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嗚呼、なんと素晴らしき自由(強制)  作者: 【規制済み】
第1章 迷宮都市ラークル

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二度目の迷宮探索、開始


やった〜記念すべき10話目&3万文字突破だ〜。

まだまだ毎日投稿は続きます。



 迷宮に挑まなかったこの一ヶ月。カインは探知魔術の鍛錬のみをしていたわけではない。ある日は資料室にて迷宮の情報を収集し、ある日は槍術の練習をし、ある日は一日中寝てサボっていた。


 そんなこんなで、カインの頭には中央大迷宮の第五階層までの情報が入っていた。


 第二階層。それは一階層とは打って変わって、見渡す限りの草原が広がっている。空は明るいが、これは恒星があるわけではなく、強力な光魔術によるものらしい。その光魔術の出所は不明である。


 主に出現する魔物は、花や植物系と鳥系であり、植物系で最も有名なのはアルラウネ、鳥系で最も有名なのはハーピーである。どちらも女体を取るので、熱狂的な男性探索者ファンがいるらしい。変態だ。


「おお〜本当に草原だ。何も知らなかったら外だと勘違いするな」


 カインは第一階層を軽々と突破し、第二階層へと足を踏み入れていた。空の見た目は完全に青空が広がっているように見えて、カインは感動した。


 風が吹き抜ける。風に混じる植物と土の匂いまで自然そのものだった。


「やべ、下手に呼吸しちゃダメなんだった」


 カインは急いで布で口元を覆った。


 第二階層には一階層と比べて多種多様な魔物が潜んでいる。その中でも特に脅威度が高く、第二階層最恐と呼ばれているのがフィーバーという巨大な蝶の魔物である。


 彼らはこの第二階層を悠々と飛んでいるだけである。しかし、その飛行と共に撒き散らされる鱗粉を吸い込むと発熱、体の痺れ、幻覚、昏睡の症状を引き起こす。何よりも恐ろしいのは、この鱗粉は非常に軽く、第二階層全体に舞っているため、事実上第二階層では鱗粉の発症という時間制限がある。当然、激しい戦闘も呼吸回数を増やすことになるため行うべきではない。


 こんな環境で、第一階層のようにノロノロと罠の確認をするのは自殺行為だとカインは実感した。探知魔術が必須だと言われるのも頷ける。


「大部屋もないし、さっさと抜けたいところだが」


 息の上がらない程度で走るカイン。その合間に何体かの魔物がいたが、気づかれぬように走り抜けた。


 しかし、全ての魔物を避けるのは当然不可能である。


「空にいる奴からは、流石に見つかるな」


 空にはカインを見つめながらクスクスと笑う者達がいた。ハーピーである。


 ハーピーは三体でカインの周りを飛んでいる。いつ襲いかかってもおかしくない状況だ。


「こういう時のための秘密兵器なんだよなあ」


 カインは背中に背負っていた、とあるものを手に持った。それは、先端の尖ったただの鉄棒である。


 迷宮に挑む少し前。カインはいくつかの武器屋に足を運んでいた。


 カインは考えた。第二階層には空を飛ぶ魔物が多い。投擲で仕留めることはできるが、複数現れた際に投げた槍を取りに行くのは自殺行為である。


 つまり槍以外に、投げるためだけの武器が必要だった。そして、カインが得意とするのはやはり槍の投擲。できるだけ近しい形のものを求めた。そのため武器屋から、廃材となった格安の鉄棒をかき集め、何本も迷宮に持ち込んでいたのだ。


 空を裂く鉄棒。胸に刺さる、まずは1匹。二投目。翼に刺さる。もう二度と空を飛ぶことはできないだろう。この時点でもう1匹のハーピーはどこかへと逃げていった。


 前のゴブリンといい、ハーピーといい、魔物はどいつもこいつも仲間意識がないなとカインは思った。


 事切れたハーピーから鉄棒を抜き取る。いくらか歪んではいるがまだまだ使えそうだ。


 再び走り始めるカイン。空からの襲撃はパタリと止んだ。カインの様子を伺っていたほとんどの魔物たちがあの投擲を見て、恐れをなしたらしい。


「探知」


 カインは周りに危険がないことを確かめて探知魔術を使用した。周りには罠も魔物もいない。


 鱗粉の脅威はあるものの、見晴らしの良いというのは奇襲を受けにくいということである。カインは、この分なら第一階層よりも楽かもしれないと思い始めた。


 第二階層も終わりが近い。そんな時に奴は現れた。


「げ、スライム」


 第二階層最恐のフィーバーと双璧を成す魔物。第二階層最凶のスライムである。


 彼らは全身が強酸の粘液でできている。そのため物理攻撃が効かないどころか、攻撃した武器をダメにされる。


 また魔術に関しても、炎と水に関してはあまり効果がない。最も有効なのは電撃と氷結だが、そもそもそんな魔術を扱える人間が少ない。


 正攻法はスライムの体のどこかにある核を破壊することであるが、スライム一体を倒すのに一つの武器をダメにするのはまるで割に合わない。まさに最凶。


 この厄介な魔物をどうしようかと頭を悩ませていると、とある閃きがカインの頭をよぎった。


「いやあ、秘密兵器は空を飛ぶ奴用だったんだが、よくよく考えたらスライム用としても優秀だな」


 すでにボロボロの鉄棒ならダメになっても特に問題ない。そう考えたカインは鉄棒を槍のように構えた。


 スライムがプルプルと震える。飛びかかろうとしているのだろうか。その動きを見て、カインはなんだかゼリーが食べたくなってきた。


 探知魔術を使用。しばらくすると、スライムの核がどこにあるのかが手に取るようにわかった。


 核のある場所を鋭く突く。スライムの緩慢な動きではその突きを避けることは叶わない。


 何か硬いものが割れる感触と共に、スライムの体が溶けてサラサラとした液体になる。討伐完了。


 スライムに突き刺した鉄棒を見ると、刺した部分はドロリと溶けていて、なんだか変な気体も発生している。カインはすぐにその鉄棒を遠くに投げ捨てた。


 その後も、何体かのスライムがカインの目の前に現れたが、その全てを鉄棒で討伐した。おかげで鉄棒は残り2本となったが、カインは第三階層へと下る階段を見つけた。


 しかしそこで素直に第三階層へと下りるカインではない。カインには一つ心残りがあった。


「空、飛びてえな」


 カインの数多ある夢の一つ。それは空を飛ぶことである。第二階層で沢山の空を飛んでいる魔物たちを眺めて、カインはそんな夢を思い出してしまった。


 身体強化をし、助走を大きく取ってカインは高く高く跳躍した。目指すは空飛ぶハーピーの足である。


 カインががしりとハーピーの足首を掴む。ハーピーは死角から襲いかかってきたカインに気づくことができず、突然の重量増加に適応することができなかった。


 バランスを大きく崩す。哀れなるかなハーピー。後は墜落するのみである。


 地面に叩きつけられるカインとハーピー。カインはどさくさに紛れてしっかりとハーピーを下敷きにした。鬼畜の所業である。


「んー飛べないか。まあいつか飛べればいいや」


 カインはハーピーの上で座りながらそんなことを宣った。


 そして第二階層の全てに興味を失ったカインは、第三階層へと歩みを進める。


 この先が、地獄であるとも知らずに。


 

 


Tips:フィーバーの鱗粉は麻酔として高く取引されている。しかし麻酔以外の用途としても需要があるため、資格を持ったものしか売買をしてはならない。



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