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デービッド

第6章


アメリカから始まり、南アフリカまで続く、不可解な連続惨殺事件……。


犯人は、一体…!?


そして、犯人の目的は…!?


世界の嫌われ者・クラッチ博士が、今日もこの不可解な連続惨殺事件に挑む!!

1985年12月27日。


アメリカ北部の、最近世界を賑わせている難解事件の最初の地である、とある村に世界の嫌われ者であるクラッチ博士に頼まれ、何かを調べる男が居た。


その名をデービッド・スカルと言い、自称エクソシストの助手としても優秀な、博士の身の回りの世話や、その影に隠れながらも裏で常に尽力する男は、誰にも告げずにこの地を訪れていた。


この連続惨殺事件の解決に向けて、何かしらの手掛かりを掴んだらしい。


ここ最近では珍しく、毎日の様にご機嫌な、学会の鼻つまみ者から手紙を受け取ったのは昨日の事である。


出来る限り隠密に、そして早く動いてくれ─!!


と、受け取った手紙には記されており、大慌てで荷物をまとめると、この村へと旅立ったのだった。


雪がいくらか積もり、辺りを銀世界へと染めようとする村へと降り立つと、あの当時のメモに書かれた情景も少しずつ変わりつつある。


しかし、そんな変わり始めた思い出に浸る事なく、優秀な助手は元保安官宿舎に始まり、村外れのエド爺さんの家、また村人全員の家の中に至るまで、事細かに書かれたメモを片手に、1人黙々とその足で寒さと格闘しながら散策を続けていた。


状況を整理しながらも、新たな発見をする度にメモが増えていく現状に、冬の寒さも相まって苛立ちを覚えながらも、頭を悩ませていた。


『なぜ、アイツはココにもう1度来いと言ったのだろうか?』


いつも突然に、指令と言われる手紙は届く─。


小説を読む事をこよなく愛するデービッドは、新しい小説を手に入れたり、新たに見つけたり、また、教えて貰える度にたまらなく高揚感を得る程の、文学オタクと言っても良かった。


しかし、そんな助手の心などお構いなしに、クラッチ博士からの不幸の手紙はやって来るのだ。


赤い封筒に入り、中にはどこか焦げた様な、日焼けをした様なうす汚れた便箋に、お気に入りの万年筆で書かれた、おおよそ他の人では読めない様な暗号文に近い、汚い文字が並んでいる。


きっと、長い付き合いのデービッドでなければ、解読は難しいかもしれない。


今回もそうだった─!


心の中では、正直怒鳴りつけてやりたい時もある。

何度も意見の食い違いにより、衝突した事もある。


だが、そんな彼が助手として馬車馬の如く働かされたとしても、理不尽な要求を受けたとしても、決して世界の嫌われ者・クラッチ博士の元を離れないでいるのには、確かな理由があった。


デービッドもまた、学生時代から学者を目指し、独学で研究に勤しんで来た1人である。


そんな彼は、悪魔や、亡霊や、呪いと言った類の物に夢中になり、世界に広がる無数の本がある中でもなんとか、自分で手に入れられるだけの本は、読み漁って来た。


その研究者を目指す過程で、1人の力では研究資料も思う様に集められず、当然ながら周りからの反対も多く、挫折をしかけていたそんな時に、あろうことか学会で、


呪いは存在する─!!


と、発表をした男がいたのだ。


デービッドにとっては英雄の様な、神の加護を授けたかの様な、当時の彼にとってはまさに、光の象徴とも言えるべき男が現れたのだ。


そこから、連絡を取り合うまでの仲になると、変わり者同士が仲良くなるのに、大した時間を必要とはしなかった。


そんな、自らの進むべき道を示してくれた雲の上の存在とも言うべきクラッチ博士は、デービッドにとって普段は全く口には出さずとも、学者への道を繋いでくれた恩人でもあった。


村の中心部の散策も全て終わろうとする頃、その身を照らしていた、西陽が山に隠れようとしていた。


急ぎ彼は、どこか寝床を探さねばなるまい─。


と、考えていた。


オレンジへと染まり行く空を見上げると、遠くには雨雲なのか、雪雲なのか、ドス黒く濁った怪しい雲も見え始めている。


『天気が変わっても困るしなぁ…。』


そう呟く助手のデービッドは、自身に向かってくる冬の風をコートで防ぐと、マフラーを巻き直した。


このメモを、どうしてもアイツに届けねばならないのだ─!


そう考えながら、出発前のクラッチ博士との電話でのやり取りを思い出していた。


『帰れないと判断したならば、元保安官宿舎に泊まるといいだろう。』


そう言われた事もあり、村外れの元保安官宿舎へと足を進める。


なぜ元保安官宿舎なのだろうか─?


確かな疑問はあったが、この村で唯一の死体が存在しなかった家でもある。


1番マシな就寝が出来るかもしれない─!


そう思うと、少しは気持ちが楽になった。

明日にはこの村を出よう!


そして、また至福の読書を堪能しなければ─。


と、考えると嬉しさのあまり口元はニヤけていた。


まだ読んでいない本が大量にあるのだ。

これから読みたい本も、買ったばかりの本だって。


夜中の3時を過ぎた頃。

元保安官宿舎の玄関を、ノックする音が聞こえた。


その音で目覚めた助手は、恐る恐る玄関へと忍び足で近寄る。


こんな時間に誰だろうか─?


まさか、あの嫌われ者がこんな時間に来る事などあるまい─。


そう思い、意を決して玄関の扉の前へと立つ。

ノックする音は、確実に家の中に誰かがいる事を知っている叩き方だった。


用心の為に、右手には隠していた護身用のナイフを持ちながら、左手でドアノブを回した。


『お、お前は………!!』


一瞬で、その顔が恐怖に引き攣る。

動く間も与えられないまま、


グアッ!!


と、何者かに一刀され声を上げると、

そのままうつ伏せに倒れたデービッドは、絶命していた─。

優秀な助手・デービッドをその手にかけた犯人は一体、誰なのか……!?


そして……クラッチ博士は、一体どこに!?


この不可解な連続惨殺事件は、あと何件発生し、どこへ向かおうとしているのだろうか─?

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