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悪役令嬢だそうですが、保護施設をつくりたいと思います。  作者: はにか えむ


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20/30

20.エリュシカ様の疑念

 「日も傾いてきましたし、そろそろ宴も終わりにしましょう」

 王妃の言葉で会場に拍手が巻き起こった。私はほっと息を吐く。今日一日でかなり富裕層の顧客を獲得できた。これは私の理想の未来への第一歩だ。

 主役である私はそれぞれに別れの挨拶をして、走り去る馬車を見送った。

「シーリーン。コルネリアのドレスをよろしく頼むよ」

 高位貴族を見送った後、馬車に乗り込む父から再びそう言われて私は無言を貫いた。

 すると父の横にいるコルネリアが恐ろしい形相で私を見る。馬鹿にされているとでも感じているのだろう。父は能天気に私に笑いかけているが、隣を見てみろと言いたい。

 マリアンは喋らない私を見てうつむいてしまった。

 

 すべての客を見送って、私たちは神殿を後にする。

「ああ早く屋敷に戻りたいな。私の部屋はそのままにしてあるのだろう?」

 私の足元にお座りしたエリュシカ様は、自らの舌で毛並みを整えながらくつろいでいる。

「もちろん、エリュシカ様のお部屋はそのままにしてありますよ。気に入られていたクッションも洗って干しておきましたから、快適に眠れると思います」

「おおそれはありがたい。……できれば猪の肉が食べたいのだが」

 守護獣は食べなくても生きていけるが、エリュシカ様は飲食が好きだった。だから料理長に、レアに仕上げたとびっきりのステーキをたくさん用意するようあらかじめ伝えてある。

「もちろん、エリュシカ様がお好きな猪のステーキをたくさんご用意しております。久しぶりに降臨なされたのです。たくさんお召し上がりください」

「久しぶりとは……離れていたのなどほんの数か月だろう。人間には長くても、私には一瞬だ。……まあ、それでも猪の肉は恋しいな」

 エリュシカ様の言いように、私は笑ってしまう。食事も排泄も必要のないエリュシカ様にとって猪肉はただの嗜好品だが、自分で追い掛け回して狩りをするくらいには好んでいる。

 人間を常に下にみている守護獣がほとんどの中、エリュシカ様はとてもフレンドリーで優しい。私は恐れ多いが兄のように思っている。

 

 王都の別邸に到着すると、私はどっと疲れてソファに座り込んでしまった。

「お嬢様、ご立派でございました。夕食前に湯あみをいたしましょう」

 私はミーシャにされるがまま、お風呂に入り簡素なワンピースに着替えた。この服はカミーユが立体裁断の練習で作った物で、とても動きやすい。

 私は食堂へ向かうと、エリュシカ様と二人で食卓を囲む。エリュシカ様にはテーブルと同じ高さの台座が用意され、顔を見ながら食べられるようになっている。

「ところで私がおらぬ間に何かあったようだが、一体どうしたんだ?」

 私はエリュシカ様の問いにドキリとする。エリュシカ様の言う『何か』というのが何を指しているのかわからない。私が口を合いたり閉じたりしていると、エリュシカ様は言った。

「外に声が漏れぬ術を使ってやった。何があったか、すべて話せ」

 静かなエリュシカ様の声に、私は全てを話そうと決意する。

「あれは母が亡くなり、エリュシカ様が神の元に帰られた直後のことです……」

 私は過去視と未来視の異能を得たこと、父が愛人を家に連れ込んだこと、過去視で見た唯菜の知識を使って児童保護施設を作ろうとしていることなどを話した。

「……なるほどな。子供はいきなり育たん。その異様な精神の成熟速度は過去視で他人の人生を垣間見たからか」

 どうやらエリュシカ様は今日一日私を見ていて気がついていたようだった。自分ではわからないが、私はやはり唯菜の人生を見ることで、多少人格に変化があったのかもしれない。

 私が考えていると、エリュシカ様はなにやら難しい顔をして俯いていた。

「エリュシカ様? どうかなさいましたか?」

「……いや、なんでもない。気にするな」

 私は気になって仕方がなかったが、エリュシカ様を問い詰めることなどできない。エリュシカ様が話題を変えたのに合わせて、結局私も別の話をせざるを得なくなった。

スランプで更新が遅くなって申し訳ありません。


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