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17.再会

「ああ、シーリーン。お前のことだから大丈夫だとは思ってはいたが、元気そうで何よりだ」

 光が止んで顔を出したのは美しい毛並みのホワイトタイガーの守護獣だ。守護獣は遥か昔、地上が悪魔からの侵略にあった時に神が遣わした守り手だ。魔を浄化することのできる守護獣は各国の代表と契約を交わして、悪魔の侵攻を食い止めてくれている。守護獣と契約を交わし、悪魔の侵攻から地上を守ることこそがこの国の高位貴族の使命なのである。

 守護獣は契約者が死亡、または変更されるときに一度神の元に帰る。そして三か月したらまた呼び出して契約を結ぶのだ。跡継ぎとなる者の人格次第で守護獣側に契約を断られることもあるが、私は母が死ぬ前にエルシュカ様自身から契約していいと言われていた。

 ちなみに守護獣に契約を断られると家を継げなくなってしまううえに、家次第では家紋に相応しくないと追放されてしまうので、その後の人生は悲惨である。

 

「ありがとうございます。エリュシカ様こそ、お元気そうでなによりです」

 エリュシカ様の前にひざまづいて、私は深く首を垂れた。

「では契約を交わそう。我エリュシカはシーリーン・テレスを新たな契約者として認める」

 エリュシカ様の前足が私の頭の上に乗せられると、暖かい光に体が包まれた。契約は成功したのだろう。

「うむ、これで契約は完了だ。また共に暮らせることが楽しみだ」

 エリュシカ様は満足そうに言った。エリュシカ様は守護獣なので動物の姿を写しているだけで、性別はない。それでも私の母とは歴代当主の中でも飛びぬけて仲が良かったらしい。エリュシカ様が私に親し気に接してくれるのは、母のおかげだ。

 エリュシカ様はこれで自分の仕事は終わったと、他の高位貴族が連れている守護獣たちの元へ行ってしまった。

 

「これでシーリーン・テレスはテレス家当主として正式に認められました。国王陛下、これにて神事は終了いたします」

 神官長が任命式の続きを国王に託すと、国王は鷹揚に頷いた。

「シーリーン・テレス。そなたをテレス領の新たな領主として認め、未来を託そうと思う。心して務めるように」

 国王からの言葉は簡素なものだった。それよりも隣にいる王妃の方が今にも話したそうにしている。

「それではこれより領主任命祝いの宴に移ろう。皆も待ちくたびれたであろう」

 拍手が会場に巻き起こると、鳴りやむより早く王妃が私の前にやってきた。

「シーリーン。領主就任おめでとう! しばらく見ない間に大きくなって……私はとても嬉しいわ」

 王妃は母とも仲が良かった。母が不治の病になったと知った時は、この国で二番目に協力な治癒の異能者をよく家に派遣してくれたものだ。ちなみに最も強力な治癒の異能者は母である。

「王妃様こそ、お久しぶりでございます。母に関して色々と便宜をはかってくださり感謝しております。お礼というにはささやかかもしれませんが、献上品がございますのでどうかお納めください」

 私たちの会話に周囲の貴族は耳をそばだてていた。今が売り込みのチャンスである。

 

「ええ始まる前に見させてもらったわ。小瓶の中に入った爪紅とキラキラした粉。それにあなたのドレスについている小さくて美しい飾りね」

「後でメイドをよこして下されば、使い方を説明させていただきます。あれは私が新たに立ち上げる服飾店の主力商品なのです。ブランド名をスターズと名付けました」

「服飾店……そういえばあなたのドレスも素晴らしいわね。コルセットも無いのにラインが美しくて、スカートもボリュームがあって素敵だわ」

「はい、このドレスは立体裁断という新たな技法を取り入れて製作したものです。この国でこのドレスを作れる職人はスターズにしかおりません。完全オーダーメイドでしか取り扱いできない、体にぴったりと合わせたドレスです。王妃殿下にぜひその着心地を体験していただきたいので、スターズの最初のお客様になっていただけないでしょうか」

 周囲の貴族婦人たちがそれを聞いてこそこそと話し合っていた。王妃がどう返すのか、とても緊張する。

「もちろんよ。こんな素晴らしい服他にないわ。その職人の他のドレスにとても興味があるわ」

 売り込みは大成功だ。明日のオープンからスターズに予約が殺到するだろう。

 私は小躍りしたい気持ちを抑えて王妃との会話を楽しんだ。途中で王妃様が呼んだため叔母様も会話に入ってきて、第二の顧客になると言ってくれた。

 そして他の高位貴族へのあいさつ回りをしようとしたとき、面倒ごとが次々と、足音を立ててやってきた。

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