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悪役令嬢だそうですが、保護施設をつくりたいと思います。  作者: はにか えむ


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22.side.マリアン

 マリィの家は大きい。そしていつも家には優しいママと優しいパパがいた。パパは治癒の異能を持っているから、たまにお外にお仕事に行くけどすぐに帰ってくる。だから小さい頃は、家の中で十分幸せだった。

 でもある日一人でお外に出てみたくなってしまった。一人で家の外に出てはいけないと言われていたけど、こっそり家の門をくぐってお外に出た。

 街にはママと手を繋いでよく来ていたが、一人で歩くのは初めてだ。マリィは楽しくて、時間を忘れて歩き回った。そうしていた時、広場でマリィと同じくらいの子供たちが遊んでいるのが見えた。もしかしたら絵本に出てくるみたいに『おともだち』ができるかもしれないと思って声をかける。

「マリィもいれて」

 すると子供たちはみんなマリィを見て顔を見合わせた。

「こいつ、貴族じゃねえの?」

「違うよ、領主様の旦那の愛人の娘だから絶対近づくなって母ちゃんが言ってた」

 そう話すと、子供たちはマリィを置いてみんな逃げてしまった。

 どうしてマリィと遊んでくれないんだろう。マリィは悲しくて泣いた。すると兵士がやってきて、マリィを家に連れて行った。

 

「マリィ、どうして外に出たの。心配したのよ」

 ママが泣いているマリィを抱きしめて慰めてくれる。マリィはママに悲しかったことを報告した。マリィも『おともだち』がほしいとママに訴える。

「その子たちは平民の子でしょう? パパがお金持ちだからみんなマリィに嫉妬しているのよ。マリィのお友達は今度ママが貴族の中から探してあげるからね」

 平民の子とは『おともだち』になれないのだろうか? マリィはよくわからなかったけど、お金をたくさん持っている子なら『おともだち』になってくれるのだろうか?

 

 その後ママはマリィの『おともだち』にと子猫をくれた。マリィはとても嬉しくて、サラと名前を付けて毎日一緒に遊んだ。

 でもある時サラは木から落ちて怪我をしてしまう。マリィの異能が覚醒したのはその時だった。

 異能が覚醒してママはとても喜んだ。マリィは特別な子なんだって、嬉しそうに言っていた。ママが嬉しいならマリィも嬉しい。

 

 家には絵本がたくさんあった。その中でもマリィが好きだったのは、心優しいお姫様が悪い悪魔に取りつかれた王子様を助けて結婚する話だ。

 王子様もかっこいいけれど、可愛いのにかっこいいお姫様に憧れた。

「マリィはもうすぐお姫様になれるのよ。もう少しだけ待っていてね」

 ママがマリィにそう言うから、マリィは嬉しくてますます絵本にのめりこんだ。

「いつか優しい王子様と結婚できるかな?」

 想像するだけで嬉しくて楽しみだった。

 

 そしてある時、嬉しそうなママが言う。

「マリィ、お城にお引越ししましょう! パパが来てもいいよって」

 連れていかれた先は、本当にお城だった。今まで住んでいた家も大きかったけど、それとは比べ物にならないくらい大きなお城。

 そこにはメイドさんがいっぱいいて、パパに頭を下げていた。パパはとっても偉い人だったんだとびっくりした。

 でもメイドさんはマリィにもママにもパパにも冷たかった。このお城はシーリーン様の物だからってパパに言っていた。シーリーン様って誰だろう。メイドさんたちの話を聞いていると、今は具合が悪くて寝ているみたい。パパはシーリーン様を治してあげるためにお城に来たのかな?

 パパに聞いてみたら予想もしていなかった答えが返ってきた。

「シーリーンはお前のお姉様だよ」

 マリィに『おねえさま』がいるなんて知らなかった。仲良くなれるかなとパパに聞いたら、マリィならきっとなれると言ってくれた。早く会いたいな。

 

 でも食堂にやってきた『おねえさま』はイスに座ることさえしなかった。なんだか難しいことを言っていたけどちょっと怒っていたみたい。まだ具合が悪いのかな。心配だな。

『おねえさま』が居なくなると、パパとママは喧嘩を始めた。マリィはどうしたらいいのかわからなくて、怖くて庭に逃げ出した。

 そのすぐ後に、本を読んでいる『おねえさま』を偶然見つけた。マリィの異能で病気を治してあげたら、笑ってくれた。

『おねえさま』はマリィとは違う銀髪のとても綺麗で大人っぽい人だった。絵本の中のお姫様みたいで、なんだか恥ずかしくなって逃げてしまった。

 その日から、パパとママはよくケンカするようになった。お城に来る前は、こんなことなかったのに。マリィはとっても不安で『おねえさま』に相談したの。

 そうしたら『おねえさま』はパパとママが喧嘩しないですむ方法を教えてくれた。

 ありがとう。『おねえさま』。もらった綺麗な石は宝物にするね。

 

  貴族になる方法をママに教えてあげたら、ママはとても怖い顔をした。

「それじゃあ侯爵より下じゃない……」

 どうしてだろう、貴族になれるのに嬉しくないのかな?

 それからしばらくしても、パパとママは喧嘩したままだった。

 

 なんだかお城に来てから悲しいことばかりで沈んでいたら、お城にお客様が来ると聞かされた。その日はお部屋の中に居ないといけないんだって。でもママは私に高いお洋服を着せると部屋を出た。

 お客様はとても怖いお姉さんだった。そのお姉さんの話を聞いていると『おねえさま』のお母様は少し前に死んじゃったんだってことに気がついた。なんで?『おねえさま』なのに、ママの子供じゃないの? 『おねえさま』はパパの子供だけど、ママの子供じゃないんだって……よくわからない。

 でも、パパが『おねえさま』にすごく酷いことをしているんだっていうのは伝わってきた。『おねえさま』がパパとママを嫌っていることも。

 

 マリィはなんだかとても悪いことをしているような気持ちになった。『おねえさま』とお話ししたいけど、きっとそれはダメなことだ。

 それからしばらくして、マリィたちは前のお家に帰るんだと教えられた。そしてマリィは男爵令嬢になるんだって。

 最後の日に『おねえさま』と食事をしたけど、おねえさまはやっぱりパパとママの前では笑ってくれなかった。マリィだけの時は、優しく笑ってくれたのに。

 

 前のお家に帰ったマリィは、家庭教師に勉強を教わることになった。先生はこっそりマリィに言った。

「シーリーンお嬢様が、マリアン様のお立場をしっかり教えて差し上げてほしいと私に申し付けました。マリアン様は自分の置かれている状況を正しく理解するべきだと。そのうえで立派な淑女になってほしいとのことです」

 そしてマリィは、いや私は全てを理解した。今までごめんなさい、お姉様。

 領主任命式で見たお姉様は、誰よりも輝いていた。それこそ、絵本の中のお姫様みたいに。私もお姉様みたいに、強く優しい人になりたいと心から思った。

 そうしたら、いつかちゃんとした姉妹(・・)になれますか?

挿絵(By みてみん)

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