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【あなたが夢中のその女を殺す!】と叫んだ悪役令嬢カンヌは、前世の記憶を思い出したので、クズ男は捨ててカフェ巡りを楽しむ。新しい恋の予感がかけ  作者: 山田 バルス


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第22話 告白の返事と二人の距離

告白の返事と二人の距離


 小さなカフェの奥の席。

 柔らかい昼の光が差し込む中で、カンヌは少し緊張した手でマグカップを握っていた。

 向かいに座るランスも、普段の穏やかな表情に少しだけ緊張が混じっているのがわかる。


「……今日は、伝えたいことがあって呼んだんだ」

 ランスの声は、いつもより少し低く、真剣に響く。カンヌの心臓は、自然と早鐘のように打った。


「……ええ、私も聞く準備はできています」

 少し震える声を自分で押さえながらも、カンヌはランスを見つめる。


「カンヌ……僕は、君とこれからもずっと一緒にいたいと思っている。君以上に、大切な人はいないんだ」

 ランスの瞳は真っ直ぐで、少しも揺るがない。


「……ランス……」

 名前を呼ぶだけで、胸が熱くなる。

 言葉を続ける前に、唇の端が自然と緩む。


「もし、僕と同じ気持ちでいてくれるなら――」

 ランスが深呼吸をひとつして、静かに言葉を重ねる。

「カンヌ、僕と婚約してほしい。これからの人生を、二人で歩んでいかないか?」


 その告白は、街の喧騒も、風の冷たさも、すべて消してしまうほどの迫力があった。

 カンヌは息をのむ。胸が押し潰されそうに熱くなる。


 心の中で、過去の婚約破棄の傷や、他人の目を気にしていた日々がよみがえる。

 それでも、今、目の前にいるランスの瞳を見つめると、迷いはすっと消えていく。


「……私も、同じ気持ちです」

 カンヌの声は、かすかに震えていたけれど、確かな決意があった。

「ランスと……これからも一緒にいたい」


 その言葉に、ランスの顔がぱっと明るくなる。

 手を伸ばしてカンヌの手を取ると、その温もりが胸にじんわりと広がる。


「ありがとう、カンヌ。君がそう言ってくれるだけで、僕は幸せだ」

 ランスの声は柔らかく、そして力強かった。

 カンヌの手のひらに、しっかりと自分の手を重ねている感触が伝わる。


 店内の小さなざわめきも、二人にはまるで届かない。

 世界が二人だけのものになったように、時間がゆっくりと流れていく。


「……でも、私、まだ不安です」

 カンヌは少し恥ずかしそうに顔を伏せる。

「婚約したい気持ちはあるけれど……まだ自分に自信が持てない時もあって……」


 ランスはそんなカンヌを優しく見つめ、指であごをそっと持ち上げた。

「大丈夫だよ、カンヌ。君は僕にとって、十分すぎるくらい特別な人だ。だから、安心して僕の隣にいてほしい」


 カンヌは少しだけ涙が出そうになるのを、必死で押さえる。胸の奥でずっと押し込めていた想いが、静かに解放されていく感覚だった。


「……ありがとう、ランス。私、頑張ります」

 目を見開いて微笑むと、ランスは嬉しそうに手を握り返した。


***


 二人はそのままカフェを出て、街の静かな通りを歩いた。

 冬の空気は冷たいけれど、手をつないだまま歩く二人には、心地よい暖かさがあった。


「ねえ、ランス」

 カンヌが小さく声をかける。

「婚約って、これからどういうことになるの?」


「まずは、家族や周囲に報告して、正式な手続きを進めることになるね」

 ランスの声には、誇らしさと責任感が混ざっている。

「でも、それよりも……僕たちの関係を大切にしながら、二人で楽しい時間を積み重ねていこう」


 カンヌは頷く。

 過去の婚約破棄のことも、他人の目も、もう気にしなくていい。

 大切なのは、今の自分とランスの想いだけ。


 街角のカフェに差し込む光が、二人の影を長く伸ばす。

 ランスの肩に自然と頭を寄せると、彼も少しだけ顔を傾け、二人の距離はますます近づいた。


「……カンヌ、これからもずっと一緒に歩いていこう」

「はい、ランス」


 その言葉に、カンヌは小さく微笑む。

 手をしっかりと握り返すと、胸の奥がふわりと軽くなる。人生の新しいページが、今まさに開かれた瞬間だった。


***


 街の人々も、二人の幸せを知らず知らずのうちに祝福しているようだった。

 通りすがりに笑顔を交わす人々、カフェで本を手にする子どもたち。

 そんな日常の中で、カンヌは静かに思った。


――私は、ランスと一緒にいる。これからもずっと。


 これまで抱えてきた不安や迷いも、今は柔らかな光の中で溶けていく。

 心から信頼できる人と、互いを尊重し合いながら歩いていける――その喜びが、カンヌの胸を満たしていた。


 冬の空気に包まれた街を、二人は手をつないで歩き続ける。

 互いの呼吸を感じ、互いのぬくもりを確かめながら。

 人生の新しい章は、二人の手の中で静かに、でも確かに動き始めていた。

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