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Phase 10. 闇を抱きしめて

※挿絵はAI画像生成システム「imageFX」で生成した物を主に使用しております。

※カッコ記号の使い分けを行う事で、そのゾーニングをより明確にしています。

 基本的なゾーニングの区分は以下の通りとなります。。

 「」…[open]会話

 []…[semi-open]暗示

 ()…[open]テレパシー

 {}…[closed]テレパシー(秘話)

 <>…[closed]思考

 ≪≫…[closed]インナーセルフのリアクション

「へぇ…、呪いを破れるようになったの」

「この2人、再融合して能力を向上させてるよ」

「レルフィーナの中にはレミアとミズキとマナ。ミズキの中にはマナとユウとレミア…。随分知恵を付けたものね」

 その瞬間、レルフィーナがミズキの念力で弾き飛ばされる。

{夢封じの檻が来る!}

 互いに離れたレルフィーナとミズキ。しかし2人の頭上に…。

{しまった!}

 ガーン!

 レルフィーナとミズキそれぞれがいた場所に『夢封じの檻』が落ちた。

「なに!」

 2つの檻の中には誰もいない。

「!」

 上空に瞬間移動したレルフィーナとミズキ。レルフィーナは1人のダークネス・レルフィーナに右手を突き出し、ミズキは目に仕込まれているレーザー銃のセーフティを解除。

 パチン!

 ミズキ側にいるダークネスが指を鳴らした瞬間、彼女とレルフィーナの位置が瞬時に入れ替+わる。

「ちぃ…」

 レルフィーナの放った雷撃がミズキに向かう。ミズキはレーザー発射を間際で取りやめ瞬間移動で雷撃を回避。

「ごめ…」

 その時レルフィーナを襲う嵐のように凄まじい数の打撃。ダークネスの仕業。時間圧縮によって1秒も経たないうちに無数の打撃で満身創痍となり隔離空間の床に叩きつけられた。

「レルさん!」

「呼んだ?」

 夢封じの檻の中にいるダークネス。

 パチン!

 夢封じの檻の中にいたダークネスとミズキが入れ替わる。

「ちっ…」

 入れ替わってダークネスに向かって、両目から高出力レーザー光線を発射するミズキ。レーザー光線はダークネスに…

 ビッ! ジリジリジリジリ…

 ミズキと入れ替わったダークネスの右手がミズキのレーザー光線を受け止める。焼け焦げる音と臭い…。

「で?」

 その瞬間…。

「ぎゃあああっ!」

 ミズキを捕らえた『夢封じの檻』が猛烈な電撃をミズキの身体全身に放つ。身体のあちこちが焼け焦げ、檻の中で崩れ落ちるミズキ。

<『夢封じの檻』の中では無効化もキャンセル…意外とダメージを取られた>

 その時…。

「反転!」

 バリバリバリバリバリ!

 檻の外に瞬間移動し柵を掴むレルフィーナ、持てる能力の精一杯を、ミズキを捕らえた檻全体に流し込む。膨大なエネルギーで黒い檻が激しく白く光り、組成が『夢封じ』から『魔封じ』へ強引に反転していく。シャイニングでなければできなかった芸当だ。

「パーフェクト・ヒーリング!」

 レルフィーナとミズキの身体が激しく光り輝き、傷ついた身体がレルフィーナの力であっという間に回復した。

「レルさん、サンキュ!」

 ミズキは檻の外にいるダークネスの1人に視線を向ける。

 パチン!

 ミズキが指を鳴らした瞬間、ミズキとダークネスが入れ替わった!

「まず1人!」

 もう一人のダークネスを探すレルフィーナとミズキ。しかしどこにもいない。

「レルさんヤバい!」

 ミズキがレルフィーナの身体をぐいと引き寄せる。

「どうしたの」

『ダークネスが…」

 バリーン! 先程レルフィーナが組成反転させた『魔封じの檻』が粉々に砕け散る。中にいたダークネスと外にいたダークネスが力を合わせて檻を破壊したのだ。

「スーパーインポーズ・インクルージョン!」

 1人のダークネスがもう一人のダークネスを取り込む。今までの分身取込なら力の量に変化はないはずだが…

「力を倍にするなんてズルい…。あれ? レルさん?」

「う、動けない。金縛り…」

 ミズキが見た未来がそのまま再現されている。

≪私達もダークネスみたいに強化取り込みする成功率は79%≫

「未来では100%! レルさん、取り込むよ!」

「お願い…」

 ミズキとレルフィーナの身体が光のバリアで包まれ、2人の身体が完全融合する。顔や髪型はレルフィーナ。服装はミズキの純白スーツ。ミズキのアンドロイドシステムがレルフィーナと統合され、アンドロイド化したレルフィーナが生まれる。超夢現体の体内密度はさらに増加し、能力値はレルフィーナとミズキのそれぞれを合算し、さらに増強された。

 光のバリアが消えた瞬間、ダークネスが放った能力剥奪の呪いがレルフィーナを襲う。

「そんなもの!」

 レルフィーナはそれを難なく破壊。2人バラバラのままだったら、ほぼ確実に呪いをまともに食らっていただろう。

「レル・スパード!」

 レルフィーナは右手に光の剣を、ダークネスも右手に闇の剣を手にし、相手に向かって突進!

 バシーン!

 両者の剣がぶつかり合い、激しく火花を散らす。その直後に両者の剣がぐにゃりと曲がってまるで生き物のようにもつれ合いを繰り返す。2人とも左手から光と闇の剣を出し、そちらも生き物のようにもつれ合いを繰り返した。

「同じ武器じゃ…」

「勝てないっ!」

レルフィーナは至近距離で目からレーザー光線を発射! しかしダークネスが念力でそのレーザー光線を顔面の手前で完全に受け止める。

「その能力、もらった!」

 ダークネスの目とおぼしき箇所から黒い光がレルフィーナの顔に向かって飛ぶ! しかしレルフィーナもダークネスと同じく念力でその光線を受け止めた。

 レルフィーナが口から火炎や冷凍風を吐けば、ダークネスは口から猛毒ガスや溶解液の霧を吐く。さらに互いに瞬間移動を繰り返したり時間操作を行ったりして攻撃を仕掛けたりするが、どちらも念力で攻撃を完全に防ぎ、ダメージを与えるには至らない。能力を使って互いの身体を内部から破壊しようと試みても、全て無駄な力の浪費に終わってしまう。

 ダークネスから大きく離れた場所に瞬間移動したところでレルフィーナが時間を止める。

<あたしの中にいるみんな、ちょっとあたしの話を聞いて>

≪なに? ゆうちゃん≫

≪どうしたの、ユウ姉≫

<あたしに考えがある。あたしだけを分離して>

≪待って! ゆうちゃん。それはあまりに危険よ≫

≪一瞬でダークネスに殺されてしまうよ。れーちゃんとあたしとマナでこの身体は維持できるけど、ユウ姉が単独で出る意味は…≫

<あたし気づいたの。ダークネスの根っこにいるのは、闇を抱えたあたし。ジェノはあたしの心の闇を増幅させてダークネスを作った。あたし聞こえたの、ダークネスの心の奥から聞こえるあたしの声が…>

≪…ゆうちゃん≫

<あたしは単独でダークネスに向き合う。彼女の闇を打ち消す>

≪そんな事無理だって、闇に呑まれて死んじゃうよ。ゆうちゃんがいなくなるなんて、あたし絶対耐えられない!≫

≪ユウ姉…≫

<ダークネスを生み出した責任はあたしにある。だからあたしは責任を取るの>

≪ユウ姉、それは考えすぎだよ。そんな責任、ユウ姉には無いよ≫

<じゃあこのまま永遠に彼女との戦いを繰り返すの? 何か打開策はあるの?>

≪…私は、ユウさんを信用してみたいと思います≫

≪マナ? どうして?≫

≪現在、ユウさんの精神エネルギーの波形に極めて大きな『スパイク波形』が検出されています≫

≪スパイク波形? それ何?≫

≪トゲのような波のことよね≫

≪ミズキの言う通りです。精神エネルギーは通常一定のリズムで波打っています。そして普通の人間ではこのスパイク波形が出ることは、まずありません≫

<その波形があたしから出ていると?>

≪このスパイク波形は、別名『ミラクル・スパイク』とも呼ばれている物で、超夢現体を持つミズキやレルフィーナさんも強い『ミラクル・スパイク』を出しています。『ミラクル・スパイク』は超能力や魔法を使える人間が特徴的に出す波形です≫

≪じゃあそれを出す人は能力者や魔法使いの可能性が高いってこと?≫

≪そうですレミアさん。実はレルフィーナになる前のレミアさんも『ミラクル・スパイク』が比較的大きく出ていました≫

≪…まあ、テレパシー使えて空中浮遊できるから…でしょうね≫

≪実はユウさんからも、普段は微弱な『ミラクル・スパイク』を出していました≫

<…あたしにレミアが見えたのもそのせい?>

≪そうかもしれません。ところがユウさんの『ミラクル・スパイク』の出方は非常に特殊なんです。≫

<特殊?>

≪『ミラクル・スパイク』は通常の場合、出方が一定で大きく変動する事は有りません。しかしユウさんは状況によって出方が極端に変わるのです。ユウさんはある時とても強い『ミラクル・スパイク』を出した事がありました。最初にレルフィーナに変身する直前です≫

<…>

≪そして今、驚くべき事にユウさんの精神エネルギーから極めて大きな『ミラクル・スパイク』が出ているのです。今のスパイクの大きさは…信じられないことですが、今のレルフィーナ並み…いやそれ以上なのです…。私は今のユウさんが、未知の奇跡を起こす確率を99%と算出しました≫

≪ゆうちゃん、何か実感あるの?≫

<その『ミラクル・スパイク』の事はよく判らない。でも『何かが起きそうな不思議な予感』はしてる>

≪私もさっき未来透視で見えた。マナが言うことを、信じてみようと思う。れーちゃんは?≫

≪わかんない、わかんないよ…≫

<れーちゃん…>

≪…でも、あたしがゆうちゃんを信じてあげないと…なんだよね≫

≪れーちゃんの判断はれーちゃんの物。私達に指図する資格は無い≫

≪…分かった。とても不安。でも、信じるよ≫

<ありがとう、みんな…>

≪それじゃ準備するね。ユウ姉が外に出たら、フロントは私ね。インナーセルフはマナとれーちゃんでお願い。シャイニング・スーパー・ミズキよ≫

≪そのネーミング、ダサ…≫

≪えーっ、カッコいいじゃん。れーちゃん酷い≫

≪シャイニング・ミレズミキアでどうですか?≫

<マナまで…>

≪もう、あたしの名前要らないから…。シャイニング・ミズキmark2でいいよ≫

≪さすがれーちゃん、それ採用!≫

≪いよいよ何かのロボットアニメみたいですね≫

≪だって私アンドロイドだし≫

≪私はAIですし…≫

<はいはいはい、この漫才終了! じゃ、あたしは外に出る準備はできた。時間停止解除後、あたしを外に放り出して>

≪わかった。ユウ姉、死なないでね。ヤバい状況になったら割って入る。でも今の未来透視だと、きっと成功する。信じてる。じゃ、時間停止解除するよ、せーの!≫

 時間停止解除とともにレルフィーナの中からユウが外に出る。そしてレルフィーナの姿はミズキの姿に変身。ユウから少し距離を置いた後方に瞬間移動した。

「ユウ…だと? どういうつもりだ?」

 ユウの目の前に瞬間移動するダークネス。凄まじい威圧感がユウを襲う。

「隔離」

 ミズキを排除し、ユウとダークネスだけを単独の隔離空間で包んだ。

「これで邪魔者はいなくなった。あなたも終わりよ」

 ユウはゆっくりと両腕を広げる。

「ダークネス・レルフィーナ…いや、あたしの闇の姿」

「ああ、そうだ。むしろお前の本当の姿と言っていい」

 ゴクリとつばを飲むユウ。

「お前が上辺でどれだけ『良い人』を演じようが、その裏で人を妬み、人を恨み、人を殺め、自分をも殺めたいと望むおぞましい心、それがあたしだ。あたしは魔の力によって解き放たれ自由になった。もうお前に圧迫され自由を奪われるのは嫌。お前の『良い子』の演技もうんざり」

[でもあなたはあたしを傷つけられない。あたしを永遠の眠りにつかせることもできない。あたしの記憶を奪ったり、あたしを別の物に変えたりすることもできない]

「何の力も無いお前が何を言う。…よく恥ずかしげも無く、そんな事が言えるな。お前などあたしの力の前では…」

 ダークネスがユウの胸ぐらを掴もうとする。しかしユウの身体の前に何か見えない力が働いて、ダークネスはユウの胸ぐらまで手が届かない。

「なん…だと…」

 ダークネス、拳を下ろす。

「お前…何をした。何の力も無い、ただの人間が…」

「あたしは何もしていない」

「そうか…暗示を使ったな。でもあたしが人間ごときの暗示に縛られるはずが無い!」

 今度は口から凄まじい火炎を吐くダークネス。しかしその火炎もユウの身体を覆う見えない力で防がれ、ユウの身体を焦がすことはできない。

「馬鹿な…。これでどうだ!」

 今度はユウの体内に念力を集中し、ユウを体内から破裂させようとする。しかしそれでも全く効果がない。

「…何故だ。何故あたしの力が通じない!」

 明らかにうろたえる様子を見せるダークネス。

「ダークネス、あたしはあなたを拒むことを止める。闇のあなたも結局はあたし。あなたを仲間はずれにはしない。あなたはあたしにとって必要な存在。お願い、あたしの中に帰ってきて…」

「仲間…だと? 笑わせるな! 今まであたしを散々排除しようとしてきたじゃないか! 今もあたしに暗示を掛けて攻撃させないようにしているじゃないか」

「…そうよね。ごめんなさい。でもあたし、その間違いに気づいたの。『闇』の部分も、あたしなんだって」

「ふざけるな! あたしはその『良い子ちゃん』のお前が大嫌いなんだ! 自分を偽り仮面を被るお前が許せないんだ!」

[あなたに掛けた暗示を取り消します]

 ユウは意を決して暗示を解いた。

「そうだ、それでいい」

 ダークネスはユウの胸ぐらを掴む。

「今までの積年の恨み…」

 その時、ユウがダークネスに抱きつく。

「な…」

「あたしの中に帰ってきて…」

「離せ! 離れろ!」

 その瞬間、ユウの身体が激しく光り、ダークネスもろともその光で包み込む。

「図ったな!」

「あたしがズルいって一番よく知ってるの、あなただよね」

「まさか『魔の力』を食らって『魔』に染まる気か?」

「ダークネス、あなたはちっとも『闇』じゃないよ。あなたが得た『魔の力』はあたしが何とかする。でも多分『魔』には染まらない。もし『魔』に染まってしまったら、多分れーちゃんとお別れしなきゃいけないだろうから」

「そう上手くいくかな…」

 そう言い残してダークネスはユウの中に取り込まれていく。

「!」

 身体の中を走る強烈な悪寒。立っていられなくなり崩れ落ちるユウ。やがてそれでも辛くなり、ついに倒れる。

≪よこせ…。お前の身体をよこせ…≫

 ユウの頭の中で響く怨念に満ちた声…。

<これが『魔の力』なの…。嫌、絶対嫌!>

 やがてユウの全身を言いようのない激しい痛みが襲い始める。

「いたたたた…。何なの。何なのこれ!」

 激しくのたうち回るユウ。

≪お前の身体をよこせ…。お前の力をよこせ…。楽になりたいなら、全てをよこせ…≫

 ユウは悟った。この痛みは『魔の力』に対してユウの身体が激しく抵抗しているのだと…。

<負けない…。負けるもんか…>

 しかしそれでも痛みは引かないどころか、どんどん強くなっていく。

「いやあああっ!」

 痛みに耐え切れず絶叫してしまうユウ。

<このままじゃ…意識が飛んじゃう…。意識が飛んだら…乗っ取られる!>

 その時、ユウの頭にあるひらめきが…。

<隔離解除! 助けて…>

 ダークネスとユウを隔離していた空間が崩壊。

「ユウ姉!」

 ミズキが駆け寄る。

(助けて… ダークネスを取り込んだ。でも…)

(≪『魔の力』に身体を奪われそうなんだよ。ミズキ!≫)

「そんなの助けるしかないっしょ!」

 ミズキがユウの身体に両手をかざす。

「いっけぇーっ!」

 ミズキの身体が激しく光り、力をユウに注入!

「あああああっ!」

 さらに激しく絶叫するユウ。ユウの胸から何かが姿を現す。

「こいつか!」

 ユウの胸から現れた物はやがて黒い塊となる。そしてコトンと床に落ちた。ビー玉に似た黒い玉。その音を合図にユウが気を失う。

 「ユウ姉!」

(≪その玉を今すぐ隔離して!≫)

 レミアの指示に従い、ミズキは黒い玉だけを隔離空間に閉じ込めた。

「ユウ姉!」

(≪意識を失っていますが、ユウさんは生きています。精神エネルギーも平常値に戻りました≫)

(≪今ゆうちゃんの記憶を読んでる。『魔の力』には支配されずに済んだみたい≫)

「…てことは、これがダークネスの体内にあった『魔の力』を凝縮したものね。魔界に送り返す」

 ミズキは玉を閉じ込めていた隔離空間を空間転移ゲートに変換し、玉を魔界に送り返した。

「それにしても、ユウ姉は本当にダークネスを取り込んじゃったんだね」

≪やはりユウさんは、本物の『魔法少女』なのかも知れませんね≫

「ユウ姉はそう簡単に目覚めそうもなさそう」

≪ミズキ、隔離解除してみんなでミズキの部屋に戻ろう。ゆうちゃんはこのまま寝かせよう≫

<れーちゃんはどうする?>

≪今あたしが外に出ちゃうと、融合前の素のレミアに戻っちゃって色々不便だから、ゆうちゃんが目覚めるまでミズキの中にいても良い? ゆうちゃんが目覚めたら、そっちに融合し直すから≫

<って事は、ユウ姉とれーちゃんの生融合バンクが見られるって事?>

≪あたしらは見世物かいっ!≫

<だって生融合見たことないんだもん>

≪融合バンク、録画させてね。貴重な映像資料になりますから≫

≪マナ、あなたまで…。もう勝手にして!≫

「それじゃ隔離解除と同時に瞬間移動ね」


「…う、うん」

 照明の消えた部屋に差し込む朝日。その朝日で優しく照らされて目覚めるユウ。

「ここは…」

 身体を起こして周囲を見回す。ミズキの部屋。昨日の夜ミズキが出現させたキングサイズのベッドで隣にミズキが穏やかな顔でスヤスヤ眠っている。夏用のケットを少しめくると見える白いスーツ。ほんのりミズキの身体が光を帯びている様にも見える。

<…もしかして昨日の夜のまま眠ったのかな? って事は多分ミズキの中にれーちゃんもいるのね。…にしても>

 持ってきていた鞄の中に入っているスマホを手に取る。時計を見ると朝4時半。

 スマホを鞄の脇に置き、あらためて床につくユウ。

<勿体無いことしちゃったな。せっかく3人で夜通しおしゃべりしたかったのに…>

 深く溜息をつくユウ。そして目を閉じる。

<時間、巻き戻ってくれないかな…>


 しばらくしてまた目を開けるユウ。

<部屋が…明るい?>

 部屋の照明が点灯している。

<やば。二度寝しちゃった…>

 身体を起こすユウ。

「あ、目が覚めたの? 身体の具合はどう?」

 ミズキの声。ミズキはキングサイズのベッドでユウの隣に寝ているが、目は開いている。

「おはよう、ミズキ」

「おはようじゃないよ。まだ夜だよ」

「え?」

 窓の外を見る。真っ暗。そして持ってきた鞄の脇に置いてあるスマホを手に取る。時計を見ると23時05分。

「あれ?」

「どうしたの?」

 ミズキも身体を起こす。

「あたし、さっき起きたとき朝4時半で、ミズキと夜通しおしゃべりできなくて損したな~って思って、仕方なくもう一度寝たら今の時間で…」

「ユウ姉、夢でも見てたんじゃないの?」

 クスクス笑うミズキ。

(≪ミズキ、大変です≫)

「どうしたの? マナ」

(≪信じられないことですが、先程時間が巻き戻された形跡を確認しました≫)

「え?」

(≪巻き戻される前の時間は朝4時半。ユウさんが起きたと主張する時間と一致します≫)

「それ…どういうこと?」

 戸惑うミズキ。

「そういえば…」

 スマホを手に記憶を辿るユウ。

「そういえば朝起きた時スマホは鞄の中に入っていた。時間を確認して、スマホを鞄の脇に置いて、そして眠りについて…。ねぇ、ミズキ。あなたあたしのスマホに触ってない?」

「ううん、今日は一度も触ってないよ」

 ミズキの家に来たときスマホは鞄の中にしまっていた。だとすると…。

(≪私の予想ですが、もしかするとユウさんがユウさん自身の能力を使って時間を巻き戻したのかもしれません≫)

「あ、あたしが?」

(≪先程ユウさんが目覚める直前、あなたの精神エネルギーの『ミラクル・スパイク』が極端に跳ね上がったことを確認しています≫)

「今は?」

(≪平常値に戻っています≫)

「…」

(≪ユウさん、あなたはどうやら、本物の『魔法少女』として覚醒してしまったようです≫)

「ええええっ!」

「ユウ姉、声が大きい」

 口の前に人差し指を立てるミズキ。

「ご、ごめん…」

 申し訳なさそうな表情をするユウ。

「でもあたし、自分がまともに制御できないのに能力とか魔法とか使えるようになるなんて、超困るんだけど…」

「でもダークネスを取り込んだときはある程度制御できてたんじゃないの?」

「制御も何も無いよ。ただの勢いだったんだから…」

 困惑するユウ。

(≪ゆうちゃん、夢が叶ったね。良かったね、『魔法少女』になれて…≫)

「れーちゃん? …ありがとう」

(≪じゃああたしと融合しなくても大丈夫かな?≫)

 その言葉に驚くユウ。

「だめ! れーちゃんいなくちゃダメ! あたしこんな危なっかしい能力と付き合うんなら、れーちゃんとずっと一緒にいたい!」

(≪冗談だよ。ミズキ、あたし外に出る≫)

「わかった。楽しかったよ」

 ミズキの身体からレミアが分離。ミズキのスーツは黒色に変わり、身体を覆っていた光は消えた。

(ゆうちゃん、融合するよ。準備は良い?)

「ちょっと待ったーっ! ユウ姉立って! あたし映像録画するから位置を変えるね」

 ミズキ、瞬間移動でユウの真横から少し離れた場所に陣取る。

(≪遠隔操作カメラ展開!≫)

 ユウの周囲に幾つも、宙に浮かぶ小さなカメラが配置される。

「準備OK! カッコいい融合バンク見せてね」

「ですって」

(それじゃ、いきますか)

 微笑むレミア。

(いっくよー!)

 ユウと向き合う小さなレミア、ユウの胸の中央に飛び込む!

 瞬間!

 パァァァァァッ!

 ユウとレミアの身体が目も眩むような光に包まれ、それと同時に2人の身体のありとあらゆる細胞が震え、まるで歌い出すかのように柔らかで高く美しい音を奏で始める。

 二人が奏でる細胞の振動音はハヤトにも聞こえた。

 光の中で、レミアの身体がユウの身体に溶けていく。互いの身体が細胞単位で融合し、細胞の核も1つに融合する。二人の遺伝子は結合し組み替えられ、全く新たな生命として人の形になっていく。融合しなかった細胞や着ていた服も元素レベルで再組成され、融合した身体の表面を覆う。それは新たな生命が身にまとうコスチュームのように機能し始める。

 藍色のロングヘア、髪に金色のカチューシャ、緑色の瞳、肘までを覆う白いグローブ、胸に大きな赤いリボン、緑色のベルト。橙色の膝丈スカート、紫のロングブーツ、そして白のボディースーツ。首から両手の中指先まで細い虹色のラインが伸びる。胸のリボンの中心には赤、橙、黄、緑、青、藍、そして紫の玉があしらたブローチが据えられる。

そして光が消えるとともに新たな生命がその姿をあらわにした。

「続いて…いくよ」

 レルフィーナが分身を生成。生み出された分身は姿を変え、人間と同じサイズのレミアに変化する。分身を生み出した側はユウの姿に変身。

「以上!」

 ミズキの方を向いてウィンクするユウ。

「終了!」

 ミズキの方を向いてウィンクするレミア。

「凄い凄い、超かっこいい~!」

 力いっぱい拍手するミズキ。

(≪大変貴重な物を見せていただきありがとうございました。今後の研究に有効活用させていただきます≫)

それから4人は夜通しで楽しいガールズトークを展開。結果4人が眠りについたのは外が白み始めた4時頃になったが、そこで時間を止めて熟睡。翌朝7時に無事起床する。

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