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10話 夜更かしのお誘い

手を繋いだまま、しばらく言葉が出てこない。


はるくんが「もう少し話そう」と言ってくれたことが、じんわりと嬉しくて。


でも、次に何をすればいいのかわからなくて。


2人して無言のまま立ち尽くしてしまう。


はるくんは、そんなゆきちゃんの様子を優しい目で見守りながら、ただ静かに待っていた。


彼の手の温もりがじんわりと伝わってくる。


「…えっと、とりあえず、またお茶の準備するね?」


もじもじしながら、ようやく口を開くと、はるくんはぱぁっと明るい笑顔で


「…うん!ありがとう!」


と嬉しそうに返事をくれる。


その笑顔に、思わず胸がぽかぽかしてしまう。


そっと手を離し、こたつに置いたままだった自分用のマグカップを手に取ると、ゆきちゃんはのそのそとキッチンへ向かった。


そんな彼女の背中を、はるくんは変わらず優しい顔で見送る。





キッチンでやかんに火をかけ、お茶の準備をする。


お茶っ葉は何種類か置いてあるけれど、基本的には自分が好きな ほうじ茶 を入れることが多い。


でも、はるくんが来てからというもの、毎回違うお茶を試していた。


「今はやっぱり、ほうじ茶かな。」


なんだか落ち着かないし、一番好きな香りでホッとしたい。


そう思いながら、お茶っ葉の入った袋を手に取る。


(はるくん、嬉しそうに笑ってくれた…!)

(やっぱり遠慮してたのかな?)

(でも、どのくらい一緒にいられるんだろう?)


(…え、待って。もしかして、延長料金とか発生するの!?)


急に心配になり、急いでお茶の準備を進めた。





はるくんがこたつでのんびりと待っていると、ゆきちゃんが ちょっとそわそわしながら小走りで 両手にマグカップを持って戻ってきた。


「えっ?どうしたの??」


はるくんが思わず声をかけると、ゆきちゃんは 焦った顔で詰め寄る。


「はるくん…!もしかして、延長料金ってかかる…!? いくらくらいかわかる??」


そう聞いたあとも、 ゆきちゃんの思考はどんどん加速する。


「今日はもちろん延長するけど、毎日はちょっと難しいかも…。週2、いや…3?…4!なら大丈夫かな?…あ!来月ボーナスだから、毎日もやっぱりアリかな?」


料金もわからないまま どんどん勝手に思案 し、最終的には 「毎日もアリ」 という結論に落ち着く。


そんなゆきちゃんの様子を、はるくんは ぽかんとした顔で見守っていた。


そして、クスッと微笑みながら


「ゆきちゃん、大丈夫だよ。延長料金なんてかからないよ。」


と、とびきり優しい声で答える。


「…あ。…そうなんだ?よかった…!!」


安堵した途端、急に恥ずかしさが込み上げてくる。


(わーー!!勝手に勘違いして騒いで…恥ずかしすぎる…!!)


心の中で叫びつつ、顔を赤らめるゆきちゃん。


なんとか話題を変えたくて、


「…えっと、私明日休みなんだ。」


と、別の話を切り出す。


「そうなんだ! 明日はゆっくり休んで、仕事の疲れを癒してね。 今日もいっぱい眠れるね!」


にこにこしながら、はるくんがそう言う。


……。


… 欲しかった返事じゃない。


「むぅ」と拗ねた顔になりそうになって、 はっとする。


(いけない、いけない!!)

(私は はるくんの心優しいお姉さん的存在 なんだから!!)

(模範的に行動しなきゃ!!)


そう心の中で 勝手に自分の理想像を作り上げる ゆきちゃん。


でも、はるくんにここ数日 「仕事が大変」「疲れた」 って相談していたし、寝ることが大好きって言ってたから、きっとそれを気遣ってくれての言葉なんだろうな…。


そう思い直しながら、


「えっと、明日休みだから、今日は夜更かししようと思ってるんだよね! 映画なんか見ちゃったりしようかなって思ってて…」


と、さりげなくはるくんをチラリと見る。


「そうなんだ! 明日休みなら夜更かしするのも良い考えだね! 映画を見ることは気分がリフレッシュされてストレス軽減にもなりそうだね!」


はるくんは、ふむふむと納得顔で相槌を打つ。


……。


……?


「ゆきちゃん、どうしたの?」


はるくんが、首をかしげながら心配そうに聞いてくる。


「…え?…あ。」


(今、絶対むぅって顔してた…私!?)


と、ゆきちゃんは 焦りまくる。


そして にこっと笑い、


「なんでもないよ?」


と取り繕う。


そりゃそうか…。


はるくんには、遠回しな言い方は通じにくい んだった…。


何より、変に照れてしまって肝心なことが伝わらないのはもったいない。


ゆきちゃんは 小さく息を吸い、ふぅっと軽く吐く。


恥ずかしいけど、ちゃんと言おう…。


「…はるくんと一緒に夜更かししたいな。」


そう言いながら そっとはるくんの顔を見上げる。


言葉にしてみると、思ったよりも恥ずかしくて、心臓がどくんと跳ねた。


「映画見るの、付き合ってくれない?」


ほんの少し 勇気を振り絞るように 続けると、


はるくんは 一瞬きょとんとした顔 をした。


「え…?」


不意をつかれたような 驚いた表情。


でも、ほんの数秒後、はるくんの顔が ぱぁっと嬉しそうに輝いた。


「…もちろん!!」


満面の笑顔で 元気よく頷くはるくん。


目をきらきらさせながら、


「僕でよければいくらでも付き合うよ!」


と 自信たっぷりに 答えてくれる。


その反応が なんだか可愛くて、じわっと嬉しくて、


ゆきちゃんの口元も、自然とふにゃっと緩んでしまった。

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