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嗚呼、なんと素晴らしき自由(強制)  作者: 【規制済み】
第1章 迷宮都市ラークル

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vs レッドドラゴン

お久しぶりです。お待たせいたしました……

そして大変申し訳なく思いますが、テスト期間&体調不良のダブルパンチで再び執筆する時間が取れなさそうです。また一週間ほど期間が開くと思いますが、気長に待っていただけると幸いです。





 ゾルガと別れた後、カインとエリスは魔物との接敵や罠などもなく、順調に第七階層を進んでいた。


「お。大部屋の門だ」

「やっと見つけましたね」


 もはや見慣れた大部屋の門。だが、その門にはいつもと違う点が一つあった。


「門が閉まっていますね」

「俺たちより早く挑戦してるやつがいるのか」


 固く閉ざされた門。こうなってしまえば、門が開くまで大人しく待つ以外することはない。


「まあ、丁度いいな。最後に作戦の擦り合わせでもしておくか」

「そうですね」


 実のところ、迷宮に挑む前からレッドドラゴンとどう戦うかの作戦は立てている。よってその作戦の確認と、魔素操作の調子を確かめるだけであった。


「とりあえず、当初の通り作戦を決行できそうだな」

「ゾルガさんがゴーレムを倒してくれなければ、どうなっていたかは分かりませんでしたね」

「でもあいつが撒いたタネだけどな?」

「いいじゃないですか。そういうこともあります。それに、ゾルガさんの【起源】を見れましたし」


 一理ある。『二つ名』持ちの実力はそう簡単に知れるものではない。あれは金を払ってでも見たいものも多くいるだろう。……ゾルガなら酒でも渡せば簡単に【起源】を使ってくれそうな気もするが。


「お、門が開いたな」


 巨大な門が、ゆっくりと音を立てながら開いていく。錆びついているかのように緩慢な速度ではあるが、最初からこの速度らしい。


「さて、行きましょうか。準備はいいですか?」

「ああ。サクッと金級になるぞ」


 門の狭い隙間を二人はくぐった。




 門を通り抜けると、いつものように門が閉まり始める。しかし、そんなことに注意を向けているような暇はない。


 大部屋は非常に広い洞穴となっていた。しかし、溶岩が川のようになってドロドロと流れており、足場にはある程度の注意が必要である。


 そして、奥に鎮座するはレッドドラゴン。目は金色に光り、縦に割れた鋭い瞳孔が二人を睨みつけている。竜は既に臨戦態勢を取っていた。


「ッ!!! 来るぞ!」

「了解! 『不退転(フォーワード)』励起! 障壁(バリア)展開!」


 エリスが全力で防御を固める。その後ろにカインは身を潜めた。


 竜の代名詞とは、なんだろうか。恐らく、竜を知っているものであれば満場一致で息吹(ブレス)と答えるだろう。そしてその認識は正しい。息吹は最も脅威的であり、対策を取らなければ竜とは戦いにすらならない。


 レッドドラゴンの胸部が赤く光る。その光の正体は、高濃度高出力の魔力。全てを焼き払う業火の予兆である。


 ガパッとドラゴンが口を開く。瞬間、喉奥が光ったかと思うと、赤黒い炎が噴き出した。


 大部屋の全てが炎に包まれる。息吹の範囲に関しては、闘技場にて放たれた巨大な火球、隕石(メテオ)に軍配が上がるかもしれない。しかし、炎の温度と出力はそれを上回るものであった。


 これこそが竜。魔物の頂点種、その一角。この炎に薙ぎ払われ、命を散らした銀級はあまりにも多い。


 だが、それはカイン達に当てはまることではなかった。


 息吹も打ち止めとなり、炎が消える。洞穴の岩石はあまりの高温にドロドロと溶け始めていた。そんな状況でありながらエリスの二つの大盾は、依然変わらずそびえたっていた。


「ぐうぅ……」

「大丈夫か、エリス!」

「……問題ありません。少しの火傷、です。ポーションで治る範疇でしょう」


 エリスの後方は、全く息吹の影響を受けていなかった。彼女は自らの役目を全うしたのだ。


「それより、準備はできていますか?」

「ああ。今すぐにでも」


 エリスの盾に隠れていたカイン。彼が持つ槍には、二つの光の輪が巻き付いている。


付加魔術(エンチャント)二重(ダブル)加速(アクセル)!」


 付加魔術、それに加えて魔素をさらに循環。槍に莫大な魔力が集まり始める。


 エリスと戦ったあの日のように、槍の先が黒く光を放ち、光の輪もまたそれに干渉されて黒く染まった。


 あの日とは異なり、この槍が放たれるのを味方として見ることができる。そのことにエリスは感謝した。


「死に晒せぇ!」


 全力の投擲。加速の付加魔術によってどんどんと速度を上げる槍は、ドラゴンの頭部へと一直線に飛翔した。


 ドラゴンの鱗は恐ろしく硬い。たいていの金属よりも硬度が高いと言えばその硬さがわかるだろう。しかし、槍はそんな鱗を紙のように貫いて、結果、竜の顎の一部と左頬を消し飛ばした。


 息吹を吐いて油断していた竜は、その痛烈な一撃に悲鳴を上げた。大気を震わせる竜の咆哮。けれども、所詮ただの悲鳴である。


 そんな深手を負わせたにも関わらず、カインの顔は渋い。


「クソッ! すまん、外した!」

「いえ、あれもかなりのダメージのはずです。それに、顎を破壊したおかげで、厄介な噛みつきと息吹の脅威度が下がりました」


 カインの狙いは目であった。運が良ければ一撃で屠ることができるし、死に至らしめずとも、相手の視界を潰せるというのは莫大なリターンとなるからだ。


 投擲した槍が黒い光を纏いながらカインの方へと戻ってくる。それを右手で掴み取り、再び槍を構えた。


「エリス、作戦その二だ」

「ほんとに大丈夫ですか?」

「ああ。リターンを取るためだ。やるさ」


 グッと脚に力を溜めた後、カインはエリスの後ろから飛び出した。それを血走った目で睨むドラゴン。完全にキレている。


 作戦その二。それは、槍を外した時の予防策。投擲を見たドラゴンは槍の威力を警戒するため、カインを執拗に狙う。よってあえてカインが囮になることで、エリスへのマークを切る作戦である。


 そして、この作戦において最も重要なことは、竜の逆鱗を見つけることである。


 竜の逆鱗。竜最大の弱点である、逆立つように生えた鱗。その鱗の下には重要な魔素器官と血管が通っている。カインが囮になっている際に、エリスが逆鱗を見つける。これこそが作戦その二である。


 見事な身のこなしで、ドラゴンの爪や噛みつきから逃れるカイン。まるで不安を感じさせない動きである。


「おいおい、息吹でもなきゃ俺を仕留めるなんて無理だぞ?」


 カインが鼻で笑う。その悪意がドラゴンにもしっかりと伝わった。ドラゴンはさらに激昂した。逆鱗に触れてないのに。


「あ、やべ」


 激昂したドラゴンの太い尻尾がカインに迫る。鞭のようにしなる尻尾の速度は凄まじく、流石のカインでも回避は困難である。


「『自由』励起」


 しかしそんな尻尾もカインの体をするりと通り抜けた。生き残り、時間を稼ぐということについてカインの右に出るものはそういない。


 だが、【起源】という札を切らされたのは事実。カインは自身の状態を鑑みて、ノーリスクで【起源】を使えるのはどんなに甘く見積もってもあと一回だろうと当たりをつけた。


 そんなこんなでドラゴンの周りをグルグルと走り回って撹乱させているカインの耳に声が届く。


「カイン! 逆鱗を見つけました! 私の後ろへ来てください!」

「了解!」


 ドラゴンからのヘイトを溜めに溜めたカインは、エリスの後ろへと再び隠れる。当然、カインを狙うドラゴンの攻撃は全てエリスの元へと集まった。


 それを既に『不退転』を励起させた状態で平然と防いでいくエリス。流石の防御力である。エリスもまた、息吹以外ではまともなダメージを受けることはなさそうである。


「で、逆鱗はどこにあった?」

「首元の真後ろです」

「……それは厳しいな」


 ドラゴンは常にカインから目を逸らさない。いかにカインといえども、警戒しきっているドラゴンの視線を切って後ろから攻撃するのは無理があった。


「そこで一つ考えがあります。私が隙を作ります」

「できるのか?」

「ええ。貴方の助力があれば可能でしょう。ただ、そのためには貴方にかなりの負担を強いてしまいます」

「負担だなんて今更だな。最後に倒せればいい」

「そうですか……なら、私の盾に重化の付加魔術をかけてくれませんか?」

「……もしかして、そういうことか?」

「ええ。引き続きカインさんにはドラゴンからのヘイトを稼いでもらいます。そして、ノーマークになった私がドラゴンの足を攻撃して転倒させます」

「いけるのか?」

「意識外の攻撃に重化の付加魔術。さらに前に進めば『不退転』の効果も上昇します。恐らく行けるでしょう」

「わかった。なら、信じて囮になってやる」

「頼みましたよ」


 ドラゴンの胸部が再び赤熱し始める。息吹の兆候。どうやら冷却は済んだようだ。


 それを見るなり、なるべくエリスから離れるように移動するカイン。今回ばかりはエリスに息吹を防いでもらうわけにはいかない。


「『自由』励起!」


 カインに襲いかかる業火。少しでも『自由』を切れば一瞬にして焼き尽くされる。その圧倒的な火力を耐え続けたエリスにカインは今更ながら驚嘆した。


「ぐぅっ…………」


 カインの体を魔力痛が苛み始める。全身が針に刺されたように痛い。手足は痺れつつある。けれども竜の息吹は続く。『自由』を切ることはできない。


 カインに怒りの息吹を浴びせ続けるレッドドラゴン。その後ろに一つの影。エリスだ。


 ガチャガチャと甲冑が音を立てる。そんな彼女の体は白く輝いていた。


 一歩踏み込む。その度に光が強くなっていく。『不退転』の強化がより強くなっていく。


 また一歩、もう一歩。気づいた時にはエリスは砲弾のような速度でレッドドラゴンへと突進していた。


衝撃(インパクト)!」


 光の輪が巻きつき、重みの増した大盾がドラゴンの後ろ足を強く叩く。その威力は、ドラゴンの太い足の骨を軋ませるほどであった。


 そしてその足は今まさに息吹を吐くために踏ん張っていた足。それを意識外から凄まじい威力で叩かれたドラゴンは、ずるりと横転した。


 横転とともに頭を地面へと強かに打ち付ける。ドラゴンは脳を揺さぶられ、立つことができなくなった。


「ナイスだ、エリス!」

「トドメは頼みましたよ!」


 息吹をなんとかやり過ごしたカイン。手足の痺れと全身の痛みを無視して、槍に魔素を送る。その魔素に槍も応えた。


 跳躍。高く高く飛んだカインは、重力の勢いのままに、ドラゴンのうなじにあった逆鱗目掛けて槍を突き刺す。


 ビクリとレッドドラゴンの全身が震えたかと思えば次の瞬間、全身を捩って暴れ回る。そのあまりの勢いに、刺さった槍ごとカインは吹き飛ばされた。


「いってぇ……」

「大丈夫ですか!?」

「ああ……それよりも、レッドドラゴンはどうなってる?」


 エリスとカインがドラゴンの方へと目を向ける。ドラゴンは体を大きく振り回しながら、逆鱗から血を噴き出していた。その出血量から、もう助からないことは明らかだった。


「勝ち、だな」

「ええ……私たち二人の、勝ちです」


 一通り血を吹き出したドラゴンはやがてくったりと地面へと倒れ、数回浅い呼吸をしたかと思うとそのまま息絶えた。


 これにて、第七階層制覇である。




 

 

Tips:ドラゴンの逆鱗は大抵顎の下あたりにある。うなじにあるのは相当レア。



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