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11.戦略

 コルネリアはようやく自分の行動がどれほどまずいか気がついたらしく目が泳いでいる。マリアンは泣きそうな目でコルネリアと私を交互に見ていた。マリアンの中ではコルネリアと私が、困った時に自分を助けてくれる存在なのかもしれない。

 私は別に私に悪意を持っているであろうコルネリアのことはどうでもいいが、マリアンのことは悪意も無く幼げなので少し心配している。

「叔母様。お待ちになって。このお客様方の滞在費用はお父様がすべて払っているから寄生はされていないわ。今日は別にお話があるの。時間もないし、彼女たちのことは放っておいて私のお話を聞いて下さいませんか?」

 そう言うと、叔母は悲しそうに言った。

「可哀そうなシーリーン。こんな屈辱を我慢しなければならないなんて……亡きお姉様の代わりに私があなたの母がわりになってあげなくてはならなかったのに……不甲斐ない叔母でごめんなさい。あの男にはあとで私からきつく灸をすえておきますからね」

 あの男とは父のことだろう。私は心の中で、少しだけざまあみろと思った。こんな言葉口に出したら叱られてしまうから出さないけれど、父は叔母が大の苦手だからきっといい報復になるだろう。私だって、母の死を少しも気にしなかった父には思うところがあるのだ。

 

 叔母がコルネリアを睨みつけるのを気にせずに、私は叔母の手を引いて用意したサロンに案内した。叔母はまだ言いたいことがあったのだろう、不満そうだが仕方がない。

 コルネリアを部屋へ下がらせるようにメイドたちに目配せすると、メイド長のテッサがが素早く動いているのが見えた。これで一安心だ。

 サロンの席に叔母を案内して紅茶を出すと、叔母も少し落ち着いたようだった。

「それで、シーリーン。私に協力してほしいこととはなにかしら?」

 いつものように和やかな笑顔て問う叔母に、私は緊張しながら話を切り出した。

「実は売り出したいものがあって、商会を立ち上げようと思っているのです」

「シーリーンがそうしたいなら協力は惜しまないわ、私に何をしてほしいのかしら?」

 私は両手に付けていた手袋を取って叔母に見せる。先日作った物より濃い青色の胡粉ネイルにラメを振りかけて夜空のようにした爪を見せると、叔母の顔色が変わった。

「まぁ……!」

 バラ色に染まった叔母の顔を見ると、頑張った甲斐があったなと思う。

「こちらの爪紅が胡粉ネイル。この爪の中で輝いているのがラメパウダーです。どうかお試しになってください」

 私は叔母に好きな色を選んでもらって、その場で胡粉を水で溶かすと叔母の爪に塗り始める。塗る前にアルコールで拭いて爪の油を落としておくのがコツだ。

「一、二分で乾きますのでその前にラメパウダーをかけますね」

 そして爪先にラメをかけると簡単に完成した。

「なんて簡単なの。これならメイドもすぐにやり方を覚えられるわね。落とす時はどうするのかしら?」

「アルコールでこすれば簡単に落ちます。お湯でも落ちてしまうので、維持したい場合はメイドに体を洗ってもらってください」

「それなら毎日変えることもできるのね! 素晴らしいわ」

 叔母は社交界の華として流行の最先端を走っている。叔母が認めたものは間違いなく社交界で流行すると言っていい。

「この胡粉ネイルだったかしら、これを領主任命式の日の王室への献上品の一つにするつもり?」

 叔母は話が早い。私が領主任命式を利用して新しい流行を生み出そうとしていることを察してくれたのだろう。

「では私は使うのをもう少し我慢するわ。初めて使うのはあなたと王妃殿下でなくてはならないものね」

 くすくすと笑う叔母に私は安心した。厳しい叔母に認められたのだ。

 

「まだ若く女性であるあなたが、女性向けの他にない献上品を用意するのは心証がよいでしょう。シーリーンは領主としてもやっていけると皆に示すいい機会だわ。全力で協力するわね。王妃にも話しておくわ」

「ありがとうございます。それで実はそれに関して力を貸してほしいことがあるのです。その分の金額をお支払いしますので、叔母様の異能を貸しては下さいませんか?」

 そう言うと、叔母様は目を丸くした。

「あら珍しいわね、私の異能が必要なんて。人によっては芸ができるだけで何の意味もない力だなんて言われるのに」

 叔母の異能は間違いなく強力だ。確かに使いどころは難しいかもしれないが、この世の法則を無視した力である。私には叔母の力がどうしても必要だった。

 

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