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Phase 8. 後始末

※挿絵はAI画像生成システム「imageFX」で生成した物を主に使用しております。

※カッコ記号の使い分けを行う事で、そのゾーニングをより明確にしています。

 基本的なゾーニングの区分は以下の通りとなります。。

 「」…[open]会話

 []…[semi-open]暗示

 ()…[open]テレパシー

 {}…[closed]テレパシー(秘話)

 <>…[closed]思考

 ≪≫…[closed]インナーセルフのリアクション

 レルフィーナによってミノリの家に運び込まれた、2体のミズキ。1体は黒いスーツ姿、もう1体は高校の体操着姿。どちらもアンドロイドとしての動作が完全シャットダウン状態だ。スーツ姿のミズキは、手術室の方に、体操着姿のミズキが別室のベッドに横たわる。

 ミノリは手術室の方でミズキの頭に検査用の器具を装着し、状況を調査していく。心配そうにその様子を見つめるレルフィーナ。

挿絵(By みてみん)

「…ギリギリのタイミングで、ダメージは食らわなかったみたいね」

「本当ですか?」

「ええ。今ログを解析しているけど、例のダークネス・レルフィーナの指がミズキの額に触れる0.1秒前に、ミズキは危険を察知して自らの強制シャットダウンを完了させている。シャットダウンした状態で得られるミズキの情報はたかが知れている。ただ、身体の組織を一部抜かれた可能性はある。ミズキ自体を複製することは無理でしょうけど、ミズキの超夢現体の組織を培養すれば、『ミズキもどき』は生み出せるかもしれない。ダークネス・レルフィーナのようにね」

「あのダークネスも、あたしの体組織から生み出されたと考えた方がいいのでしょうか?」

「それは間違いないんじゃ無いの? あなた、ジェノという魔族の子と直接接触しているんでしょ。それに捕らえられて気を失っている間に何をされたか判らない。そこであなたの体組織が採取されていれば、そこからダークネスを合成する事もできるでしょうね」

「…」

「それに魔族もあなたたちと同じように時間操作ができると考えれば、一瞬触れたように見えても、数年分の時間が経過しているかもしれない。あなたたちが9分を1秒に縮めたようにね」

「…ダークネスがあたしの防御能力を破る力を持ったのも、そのせいでしょうか?」

「時間操作であなたをリバースエンジニアリングして、防御を無効化する能力を構築した結果…と考えれば、納得がいく」

「本当にあの子、最強最悪の敵になっちゃってますから…」

 レルフィーナ、深く溜息をつく。

「ねぇレルフィーナ。あなたの能力をフル活用して、今のミズキを徹底的に検査してもらえないかしら」

「え、あたしが…ですか?」

「私はアンドロイドとしてのミズキの安全性を検査・確認することはできる。でも超夢現少女としてのミズキの安全性をくまなく検査するには限度がある。でもあなたなら、自分の能力をどんどん拡張して、できないこともできるようになる。だから、あなた自身の能力を拡張して、ミズキの事を徹底的に調べて欲しいの」

「…そうか、あたしがダークネスに呪いを掛けられたのと同じように、ミズキにも呪いが掛けられているかもしれない。一応ミズキ自身は呪い避けの能力を付与しているけど、ダークネスの能力のことを考えると、それが無効化されている可能性も否定できない…」

「それにミズキの額にダークネスが直接触れている。そこでミズキの超夢現体に何か操作が加えられて、再起動した直後にそれが発動したとしたら、取り返しが付かなくなる。最悪、ここにいるミズキを放棄しなきゃいけなくなる。ただ、分身だからと言って安心することはできない。超夢現体の分身は、離れていても未知の力で繋がっている。一方が獲得した能力が、その未知の力によって離れていた分身にも複製される事があるの。もしここにいるミズキに何らかの異変が埋め込まれて、それが分身にも複製されてしまったら…」

「…分かりました。やってみます」

「お願いね。私もミズキの検査を続けるわ」

 レルフィーナは静かに目を閉じ意識を集中する。

<あたしよ、超夢現体を徹底的に検査したり治療できたりするようになれ。あと呪いの強制解呪能力と、一応呪い避けの能力も付与。強制解呪にあたっては解呪トラップの事前確認と、それを無効化できる能力も欲しい>

挿絵(By みてみん)

 レルフィーナの身体が淡く光る。次々と能力が付与されていく。ミズキが付与に苦労していた強制解呪の能力も案外スムーズに付与成功。解呪トラップの無効化能力付与には少し時間を要した。そして最も時間を要したのは超夢現体の検査・治療能力の付与だった。

「お待たせしました。これからミズキの検査に取りかかります」

「頼むね」

 レルフィーナがミズキの身体に手をかざし、意識を集中。

<まず、ミズキの身体に呪いが掛かってないか…>

 しかしその結果は、レルフィーナを驚かせる事になる。何とミズキには膨大な数の呪いが掛けられていたのだ。しかもその呪いを掛けていたのがミズキ自身だったり、中にはユウやレルフィーナが掛けていたものもある。

<これ一体どういう事? あたしミズキに呪いを掛けた事なんて無いよ>

 よくよく調べてみると、検出された殆どの呪いはミズキ自身が自分に言い聞かせたり、他人がミズキの事を思って掛けてくれた言葉だったりした。それが呪いとして検出されたのだ。

<そっか、こういうのも呪いの一種…ていうか、『良い呪い』よね。あたし自身の能力付与も一種の『良い呪い』なのね。じゃあ検出能力を調整して、『害を与える呪い』だけを検出するように変えなきゃ>

 レルフィーナは自身の能力を調整し、再びミズキを検査する。

<だめだ…。ミズキ、呪いを背負いすぎてるよ>

 検出された呪いは、アンドロイドであるミズキが自身を爆破・破壊するものが少なくない。それもA国のエージェントという役割を背負っている関係で、秘密が漏えいする危機が迫った場合、最悪の場合は自爆することもいとわないよう教育されていたのだ。それが呪いとして検出されていた。

<これらの呪い、解呪してあげたいけど、しちゃいけないのよね…。ごめんね>

 再びレルフィーナは能力を調整。そして再検査を行う。

挿絵(By みてみん)

<やっとまともな結果が出たけど、それでも10個…。ダークネス、本当になんて子なの>

 その呪いは、ミズキが再起動した直後に発動するものが殆どで、それらが発動するとミズキの能力は殆ど無力化してしまう。それでも無理に能力を使おうとしたり、アンドロイドとしての特殊機能を使おうとすると、ミズキ体内の自爆プログラムが即作動するという恐ろしいものまであった。

<なんて酷いことを…>

「ミノリさん、ミズキは大変な状況になってます。再起動するとミズキの超夢現体としての能力やアンドロイドとしての特殊機能が全部止まります。無理にそれらを使おうとすると、自爆プログラムが作動するよう仕掛けられています」

「やっぱり…」

「あたしがこれを全部解除します」

「お願い。信頼してるわ」

 レルフィーナ、深く息を一つ。ミズキを絶対に救う覚悟を決める。

<まず、強制解呪前のトラップ無効化を…>

 レルフィーナは再びミズキの身体に手をかざし、意識を集中。

<やっぱり…トラップだらけね。火炎、電撃、爆裂、幻覚、麻痺、石化、強制瞬間移動、腐食、大量の魔物出現、精神破壊…。二重三重にトラップが仕掛けられているものもある。これを無効化するのよ。まるでパズルを解くような難しさだよ>

 レルフィーナは慎重にトラップを解き無効化していく。万一トラップが発動してしまうと、被害は計り知れない。

<まさかこんな危険なパズルを解かせられるなんて思わなかったよ。いくらあたしから生まれたからってこの巧妙さ…今度会ったらガチ説教ものだわ>

 全てのトラップを無力化するのに、約2時間…。

「あ~、やっとトラップを無効化できた~」

「レルフィーナ、いくらあなたでもちょっと一服したら?」

 ミノリが穏やかな笑顔で声を掛ける。時計を見ると午後2時。ミズキを救出したのが確か11時頃だっただろうか…。

「お昼も食べてないでしょ。用意したわよ」

 ミノリが宅配の弁当を用意してくれたらしい。

「気を使わせてしまってすみません」

「いいのよ、助けてもらってるのはこっちなんだから。食べて」

「ありがとうございます」

 別室のミーティングルームで遅い昼食。

「相当難航しているみたいね」

「ええ。それでもトラップを全部解除できたんで、呪いを全部解くのも時間の問題かと」

「学校のユウさんももうすぐ帰ってくる頃じゃない?」

「…すっかり忘れてた。あっちはどうなんだろう」

 レルフィーナが学校のユウにテレパシーで呼び掛ける。

(れーちゃん、おつかれ。そっちは大丈夫?)

(うん、今やっとお昼。ミズキに掛けられた呪いを解くのに一苦労。そっちは大丈夫?)

(分身がミズキの代役を上手にこなしてる。もう授業終わったけど、瞬間移動でそっちに戻ったほうがいい?)

 レルフィーナがミノリの方をチラリと見る。ミノリは『急がなくていい』と小声。

(普段通りに帰ってきて。その頃にはミズキも復活できると思う)

(わかった、引き続きよろしくね)

 交信を終える。

「お弁当、ごちそうさまでした。それじゃ、作業に戻ります」

 レルフィーナは再び手術室に戻る。寝ているミズキの姿を見て、レルフィーナは凍り付いた。

「…何これ! ミズキ! 大丈夫?」

挿絵(By みてみん)

 なんと眠っているミズキの全身が植物のようなものでびっしりと覆われているではないか。

「トラップを全部外したはずなのに…」

 ミズキの身体をくまなく調べると…。

「どうしたの?」

 後から入ってきたミノリが驚きの声を上げる。

「これもダークネスの仕業です。超夢現体の一部から発芽した植物がこの有様で…」

「除去できるの?」

「できると思います。でも先に呪いを強制解呪するのが先になります。まずはこの植物の成長を食い止めます」

 レルフィーナは透視で発芽している超夢現体の位置を特定。そこに手をかざす。

「成長よ止まれ!」

 レルフィーナの手が強い光を帯びる。それまで急速な成長を続けていた植物の動きがピタリと止まった。

「…これでよし」

「この植物、何かしら。一応採取を…」

「ミノリさん、採取はちょっと待ってください。この世界の植物で無い可能性もありますし、採取した切り口から有毒物質が出る可能性もあります。採取した植物はその試験管に入れるんですね。」

「ええ」

「試験管のゴム栓を閉めたまま持っていてください。私の力で採取して、その試験管の中に瞬間移動します」

「頼むわ」

 レルフィーナは植物の葉の一部を隔離、隔離した部分を試験管内に瞬間移動する。採取した切り口はごく小さな隔離空間を作って密封。

「ありがとう。早速これを自動分析装置にかけてみる」

 ミノリは植物のサンプルを手に、別室へと消えた。

「さて…」

 改めてミズキに手をかざすレルフィーナ。

「強制解呪!」

 レルフィーナの手とミズキの身体の間に10枚の魔方陣が現れた。レルフィーナの持てる力の全てを注ぎ込んで解呪に挑む。

 1枚、また1枚と魔方陣が砕け散っていく。トラップの発動は無い。

 最後の魔方陣が砕け、強制解呪が無事終了したところに、ミノリが飛び込んでくる。

「レルフィーナ!、大変なことが分かったの」

「ミノリさん…」

「ミズキの周りに生えている植物、極めて危険よ。できるだけ早く駆除して! あなたも危ないわ」

「え?」

「採取した植物のサンプルを調べた結果、極めて有毒性の高い『マンチニール』という植物に極めて近いことが分かったの。葉に触れるだけでも火傷したように皮膚が腫れ上がるの」

「…じゃあミズキの皮膚も…」

「恐らく相当なダメージを負っているはず」

「…なんて酷いことを」

「焼却もできない。この部屋の空気さえ既に有毒物質で汚染されている可能性もある。私自身も多分…」

「分かりました。ミノリさんもこの部屋に入って扉を閉め切ってください。後で治療します」

 レルフィーナはミズキを覆っている植物に手をかざす。

「隔離空間展開!」

 ミズキを覆っていた植物全体が淡い光に包まれる。そしてこの植物の幹が生えていたミズキの額の一部も隔離空間に封じ込める。

「次元消滅、3,2,1,0!」

 ミズキを覆っていた植物が0次元まで圧縮され完全消滅。やはりミズキの肌が露出していた場所はどこも酷い火傷のようになっている。

「次にこの部屋の空気を完全浄化します」

 レルフィーナが両手を胸の前で組み祈るような姿に。次の瞬間、部屋全体が淡い光に満たされ、約3秒後に光が消滅。

「空気の浄化完了です。次はミノリさんを治療します。そこに座ったままじっとしていて下さい」

 椅子に座っているミノリに向かって右手を突き出すレルフィーナ。レルフィーナの右手とミノリの身体が一瞬淡く光る。

「最後にミズキ。スーツを着ている部分の火傷は全く無いようです。ダメージを受けたのは露出した皮膚だけ。火傷のような皮膚の治療。あと有毒植物が生えていた部分の皮膚修復をします」

 レルフィーナはミズキの顔に手をかざす。レルフィーナの手がまばゆく光り、火傷のようになったミズキの皮膚と、有毒植物の根が埋め込まれていたミズキの額の部分を再生していく。全ての修復が完了し、レルフィーナの手から光が消えた。

「全て終わりました」

「本当にお疲れ様、あなたのお陰よ」

「いえ、こんな酷いことをしたのはあたしから生まれたというダークネスの仕業。責任の一端はあたしにもあります」

「そんなことないわ。背負っちゃダメ」

 優しく声を掛けるミノリ。

「それじゃミズキを再起動するわね」

 ミノリは手元のパソコンを操作すると、ミズキの頭に取り付けていた検査用の器具を取り外した。

 しばらくして、ミズキがゆっくりと目を開く。

「…ミズキ、気分はどう?」

「…全て正常動作…しています。ミノリさん、ご迷惑をおかけしました。五十嵐 ミズキ、ただいま帰還です」

「お礼はこの人にも言いなさい。あなたを救った立役者よ」

 ミノリはレルフィーナの袖をぐっと引っ張り、ミズキの側に寄り添わせる。

「レルさん…無事で良かった」

「その言葉をそっくりそのまま返すよ。ほんと大変なことになってたんだからね」

「…今、ここに私が運び込まれてからの記録を見ています。…確かにとんでもないことになっていたんですね」

 少し微笑むミズキ。

「私の分身、起きた?」

 そう言って部屋に入ってきたのは、体操着姿のミズキ。

「試合、勝った?」

「終わる前に私落ちちゃったから、わかんないよ。でも落ちる前までは、1点差で勝ってた。能力強化したユウ姉、アレは反則だよ。キレッキレの動きしてるんだもん」

「試合の結果は、もうじきここに来るあなたの代役から聞いて」

「私の代役?」

「ユウが分身を作って、それをミズキに変身させて、あなたの代役をしたの」

「…ってことは、2班負けちゃったかな?」

「結果は本人から聞きましょ。ねえそっちのミズキ、私が取り込んでいい?」

 スーツ姿のミズキが尋ねる。

「ダメージを負ったのはあなたでしょ。私が取り込んだほうが良いんじゃないの」

「体組織が新しいのは私よ。私の方に…」

挿絵(By みてみん)

「2人ともやめなさい! どちらでもいいでしょ!」

 ミノリが2人のミズキをたしなめる。

「「どちらでも良くない!」」

 2人のミズキが口を揃えてミノリに食いつく。その光景があまりにおかしくて、思わず吹き出すレルフィーナ。

「「レルさん、笑わないで」」

 またしても2人揃って、レルフィーナはついにお腹を抱えて笑い出した。

「おっかしぃ~。2人ともじゃんけんの勝ち負けでどっちかに決めたら?」

「それだと永久にあいこを繰り返して決まらないよ」

 スーツ姿のミズキが答える。

「じゃああたしが決める。体操着のミズキ、あなたが取り込まれなさい」

「何で?」

「『両方でじゃんけんすると永遠あいこ』って答えたのがスーツ姿のミズキだから。リアクションの速いほうが勝ち」

「はーい、レルさんの言うとおりにしまーす。ちょっと悔しいけど」

 そう言い残して、体操着姿のミズキはスーツ姿のミズキの中に取り込まれた。

 ピンポーン、玄関のベルが鳴る。

「あ、ユウとにせミズキ、着きました」

「レルさん、『にせミズキ』は可哀想よ。少なくともあたしの代役を務めたんだから」

「中に入ってもらいなさい」

(2人、中に入っていいって)

(でも玄関、鍵かかってるよ。念力で鍵開けていい?)

「私が鍵を開ける」

 ミズキが玄関のほうを指さす。念力で鍵を開けた。

(鍵が開いたから、中に入るね)

「おじゃましま~す」

「おつ~。どっちが勝った?」

「私達です、1点差勝ち!」

 ピースサインで応える代役のミズキ。

挿絵(By みてみん)

「私の代役、めっちゃ板についてるじゃん」

「そっかな? でも本物に褒めてもらえて嬉しい。で、今までの記憶、ミズキに流したいんだけど、いい? ハイパー・テレパスリンク、あたしも体験したいから」

「いいよ、こっちはいつでも受信OK」

「それじゃ、流すよ~」

 代役ミズキのこれまでの記憶が、余すところなく高速でミズキのほうに流れる」

「…もう終わり? ハイパー・テレパスリンク、めっちゃ大容量で高速ですね」

「代役、ありがとうね」

「じゃあたし、消えまーす」

 代役ミズキがユウの中に取り込まれた。

「ところでれーちゃん、例のダークネスってどんな奴だったの」

「テレパシーで流すね」

 レルフィーナは今日の一連の出来事を、包み隠さずユウにテレパシーで伝えた。

「うわ、めっちゃヤバい奴じゃん」

「でもそのダークネスが、元を辿るとあたしたちなのよ」

「あたしもれーちゃんも、あんなに極悪非道じゃないのに、なんで?」

「でもユウ姉、あなたも完璧な人間じゃないでしょ」

「そりゃぁ、まぁ…」

「私思うんだけど、ダークネスってユウ姉やレルさんが内包している闇の部分だけを純粋培養して、そこに魔族の力を追加した存在じゃ無いかって考えたの。あのダークネスを倒せるのは、ユウ姉、レミア、レルさんの3人以外無理じゃないかって思う」

 ミズキの言葉に顔を見合わせるユウとレルフィーナ。

「…そうかもね」

「でもどうやって倒すんだろ? そもそも倒すべき存在なのかな?」

「ユウ姉…」

「もしあたし達が元になってダークネスが生まれたとしたら、それは倒すべき存在じゃ無いような気がするの。私達が取り込むべき物じゃ無いかって」

「ユウ姉、それは甘いよ。甘すぎるよ」

「そうかもしれない。だけど、今のあたしには『ダークネスを倒す』って気にはなれないの」

「ユウ姉、その優しさ、本当に身を滅ぼすよ」

「ミズキ、やめなさい」

「ミノリさん…」

「一番辛いのはユウさんやレミアさんの筈よ。そこまで私達が指図してはならないのかもしれない」

「そんな…」

「ミズキが言うのも分かる。でも、私達に少し考える時間が欲しいの。後始末は私達の役目だから…」

 レルフィーナが小さく呟く。

「…分かった。でも、大きな被害を出してからじゃ」

「分かってるよ!」

 半分泣きそうな表情のユウ。それを見て、ミズキは何も言えなかった。

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