのですか?」


「領主が民たちの前で戦うのはグラナートでは禁止していましてね…。私は手が出せないのですよ。」


するとグラナトはまた元の笑顔に戻ったのだった。

この男、一体何者なんだ…。



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