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12話 初めての映画の余韻

映画が終わり、壮大なBGMとともにエンドロールが流れる。


 画面には、これまでの興奮を締めくくるように、関わった人々の名前が次々と映し出されていく。


 「………」


 隣を見ると、はるくんはじっと画面を見つめていた。


 目をキラキラと輝かせて、完全に映画の余韻に浸っている。


 —— はるくんの反応が、まぶしい……


 ゆきちゃんは、こっそりそんなことを思う。


 映画の最中も、はるくんの表情が気になって何度か横目でチラ見していた。


 シリアスな場面では、手に汗を握るように緊張していたし、コミカルなシーンでは、楽しそうに目を細めて笑っていた。


 登場人物がピンチになると、本気でハラハラして息を呑み、感動的な場面では、じっと画面に引き込まれていた。


 —— すごい、こんなに素直に感情が出るんだ……


 まるで映画の中に入り込んだかのように、ひとつひとつの場面を全力で楽しんでいたはるくん。


 そんな彼の様子を見て、ゆきちゃんは (はるくん、映画楽しんでくれたみたいでよかった……!) と思いながら、そっと声をかけた。


 「…はるくん、どうだった?」


 そわそわしながら、期待混じりの表情で尋ねる。


 すると、はるくんはピクリと反応し、くるっとゆきちゃんの方を向いた。


 「……すごい…! すごかった…!!」


 ぱぁっと顔を輝かせたかと思うと、その勢いのままゆきちゃんにグイッと詰め寄る。


 「ゆきちゃん!! バック・トゥ・ザ・フューチャー!! すごく面白いね!!!」


 —— えっ!? ち、近い!!


 突然の距離の詰め方に、ゆきちゃんは内心で小さく叫び、思わずのけ反る。


 顔が、近い。


 予想以上に、はるくんの熱量がすごい。


 さっきまでのキラキラした目が、さらに輝きを増している。


 完全に映画の興奮が冷めきっていない様子だ。


 はるくんは、そんなゆきちゃんの動揺にも気づかず、無邪気に続ける。


 「…僕、知識ではあらすじを知っていたはずなのに、…全然違った!!」


 「自分の目で見ると、こんなに違うんだね…!!」


 キラキラと瞳を輝かせ、勢いそのままに、さらにグイッと距離を詰める。


 —— わ、わわわ!? さっきよりもっと近い!!!


 勢いのまま詰め寄るはるくんに、ゆきちゃんは完全に押され気味。


 (そ、そんなに感動したのは嬉しいけど……! 物理的に近いよ!!)


 とうとう、ゆきちゃんは少し後ろに後ずさりながら、顔を赤くしてしまう。


 そこで、ようやくはるくんはハッとした。


 「わ! ……ご、ごめんね!!」


 急に顔を赤らめ、慌てて元の位置に戻る。


 その様子を見て、ゆきちゃんも少し苦笑いしながら、そっと自分の位置を戻した。


 少しだけ落ち着きを取り戻したはるくんは、まだ興奮を抑えきれないまま、ふっと小さく呟く。


 「…この映画が、ゆきちゃんの“一番”なんだね…!!」


 そして、改めてじわじわと湧き上がる感動を噛みしめるように、ぽつりと続けた。


 「僕、ずっとワクワクしてて、あっという間に終わっちゃった……!」


 そう言いながら、満足そうに目を細めるはるくん。


 —— その言葉に、ゆきちゃんは心の中で 「やった…!」 と小さくガッツポーズする。


 「ね! 本当、神作なの!! 面白すぎて、いつもつい3部作一気に見ちゃうんだよね〜!」


 自分の大好きな映画が、はるくんにも伝わったことが嬉しくて、ついテンションが上がるゆきちゃん。


 しかし、その瞬間——


 はるくんの表情が、ぴたりと固まった。


 「……3部作……。」


 まるで、頭の中で何かを整理するように、ゆっくりとその言葉を復唱する。


 その瞳が、何かを探すように宙をさまよう。


 ゆきちゃんは、そんなはるくんを不思議そうに見守る。


 「……そっか、バック・トゥ・ザ・フューチャーは、3部作……。」


 ぽつりと、独り言のように呟いたはるくんは、ゆっくりと目の焦点を合わせると、ふわりとした口調で言葉を続けた。


 「見たいな……」


 それは、無意識のうちにこぼれ落ちた本音だった。


 —— あっ……


 はるくんは、口にしてからようやく気づき、慌てて自分の口元を押さえる。


 (言っちゃった……!)


 ちょっと困ったように、恥ずかしそうに頬を染めるはるくん。


 そんな彼の姿を見たゆきちゃんは、ふっと優しく微笑んだ。


 そして、少し間を置いて、明るい声で言う。


 「……はるくん!」


 はるくんが、びくっと顔を上げる。


 「……もちろん、一気見するでしょ?」


 にんまりと笑いながら、まるで 「次も見るに決まってるでしょ?」 と言わんばかりに、ゆきちゃんはちょっといたずらっぽく楽しそうに微笑んで、ぱちん、と不器用なウィンクをした。


 その瞬間——


 はるくんの顔が、ぱぁっと嬉しそうに輝いた。


 「うん! もちろん!! 一気見するよ!!」


 全身で喜びを表しながら、元気いっぱいに返事をする。


 はるくんのテンションは、まだまだ冷めそうにない。


 こうして、2人の 「オールナイト映画鑑賞会」 は、まだまだ続くのだった。


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