第3の試練
再び試練の扉に戻ると勇気の試練の扉は消え、残すは勝利の試練だけが残っていた。
やっと…これで最後…。
俺は重たい扉を開き、中に入った。
中に入ると真っ赤に燃え盛る神殿だった。
皮膚がジリジリと火傷するぐらいに熱かったが耐え抜けるぐらいの体力がついていた。
すると炎柱が燃え上がり、俺は剣を構えた。
炎柱が出てきたのは厳格な男性だった。
「随分と時間がかかったではないか?」
この声…、いつも夢でよく聞く声だ…まさか初代ルーベル王か?
「まさか…初代ルーベル王ですか?」
「ああそうだ。…随分と成長したではないか。魚が死んだような目をしておったのに今はしっかりとした目つきをしておるではないか。」
俺はすぐ片膝をつき、初代ルーベル王に膝まづいた。
まさかこの人が最後の試練だったとは…。
「ありがとうございます…。初代ルーベル王。」
「さて、私が最後の試練だ。私を倒せれば、お前は立派な王として認められる。私は手強いぞ?」
初代ルーベル王は大剣を取り出した。
「歴代ルーベル王は、最後の私の試練に手を焼いてきたがお前はどうかな?」
初代ルーベル王は大剣に力を込め、炎の大剣に進化させた。
俺もレイピアを抜き、力を込めて大剣に進化させた。
情熱の力と勇気の力よ…俺に力をくれ。
俺は目を閉じて、力を湧き上がらせた。
初代ルーベル王は空高く舞い上がり、空から大きな炎弾を俺に目掛けて放ったのだった。
俺はその熱く燃え盛る炎弾を力任せに切り裂いた。
火の粉が皮膚を擦切る痛みを感じた。
耐え切れる痛みだが…あの炎の魔人より強い威力を持った炎の力だ。
「随分と出来るようになったではないか?ならこれならどうだ!」
初代ルーベル王は無数の炎弾を放ってきた。
俺はそれも切り裂いたが弾の中からまた更に炎弾が出てきて、喰らってしまった。
さすがにこれは予想してなかったよ…。
さすが初代ルーベル王、ルビーン国を作り上げ王は最強だ。
「流石にこれは…意地悪すぎたか。」
俺はやられてもピンピンとしていた。
きっと俺の中のルビーの力がやられた分だけパワーとして蓄積しているんだと思う。
そのせいか俺の胸は熱く燃え盛っていた。
「その目、随分と燃え上がっておるな?まるで赤い綺麗な宝石のようだ。」
初代ルーベル王は俺に向かって斬りかかってきた。
俺は歯を食いしばりながら、初代ルーベル王の突進攻撃を防いだ。
俺は力を滾らせ、弾き飛ばした。
「…勝利とはお前にとってはなんだ?」
勝利…俺にとっての勝利は…
「悪い輩から民を守り、共に支え合い勝利を得ることだ。」
ルーベル王は高笑いをした。
まるで俺を馬鹿にするような目をしていた。
何がおかしいというのだ、至極真っ当なことを言ったというのに…。
「それがお前にとっての勝利か?歴代ルーベル王よりかなり弱い勝利だな。他にもあるだろ?もっといい勝利が。」
他にもある…だと?
俺は大剣を構えながら考えたがすぐにパッと思い浮かばなかった。
「では質問を変えよう。王には何が必要だ?」
王には…。
「王には…統率力と部下や民からの信頼。」
「そうだ。ただお前には足らないものがある…それは威厳だ。」
威厳…?
確かに俺には威厳は持ち合わせていない。
すると初代ルーベル王は神殿の世界を変えた。
ここは…ルーベル王の屋敷か?
「あれは…?」
玉座に座っていたのはまさに俺だった。
でも今の優しい俺とは違う雰囲気だ…堂々としている俺だった。
玉座の傍にはリュビも控えていた。
「陛下!」と1人の家臣がやってきた。
「隣国のツィトリン王国の王キトゥリーニス様から軍の物資を借りたいと連絡が入って参りました。いかがいたしましょう?」
玉座に座っていたもう1人の俺は立ち上がり、家臣に近づいていった。
俺はもう1人の俺が何を言うのか期待していた。
冷たいことを言わなければいいが…。
「分かった。ツィトリンとは友好でありたいからな。すぐに物資を送ってやれ。」
「は…はい!すぐに手配いたします!」
もう1人の俺は何事にも自信があり、堂々としていてただただカッコが良かった。
今の俺には…これが足りない。
家臣達はもう1人の俺を崇め称えていたのだった。
幻想は溶け、先程の神殿に戻ったのだった。
「お前はなれると思うか?今見せたもう1人のお前のように?」
俺があのもう1人の俺のようになれるかと言われれば自信はない。
けど俺は自分の殻を破らないといけないんだ!
「なってやる…なってやる!絶対に!」
俺は大剣の柄を強く握り直した。
俺は初代ルーベル王を打ち破って、立派な王になるんだ!
「そうだ!もっと滾らせろ!己の力をさらに強くするのだ!」
俺はルビーの力を最大限まで湧き上がらせた。
身体はまるで炎に焼かれるように熱くなっていた。
「では、いくぞ!!」
初代ルーベル王は大剣を持ちながら攻撃をしかけてきた。
ルーベル王は俺に隙を与えることなく、ひたすら猛攻撃をしかけてきていた。
ルーベル王の隙を見つけないと…。
俺は瞬時にスライディングし、ルーベル王の背中へ回った。同時に大剣をレイピアに戻した。
一か八かだ…ガラ空きの背中を攻撃だ!
「…!?」
案の定、ルーベル王はそれに気づき大剣で俺を神殿の柱へ振り払った。
「背中へ回り、不意をつく…か。よく考えたな?」
「…ッぐ。」
俺はレイピアを杖にして、なんとか立ち上がった。
やはり中々簡単にやられてはくれないか。
俺は再びレイピアの柄を強く握り直した。
「負ける訳には行かないんだ…負ける訳にはッ!」
俺は力を集中させ、レイピアに力を込めた。
ルビーの力を信じるんだ…!これで蹴りをつける…!
するとレイピアは熱く燃え盛りだした。
瞬時に移動し、レイピアでルーベル王の大剣を弾き飛ばした。
ルーベル王の首先にレイピアの切っ先を向けた。
俺は力の限界に差し迫っていた。
力の使いすぎでまともに呼吸するのさえ難しい…。
「待っていたんだ、お前の中にある力の覚醒を…どうした?トドメを刺さないのか?」
「あんたは…初代ルーベル王だ。ルビーン国を作り上げた英雄だ。トドメを刺す気はない…俺がこの剣で斬るのは悪しき人間だけだ。」
力がなくなり、その場で膝を着いてしまった。
なんと情けない姿だ…初代ルーベル王の前で。
するとルーベル王はガハハハとお笑いを始めたのだった。
「やはりお前も私を刺さんか…。まあよかろう…手を出せ。勝利の試練の報酬だ。」
俺は初代ルーベル王に手を差し出すと、中指にルビーを埋め込んだ指輪が嵌められたのだった。
「これでお前は力を無制限に使うことが出来る。ただこの力を謝った方向に使えば、お前は王としての力を失う。…よいな?」
「ええ……わかっています。」
初代ルーベル王は俺のことを強く抱き締めた。
突然のことで俺は戸惑いを隠せなかった。
「よくやったな…、お前は素晴らしい男だ。」
「貴方が…ルビーの力を信じよと言ってくれたからですよ。夢の中で。」
「はは…そうだったな。」
するとルーベル王の背中に鏡が現れた。
向こうには俺を待っているであろうリュビの姿が見えたのだった。
なんだか寂しそうな表情をしていた。
きっと長い間待っていてくれたんだろうな。
「リュビが待っている…早く行って安心させてやれ。」
俺は俺の帰りを待つリュビの元へ足を進めた。
「ありがとう…、初代ルーベル王。」
俺は初代ルーベル王に振り返り、礼だけを伝えた。
「俺は立派な王になってみせますよ…貴方が築き上げたルビーン国をさらに良い国にしてみせます…必ず。」
「……早く行け。」
俺は鏡の中に入り、リュビの元へ向かったのだった。
取り残されたルーベル王は「リュビ…、王が変な道に逸れないように守り抜くのだぞ…。」と言い残し、消え去ったのだった。




