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嗚呼、なんと素晴らしき自由(強制)  作者: 【規制済み】
第1章 迷宮都市ラークル

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Dieジェスト

じわじわ自分の書いた小説が伸びてて嬉しいですね。感想と評価、お待ちしてます!励みになります!



 第四階層。通称「死の第四階層」。


 至る所に毒沼が点在しており、そこから発生する毒ガスを吸引するだけで、意識障害や呼吸困難を引き起こす。更には毒沼の中には、その毒に適応した各種様々な魔物たちが今か今かと探索者たちを待ち受けている。


 ここからは第三階層と比べて、一気に難易度が跳ね上がる。最も探索者が死ぬと言われているのが、この第四階層である。


 そんな第四階層を凄まじい速度で駆け抜けるものがいる。カインである。


 カインに飛び掛かる毒ガエル。それに向かって槍を投擲。一瞬で頭が弾け飛ぶ。投げ飛ばした槍は、しばらくすると勝手に軌道を変え始め、カインの手元に戻る。


「ジメジメしてるし、空気はクソ不味い。こんなところはさっさと駆け抜けるに限るな」


 カインの足元から触手が伸びる。その触手はカインの足を絡め取ろうとした。だがすでに探知済みである。触手はカインの足をすり抜けた。カインは予め『自由』を使用していた。


「ほい、死にな」


 沼のある一点に向かって魔力放出を行う。すると触手が唐突に悶え苦しみ、やがてくったりと脱力した。魔力放出を放った方を見ると、何やらたくさんの触手が体から伸びている巨大な巻き貝が、殻を砕かれ死んだ状態で浮き上がってきた。ちなみにこの魔物の名前はジャンボタニショクシュである。


「うわきっも」


 率直な意見である。


 カインは第四階層を突破するまでに毒ガエルを八体、ジャンボタニショクシュを六体始末した。なお、特に語ることはない。魔力放出と軽い槍の投擲で全て片付いたからだ。


「よーし、第五階層への階段発見。いくら探索と自由を求めているからって、こんな階層でウロチョロはしたくないし、さっさと次行くか」


 カインはそうして次の階層へと足を向けるのであった。


 第四階層攻略、総所要時間は脅威の二十分。カインにとってではなく、魔物たちにとって死の第四階層だった。



 ◇◇◇



 第五階層。第四階層とは打って変わって、特に毒沼や毒ガスもないシンプルな階層である。


 基本的には松明が点々と置かれた暗い洞窟を進むことになる。現れる魔物はリザードマン、スケルトン、オークなどであり、これまた特に搦め手や一芸に秀でたものはいない。しかし、どの魔物も第一階層と比較して明らかに強くなっているため、しっかりとした実力がなければ対策をしても意味がない。


 また、注意すべき点として洞窟の狭さも挙げられる。いつもと同じ感覚で武器を振り回すと、簡単に洞窟の壁に当たり、武器が弾かれる。そしてその隙に攻撃を受けるという事故が多発する。カインにとってはあまり関係のない話ではあるが。


 先に見えるのは松明の小さな灯りのみ。淡々と暗闇が伸びる、ウネウネと曲がりくねった洞窟が続く。


「……本当にいやらしいな」


 しばらく洞窟を進むと道が三つに分かれている。そして、その交差点が落とし穴の罠になっていることを探知で発見した。


 落とし穴にかからぬようにぴょんと飛び越え、歩みを進める。カインが選んだ道は真ん中だった。


「いきなり広くなったな……ああ、なるほど」


 そのままただひたすらに進み続けていると、開けた空間が見えた。そこはゴブリンの巣であり、多くのゴブリンとその上位種であるホブゴブリンが食事をとっていた。


 彼らが手に持っている肉は明らかに人の手足である。地面には骸骨が散らばっていた。


「まあ、なんというか、ご愁傷様ってやつだな。仇は俺がとってやるよ」


 まずは入り口付近で腹を見せながら寝ているゴブリンの首を刎ねる。声を出されて気づかれるのも面倒だった。


 巣の中を注意深く観察すると、ほとんどのゴブリンたちは食事に夢中でこちらに背中を見せている。であるのならば。


「鉄棒の出番だな」


 背中に背負っていた幾本もの鉄棒。迷宮に挑む前にちゃっかり今回も調達していた。実は槍を投げても勝手に手元に戻ってくるので、前ほどの必要性はなくなっているが、敵の数が多く、早さが求められる場面ではやはり鉄棒を投げるのが最適解である。


「あ、やべ」


 ゴブリンたちに鉄棒を投げつけるカイン。そのうちの一本を勢い余って強く投げすぎた。その鉄棒はゴブリンの体を容易く貫通し、そのまま壁に刺さる。大砲が放たれたような音が洞窟に響く。


「あちゃー気づかれちまったな」


 ゴブリン達は食事をやめて一斉にカインを見た。ざっと数えても五十体はいる。


「ま、こっちの方が早いし面倒はないか。来いよ」


 槍を構え、臨戦態勢を取るカイン。槍には光の輪が巻きついていた。


付加魔術(エンチャント)一重(シングル)重化(ヘビィー)


 ゴブリン達とカインの生存競争が始まった。


 





「これで、最後っと」


 なお当然の如くカインの圧勝である。ゴブリン達との交戦はもはや戦いではなく、蹂躙と呼ぶのが相応しいものであった。


 付加魔術で重みを増した槍は、カインの膂力で振り回されれば、穂の刃でなくとも触れただけで肉が消し飛ぶような威力。それに槍の遠心力が加わるため、想像を絶する破壊力になっていた。


 十秒ほどで十五体のゴブリンの命を奪ったカインに対して、ゴブリン達がとった行動は逃げの一手であった。


 正直なところ、この行動がカインにとっては一番厄介だった。そのまま逃げたゴブリンが他の探索者と接敵し、探索者が殺されでもしたら責任を取ることができない。カインは逃げ回るゴブリンとの鬼ごっこを余儀なくされた。


 そして今、ようやく最後の一体をその槍で貫いた。


「いやあ、焦った焦った。やっぱりもっと慎重にやらないとな」


 疲労ではなく、心労のせいでかいた冷や汗を拭う。カインは自身の気の緩みを自覚した。


「……おっとなんだ、もう大部屋か」


 ゴブリンを追った結果、カインは知らず知らずのうちに大部屋にたどり着いていた。


 目の前にはもはや見慣れた巨大な門がそびえ立っていた。今回もその門が少し開いている。自分以外に挑戦者はいないようだ。


「ま、サクッと終わらせるか」


 カインが大部屋に入ると、重々しい音と共に門が閉まる。大部屋も洞窟ではあるが、非常に広く、槍を振り回しても壁にぶつかる心配は欠片もない。戦いやすそうだ。


 カインは探知の魔術を使用した。前回の落とし穴がもはやトラウマになっている。どうやら今回は罠がなさそうだ。






 大部屋の奥には、巨体が佇んでいた。第五階層の"門番"である、ミノタウロスだ。


 ミノタウロスは、上半身が牛、下半身が人間の異形であり、全身が分厚い筋肉の鎧で覆われている。そしてその優れた身体能力で敵対するものを叩き潰す、恐ろしき魔物である。


 (ま、デーモンと戦った後じゃちょっと見劣りするけど)


 "門番"といえど、所詮は第五階層の魔物。第九階層の魔物と比べるのは些か酷な話である。


 ミノタウロスが牛のようにカインに突進する。かなりの速度ではあるが、回避することは難しくなかった。


 余裕を持って突進を回避したカインは、槍に魔素を流し込んだ。槍は微かに震えて、穂が黒い閃光を纏い始める。それは、ミノタウロスにとって死そのものであった。


 黒い閃光を見たミノタウロスが後ずさる。


「おいおい、"門番"のくせして、怯えて門を放棄していいのかよ」


 ミノタウロスが自身を鼓舞するように、首を振りながら小さく叫ぶ。その時には、既にカインはミノタウロスの懐に潜り込んでいた。


 槍がミノタウロスの分厚い腹筋を容易く貫く。ミノタウロスは身じろぎ一つすることができなかった。


「魔力解放」


 槍の穂先から魔力が放たれた。魔力放出とは異なり、指向性を持たせずに魔力を解き放つ。


 ミノタウロスは内部から爆発し、上半身と下半身が泣き別れた。


「いやえぐ」


 カインは、自身の行った所業に引いた。


「にしても、俺ってこんなに強かったっけ?……絶対師匠のおかげだな。改めて感謝しないと」


 カインの実力は明らかに伸びていた。しかもそれは、付け焼き刃や小手先の技術ではなく、地力が成長したことによるものである。


「さて、お待ちかねの宝箱タイムだな」


 ミノタウロスの死体は気づけば消えていて、残されていたのは宝箱のみ。カインは宝箱を開ける前に念の為もう一度探知をかけ直し、罠がないことを確認すると、意気揚々と開けた。


 中に入っていたのは当然銀の指輪であった。


「まあそりゃそうだろうな……帰るか」


 これにて第五階層攻略、完。晴れてカインは銀級へと昇格した。




 なお、カイン曰く、最も達成感がなかったらしい。


 


 


Tips: 三つに分かれていた道は、左がリザードマンの巣、真ん中がゴブリンの巣、右がスケルトンの墓場となっていた。



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