Phase15 女神様の仕業
※挿絵はAI画像生成システム「Gemini Flash image 2.5/3(Nano Banana/Pro)」で生成した物を主に使用しております。
※カッコ記号の使い分けを行う事で、そのゾーニングをより明確にしています。
基本的なゾーニングの区分は以下の通りとなります。。
「」…[open]会話
[]…[semi-open]暗示
()…[open]テレパシー
{}…[closed]テレパシー(秘話)
<>…[closed]思考
≪≫…[closed]インナーセルフのリアクション
昨晩サツキと出会い、自分の血をサツキの体内に瞬間移動させてサツキの命を救ったユウ。
翌朝起きた後、昨晩のことを起きたばかりのレミアに話す。夢世界の妖精であるレミアの体も今は人間であるユウと融合した融合体なので、昨晩サツキと約束した秘密をレミアに隠すことは絶対不可能なのだ。
「いなくなったと思ったら、そんな事があったのね」
「うん…」
(ゆうちゃんの中にいるあたしがそれを認めたのは、おそらくゆうちゃん自身の『友達が欲しい』って欲求を尊重したからなんだけどね。ゆうちゃん、ただでさえ友達少ないし…)
「しれっとキツいこと言うね」
(だって事実でしょ)
「まぁ…ね」
(正直、あたし単独だったら、そこまで踏み込まなかったよ。黒龍との時も、その子の心、読みにくかったんでしょ。だったらあたしはもうちょっと警戒するなぁ)
「…」
(もしかしてゆうちゃん、彼女に魅了されちゃったんじゃないの? 彼女の能力で)
「そんな馬鹿な…」
(ゆうちゃんの防御能力は『自分が信頼している相手や敵意の無い相手からの能力行使や操作は全て受け入れる』だよね。ゆうちゃんが彼女を信頼しちゃったら、その防御をすり抜けてしまう。確か吸血鬼って血を吸う相手を眠らせたり精神操作したりする能力を持っているはずだし…)
「…でも彼女がそんなことする風に見えなかったよ。でなかったら、自分自身が不利になる情報…彼女自身が吸血鬼であることを所属している組織に秘密にしているなんて話、出ないはずだもん」
(…う~ん、でもそれも本当かどうか、証拠が無いよね。嘘かもしれない。彼女の心、どこまで読めた?)
「彼女、凄く心が読みにくくて、ぼんやりとしか読めなかった」
(…もしかして、テレパス・リンクで繋いでも彼女の心を深くのぞけないんじゃ無いの? その代わり私達の心はだだ漏れだとしたら、大変なことになるよ)
「今、試しに繋いでみようか…」
ユウはサツキとのテレパス・リンクのチャンネルを開く。
{おはよう…。起きてる? 朝早くごめんね}
少し間が開く。
{…おはよう。昨日はありがとうね}
鮮明にサツキの心の声が聞こえて、サツキが見ている光景も流れこんでくる。どうやら台所にいるようだ。
{あ、ごめんね。忙しかった?}
{今、朝ご飯の支度中。あ、そこに見えるのはレミアさん? 初めまして}
ユウが見ているレミアの姿がサツキにも見えているようだ。
{あ、どうも}
{ごめんね忙しいときに。テレパス・リンクのテストで繋いでみただけなの}
{ううん、いいよ。この能力、結構面白いね}
{ごめんね、忙しいときに。切るね}
{うん、またね}
テレパス・リンクのチャンネルを閉じる。
(自分で朝ご飯の支度をしているなんて、ゆうちゃんよりしっかりしているじゃないの)
「…すみませんね、しっかりしていなくて」
(ところで今日から学校は夏休みなんでしょ? だいぶ暑くなりそうだし、今日はどうするつもり?)
「どうしようかなぁ…」
ユウは再びベッドの上で横になり天井を仰いだ。
朝8時半頃。既にユウは朝食を食べ終えていたものの、今日やることが見つからなくて、自宅のベッドの上で仰向けになっていた。
{ユウ姉、起きてる?}
ミズキからのテレパシー。ユウはテレパス・リンクのチャンネルを開く。
{…おはよう}
{おはよう。ねぇ、今日暇?}
{…どうせ透視であたしの状態を見ているんでしょ。今日は外も暑そうだし、家でゆっくりしていようかなと思って}
{ユウ姉の都合の良いときに、私の家に来ない? れーちゃんも一緒で}
{あたしはいつでも良いよ}
レミアが割って入る。
{あ、れーちゃん、おはよう。れーちゃんはOKなのね。で、ユウ姉は?}
{あたしもいつでも良いよ}
{じゃ、ミノリに確認するね…9時くらいにどう?}
{良いよ}
{それじゃ、待ってるね}
交信終了。
朝9時、ユウとレミアはミズキの家を訪問する。レミアは人間サイズに巨大化し、不可視属性も解除。
2人は2階のリビングダイニングに招かれた。
「おはようございます」
「朝早く悪いわね。2人とも座って」
2人は席に着く。ユウの前にはアイスレモンティー。レミアの前には蜂蜜たっぷりのアイスティーが出される。そしてミノリとミズキも席に着く。ミノリの前にはアイスコーヒー、ミズキの前には麦茶。各人の好みをミズキがテレパシーで読み取り、ミズキの能力でこれらの飲み物を出現させている。
「さっそくだけど、この画像を見て」
ミノリがリビングダイニングの壁にある大型液晶モニタに映像を映し出す。
「これは…?」
レミアが尋ねる。
「昨日の私達の様子」
映し出されていたのは、昨晩のミノリ達の一連の出来事。その中で、隔離空間に捕らえられミズキに背後を固められているミズキの姿を目にして、ユウの表情がこわばる。
「ユウ姉…どうかした?」
「…ううん。何でも無い」
ユウの様子を不審そうな目で見つめるミズキ。ミズキは既にテレパシーでユウの動揺を捉えていた。
「何があったのか説明してもらえますか?」
レミアがミノリに尋ねる。
「それじゃ順を追って説明するわね」
ミノリから昨晩の出来事について説明があった。
「『国際未確認生命体研究財団』の海老ヶ瀬博士は、財団の中でも『超夢現体』研究の第一人者。財団の主義主張としては『科学的な事実は社会正義のために全て公開する』というもの。今まで彼らはその決定的証拠を掴めずにいた。ところがユウさんとレミアさんが超夢現体として融合した。私達はいち早く2人の存在を掴んで今の関係を気づけた。私達は『事実は事実として捉えつつも、むやみに公開はしない』と言う立場。ところが彼らは私達の行動を追跡し、ついにあなたたちにたどり着いた。そして様々な科学的証拠を掴む。その証拠を掴むのに大きく寄与したのがこの子…現代社会に於いてまだ存在したのかというくノ一。彼女は様々な特殊能力を駆使して、様々な証拠を手に入れた」
「で、このくノ一ってのが超くせ者。明らかに能力者よ。レルさんでも姿が見えないような光学迷彩能力持ってる。今の科学技術で何の機械的支援も無く透明人間になるなんて無理。彼女はそれを平然とやっていたの。能力者でなければそんな芸当できない。『科学的事実は公開する』主義の組織がオカルトチックな能力者を使っているのよ。矛盾も良いところよ」
ミズキが珍しく憤っている。
「彼らは私達にユウさんやレミアさんと関わる事を止めるよう脅しを掛けた。でなければあなたたちの情報を全て公開すると。もちろんた私達は断った。もしそういった情報が流出したときに即座に削除したり投稿者のアカウントを強制停止させる処置も取った。あなたたちの情報がむやみに流出すれば、あなたたちはもちろん、世界全体も大混乱に陥る。そんな事は許されない。分かるわよね」
「もちろんです!」
即答するレミア。
「…でも、向こうの組織の人も、私やレミアの事を警戒している訳ではないんですよね」
「…そうは信じたいけど」
「あたし…そのくノ一に昨日の夜深夜1時頃会ったんです」
「どこで?」
ミズキが身体を乗り出す。
「ここから…だいたい500mほど離れた農道に倒れてて、テレパシーであたしの名前を呼んでいたんです」
「そんなに離れた距離でテレパシーだなんて、テレパス・リンクでも繋いでなきゃ声やテレパシーが聞こえるはず無いじゃん。やっぱり能力者なんだわ」
「でもそのくノ一、瀕死の状態でした。外傷は無かったけど酷く体力と精神力を消耗していて、あたしがそっちに行って治癒しました」
「…そりゃあ、私が作った閉鎖空間を破っちゃうんだもの。普通じゃ絶対無理だよ。どれだけ能力を秘めているんだか。で、何か情報聞いた?」
「名前を教えてもらいました。『東島 サツキ』さんだそうです。サツキは忍術の修行の過程で、身体の中に様々な動物や妖怪・物の怪の身体の一部を体内に練り込まれたそうです。それで色々な能力が使えるようになったとか…」
「やっぱり能力者じゃん、ましてや妖怪や物の怪の身体を取り込んでいるなんて、オカルトも良いところよ」
「でも、彼女も生き延びるのに必死だったんじゃ無いかな」
「ユウ姉、ひょっとして彼女に同情しているの? 私達にとっては半分敵みたいなものよ」
「あたしもユウちゃんに言いました。『そのサツキって子に魅了されたんじゃないの』って」
レミアも不安そうな表情で語る。
「でもあたし…彼女とテレパス・リンク繋ぎました。あの子の流した涙を信じたんです」
「何ですって!」
ミズキ、素っ頓狂な声を上げる。
「それじゃユウ姉、彼女の居場所も追えるよね」
ユウに迫るミズキ
「ミズキ、落ち着きなさい!」
ミノリがミズキを諭す。ミズキは冷静さを取り戻しゆっくり席に座った。
「もし…もし仮にサツキが私達やミノリさん達に何らかの害を与えるようなことが起きそうになったら、あたしが責任を持って対処します。念のため彼女には…具体的には言えませんが、一種の『保険』を掛けたので」
ユウは真剣な表情でミノリとミズキに訴えた。
「保険? どんな?」
「…ごめんなさいミノリさん。これだけは絶対に内緒なので言えません」
間違っても『サツキの身体に自分の血を入れた』とはミノリ達には言えない。でもユウは自分の血がサツキの身体の中でずっとサツキを支え続ける事を知っている。つまりそれがユウの言う『保険』なのだ。
「ユウ姉がそこまで言うんなら、ま、いっか」
「信用してくれてありがとう、ミズキ」
「ユウ姉だからだよ」
ミズキに笑顔が戻る。
「ミノリさん、話は以上で良いよね」
「ええ。…何を企んでるの、ミズキ」
「夏休みだしぃ、厄介な奴らのことは忘れちゃってユウ姉やれーちゃんと海にでも行きたいなぁ~って思ってね。気分転換で」
「え~っ…」
あまり気分が乗らなそうなユウ
「海ね…いいね!」
レミアは乗り気。
「はい、2対1の多数決で決まり! ユウ姉、行くよ!」
「ちょ、ちょっと待って。どうやって行くの? 今からだとバスは…」
「何言ってんのユウ姉。あたし達なら瞬間移動でひとっ飛びでしょ!」
「あ…でもいきなり海岸に姿を現したらヤバくない?」
「どこかの浜茶屋に外から直接アクセスできるシャワールームあるでしょ。そこに飛べば良いじゃん♪ もう場所見つけたからテレパシーで座標送るね」
ミズキからユウとレミアに瞬間移動先の座標位置がテレパシーで送られる。
「着替えとかもシャワールームの中ですればいいのね、久しぶりだなぁ、海って。あ、レルフィーナになっていたときにダークネスに海底に落とされたっけ」
茶目っ気たっぷりで笑うレミア。
「みんなの水着姿初めてだね。ねぇみんな、どんな格好するの?」
興味津々のミズキ
「黒のスクール水着」
ぼそっと答えるユウ。
「え、ガチ?」
「ガチ」
「ユウ姉ヤバいよ。それはヤバい」
笑うミズキ。
「じゃ、あたし先に行くから。飛ぶのは一人ずつね。向こうで外に出たらテレパシー飛ばすから!」
そう言い残してミズキが姿を消す。
「ゆうちゃん、スクール水着なの、嘘でしょ」
「ガチだよ」
真顔で答えるユウ
「あ…もうミズキ外に出たって。時間操作でもしたのかな?」
「次、れーちゃん行きな」
「じゃお言葉に甘えて、お先!」
レミアが瞬間移動で姿を消す。
ユウはじっとレミアのテレパシーを待つ。少し複雑な心境。そしてレミアからのテレパシー。
「ミノリさん、行ってきます」
「気をつけてね」
ユウが誰もいない浜茶屋の個室シャワールームに瞬間移動!
「え…」
「あ…」
狭い個室シャワールームにいたのはユウと…
「な、何で?」
[あ…う~んと、ご、ごめんなさい」
ユウと共にシャワールームの中にいたのは、何とサツキだった。ユウは本能的にシャワールームと外の時間を切り離し、外の時間を止める。
焦ってシャワールームの外に出ようとするサツキ
「あれ、ドアが…開かない!」
「落ち着いて。今、外は時間が止まってる。あなた、サツキよね」
穏やかにサツキに微笑みかけるユウ。
「あたしは誰もいないはずのここに瞬間移動したの。そしたらあなたがここにいて…」
「ユウさんごめんなさい! 私があなた…正確にはレルフィーナに『影縫いの術』を掛けたせい」
「『影縫いの術』? 何それ」
「えっと、私の影とあなたの影を縫い付けて、あなたがどこに行っても私が常に尾行できるようにするのが目的で…この前龍と遭遇したときに掛けたその術をまだ解いて無くて、こんな事に…」
「ふーん、凄く面白い術が使えるのね。くノ一ってみんなそうなの?」
「元々は尾行の技能の一つだけど、私のは…」
「OK、分かった。ねぇサツキ。あなたのその術、私に教えてもらっていい?」
「え?」
「私もそういう事ができるようになりたいの」
「…困ったな」
困惑するサツキ
「…わかった。じゃ、また今度の時にする。ここ狭いしね」
「…ごめんなさい。あと、今掛けている影縫いの術、一旦解きますね。[影解き]」
ユウとサツキの間を結んでいたうっすらとした影が消えるのをユウも目にした。
「でもあなたも任務の関係でこういう事したんでしょ。必要ならまた掛けていいよ」
「え…あ…ありがとうございます。…なんか調子狂っちゃうな」
思わず笑い出す2人。サツキはユウの懐の深さと優しさにただただ感心するばかり。
「じゃ、そろそろあたし着替えるんだけど…」
「あ、外に出ます」
「待ってサツキ。あなたはまだ外に出ないほうが良い」
「え?」
[外にはミズキがいる。今ここであなたが外に出たら、何が起きるか分からない。あたしが外に出てミズキと一緒に海岸に行くときにテレパシーで合図する。そしたらサツキは外に出て」
「ごめんなさい、気を使わせてしまって」
「いいのいいの。じゃ、申し訳ないんだけど…」
[私、目をしっかり瞑っています」
サツキはぎゅっと目を瞑った。
「ありがとう」
その瞬間、ユウの姿が水着姿に変身する。黒のスクール水着…かと思いきや、華やかなビキニ姿。もちろん日焼け止めなども同時に施されている。
「終わったよ」
「速っ!」
目を開けて驚くサツキ。
「さすが超夢現少女ですね」
「でも、あなたもこういう変身、忍術でパッとできたりするの?」
「…一応」
少し顔を背けるサツキ。穏やかに微笑むユウ。
ユウは外の時間停止を解除した。これでシャワールームと外の時間がつながり外に出られる。
「それじゃあたし出るね。必ず連絡する!」
そう言ってユウがシャワールームの外に出てドアを閉める。外には水着姿のミズキとレミアが待ち構えていた。
「ユウ姉、スクール水着じゃ無い!」
「騙したのね!」
「てへっ★」
「じゃあ海に行こう!」
3人は笑いながら海岸へと歩いて行った。超夢現体の能力のお陰で、強烈に焼けた砂の上を歩いても平気だ。
その背後で水着姿のサツキがシャワールームから姿を現した。任務とは言え、ユウから一定の理解を得られたことでサツキには少し余裕の表情が浮かんでいた。
3人は海に入り、まずは浅瀬で無邪気に遊ぶ。
少しずつ沖へと進み首近くまで海面に浸ったあたりで、ミズキが浜辺にいるサツキの姿に気づく。
「ちっ…。あのくノ一こんなところまで…。ねぇ、ユウ姉、れーちゃん。みんなで人魚に変身して、もっと沖の海中散歩しない?」
「え?」
「人魚に?」
「そう。今後水中を高速移動しなきゃいけないことも出てくるでしょ。その訓練も兼ねて…」
戸惑うユウ。ミズキがサツキの監視を巻こうとしている魂胆は見え見え。
「面白そう! あたしやってみる!」
早速レミアが人魚に変身。
「決まりね!」
次いでミズキも人魚姿に。
「ゆうちゃんもほら!」
レミアに促されて少し戸惑うユウ。
「まだあのくノ一のこと気にしてるの? あんなのほっときな!」
ミズキの口調が少し強くなる。
「わかった」
意を決してユウも人魚姿に変身。と同時に…。
{サツキごめん、あたし達3人、人魚に変身して沖まで水中散歩に行く}
ユウはこっそりサツキにテレパシーで伝えた。
<ユウさんサンキュ!>
3人が水の中に姿を消したのを確認すると同時にサツキも海に向かって駆けだした。やがて泳ぎ出す。そして…。
[変化!]
、見る見るうちにサツキの身体が人魚の姿に変わっていく。
[心眼]
サツキの目が金色に光り、遠く離れて既に見えなくなっている筈の3人の人魚の姿を捉えた。
<『本物』の泳ぎ…舐めんなね>
サツキは一気に泳ぎを加速した!
一方のユウ達は、沖合で優雅に水中散歩を楽しむ。
{人魚姿だと泳ぐの楽だよね、ミズキ}
{それにさ、泳ぐのめっちゃ速く泳げるもんね。…ユウ姉、早くおいでよ}
{う、うん…}
レミアとミズキについていくユウ。まだ一人置いていったサツキのことが気に掛かっている。
{れーちゃん、ユウ姉。もうちょっとペース上げてみよう!}
サツキが一段泳ぎのペースを上げる。
{待って待って~}
慌てて後を追うレミア。
<…仕方ないか>
ユウもついていく。ふとユウが右の方を見たとき…
<あれ?>
違和感のある魚影。距離としては結構離れているだろうか。それでもかなりのスピードで泳いでいる。
<あんなに速く、しかも単独で泳ぐ魚…イルカか何かかな?>
ユウは自分の視覚能力を少し引き上げてみた。
<え、うそ?>
見えたのは人魚になったサツキ。しかもその泳ぎは半端なく速い!
{ミズキ、れーちゃん、右、右の方見て!}
{え?}
{何?}
サツキはあっという間にミズキの横まで進んできた。ただ距離はまだ結構離れている。このままミズキをぶち抜こうかという勢い!
{何であいつまで人魚に変身できるのよ! やっぱり能力者じゃん!}
サツキが左に90度方向を変える。
{ちょ、ちょっと待ってぇ}
慌ててレミアも左折。
<そこまで意地にならなくても…>
渋々ユウも後を追う。
しかしサツキの泳ぎの能力は3人の想定をさらに上回っていた。大回りに方向を変えながらさらに速度を上げ、ついには3人の進行方向の先に出てきたのだ!
さすがにミズキも泳ぐのを止める。ゆっくりとサツキのほうに近づいてくるサツキ。ユウとレミアもサツキの側に寄る。この距離なら、通常のテレパシーでもたぶん通じるだろう。
(な、何よ! 一体何なの!)
怒りの表情のミズキ
(これ以上進むとあなたたち、特にユウさんとレミアさん、マズいことになるよ)
サツキからのテレパシー。
(何? 脅し?)
さらに苛立つミズキ
(ミズキさん、あなたアンドロイドでしょ。今の現在位置ちゃんと捕捉してる?)
(え?)
(水中だとGPS電波届きにくいよね。私の能力だと、たぶんもう少しで特異点の境界近くだよ)
特異点の外に出てしまったら、ユウとレミアは超夢現少女でいられなくなる。ミズキも超夢現体が休眠状態に陥る。
(私には海中でも超音波で自分の居場所をおおよそ掴む能力があるの。何しろ本物の半魚人の身体をこの身体に練り込まれちゃったから…)
(…)
絶句するミズキ。ユウはあらゆる方法で現在位置を確認できるように、自分にも能力を付与してみた。
(…ほんとだ。あともうちょっとで…)
(ねぇ、サツキさんだっけ。あなた明らかに能力者よね。そんなあなたが『国際未確認生命体研究財団』にいるの、おかしくない? あなただってほぼ『未確認生命体』じゃないの。あなたはむしろ、私達の側に来るべきなんじゃなくて?)
(…私が今の組織に入ったのは、そもそもはスカウトされての事なんだけど、『超夢現体』っていうのを心のない宇宙人みたいなものだと思ってたの。でも色々調べていく中で、それが違うって分かった。特にレルフィーナさんやユウさんに出会って、私のイメージは変わった。ユウさんは私に『友達だよ』って言ってくれた…。まるで女神様のよう)
(いや、女神様だなんて、そんな事…)
(ユウ姉の魅力に気がついちゃったんだね? わかるわかる。 …で、向こうの組織抜けて、うちの組織に来る?)
サツキがニヤニヤしながらサツキの方を見る。
(…それはもうちょっと待ってください。うちの組織も今後変化がありそうなんで…)
(そう? じゃあ、向こうの組織抜けたら教えてね。うちの組織に取り込めるか掛け合ってあげるから)
さすがにそれにはサツキは応えなかった。
(じゃ、私、帰ります)
サツキは身体を翻すと海水浴場の方へ凄いスピードで泳いでいった。
{ところでユウ姉、サツキさんを呼び寄せたの、あなたでしょ}
ミズキがユウに詰め寄る。
{…うん}
{やっぱり女神様の仕業だったのね}
{ミズキ、あたし達も帰ろう}
レミアがミズキを誘う。
{やれやれ、女神様は本当に困った人です}
微笑みながらミズキとレミアが海水浴場の方へと泳ぎ始める。
{ちょっとぉ…そんな言い方って…}
困惑しながらもミズキとレミアの後を追うユウ。




