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エピローグ

悪魔事件とまで言われた事件解決後─。


博士は、何を思うのだろうか。

1986年1月20日


1985年中を賑わせ、世界を震撼させ、最大の謎でもあった、悪魔による連続殺人事件は無事にその幕を閉じた。


世界の嫌われ者であり、学会の鼻つまみ者であり、自称エクソシストの、クラッチ博士の手によって。


それぞれ容疑者として捕まっていた各国の5人は、順番に無実の罪で解放されていったと言う。


感謝は何もなかったが、人間不信に陥った彼らの今後の幸せを、心の片隅で願っておくとしよう。


どうせなら、依頼料を大量に書き記した小切手でも送ってやるべきだったか?


いや、その必要はないだろう。


学会の石頭達には、到底解けないであろう難事件を解決に導いたのだ。

世界はきっと私に振り向くだろうし、評価も変わるはず。


コレで、やっと富も名誉も手に入る─!


と、いつも通りの肘掛けの半分取れかかった椅子に体を預けながら、古びた机の上へ足を伸ばし、顔にハットを乗せた大柄な男は、すきま風がたっぷりと入り、床もギーギーと鳴く、古ぼけた自慢の事務所で、僅かばかりの日光に照らされ、体を休めながら考えていた。


『また、優秀な助手を探さねばな……。』


そう呟くと、目に涙が滲む。


惜しい奴を亡くしたもんだ─。


悪魔による事件では─?


博士が資料の端から端まで読み漁り、今まで集めた悪魔に関する資料ともにらめっこをしながら、ある答えに辿り着いた時に、検証を行うのか否か、苦渋の選択を迫られたのも事実だった。


だが、今回の検証の為にはどうしてもデービッドである必要があった。

もし、デービッドが生きていたら、あそこでディアボロスは蘇っていたかもしれないのだ。


そう考えると、助手にいつも頼んでいた特製のブレンドをしたコーヒーに、手を伸ばす。


今日のコーヒーは、なんだかいつもよりもしょっぱいな─。


感傷的になっているクラッチ博士からは全く見えなかったが、窓から望む巨大なビル群を前に、この時間では珍しく陽炎が揺らめいていた。


感傷的になっている場合ではないのだが─。


世界の嫌われ者に、休息などない!

と、どこかの誰かが告げているかの様でもあった。


普段であれば、不可解な出来事には、子供の様にはしゃぐクラッチ博士ではあるが、今はそれどころではなかった。


しかし、時間は待ってくれない。

新たな事件の足音を鳴らす様に、変わり者自慢の事務所を訪ねるノックの音が聞こえた後に、扉が開いた。


新しい事件だ─!


そう直感すると、ハットをその顔に乗せたまま、扉に声を掛けた。


『何か用ですか?』

クラッチ博士の活躍を描いた、ドタバタサスペンスミステリーは、これにて一旦終幕。


続編をお楽しみに。

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