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セルゲイ

第4章

アメリカ、イタリア、アルゼンチンと続いた不可解な連続住民惨殺事件の犯人を探す、自称エクソシストのクラッチ博士。


今度の舞台は、極寒の地・ソビエト連邦へ…


果たして、世界の嫌われ者は犯人の手がかりをつかむ事が出来るのか!?

─時は1985年。

ソビエト連邦北東部の、早くも雪が見え始めた小さな農村。


11月10日。

そんな、雪が見え始めた小さな住民80人程の村でも、難解な事件に遭遇していた。


事件を担当したのはセルゲイ警部(40)。

やり手のベテラン警部も、やはり頭を抱えていた。


昨晩の事である。

何気ない、些細ささいな事から始まった、息子との口論が原因だった。


いつも通り、そのまま息子のボロムと取っ組み合いの大喧嘩に発展する事になる。


殺すぞ!や、お前には何がわかるのか!

などと、お互いの口から発せられる汚い言葉の応酬による罵り合いにもなった。


こんなケンカは、決して珍しくない。

村中の誰もが知っていたのだが、

毎回酒が入ると、気性の荒い2人による親子喧嘩は歯止めが効かなかったのだ。


二日酔いと殴り合った事による痛みで目が醒めたセルゲイは、いつも通り後悔をしていた。


昨日は、言い過ぎた─。


額に手を当て、決して本心じゃない!

と、そんな謝罪をしようとした愛する息子のボロムを始め、セルゲイを除く住民全員が扉の前でうつ伏せに倒れ、血を流し、死んでいたからだ。


どの家を訪ねても、誰1人生きてはいなかった。

セルゲイ警部は、急ぎ民警の仲間へと連絡をする事にした。


そんなチラホラと雪が見え始めた農村に民警が到着し、やり手のベテラン警部セルゲイ警部が逮捕されるのに時間は必要なかった。


─11月25日


逮捕された元警察官の元に、世の中のヘイトを一心に買った自称エクソシストが現れた。


面会室に入るなり、開口1番セルゲイに話し掛けたクラッチ博士。


『この村の事件は非常に難解であり、奇妙ではあるが、コレが初めてのケースではない。あなたを、きっと助けてあげられるだろうと思いますよ。』


椅子に腰掛け、ゆっくりとその手に握られた飲み物を口に含みながら元警部の様子をじっと見つめる。


その口からどんな言葉が出るのかを思案している感じだ。


『初めてのケースではない?それは、どういう意味なのだろうか?それよりも、君なら私を助けて貰えると言う事で問題ないのか?』


矢継ぎ早に質問を重ねるセルゲイ。

ここまで彼を信じる人は誰1人としておらず、

元警部と言う事もあり、殺人容疑の男への取り調べは苛烈(かれつ)を極めていたであろう事は容易に想像が出来る。


─!!

博士は一瞬、目を疑った。


顔や首には何かで叩かれた様な、くっきりとその形を残したアザが見える。


相当酷い仕打ちを受けている事は、素人のクラッチ博士の目にも明らかだった。


早く助けなければ、この元警部は殺されてしまうかもしれない─!!


焦る気持ちを抑えつつも、今は詳しい事はまだ言えないのですが……。

と、前置きした上で、クラッチ博士は話し始めた。


『あなたの、今の役職は、セルゲイ…元警部…でしたね。あなたが今私に質問を続けた様に、実際あなたを助けてあげられるだろう、と言う確証が私にある訳ではありませんが、似た事件が世界中で起こっている事は事実なのですよ。』


ここまで話してから、ふ〜っと深いため息を付いたクラッチ博士。


『ここまでで起きた、最近、世界を賑わせている3件の住民惨殺事件の状況と、今回の事件の状況があまりにも酷似しているのです。』


と言う事だけを伝えると、

必ず事件の解決の為にはあなたの力になる為に、また来ますよ!


と、同じ警察の仲間すら、信じられなくなったであろう元警部へ声を掛けると、その場を後にした。


─11月30日


セルゲイ警部からの聞き取りを終え、アメリカへと帰国した世界の嫌われ者。


最近、かなり寒くなって来た─。


だが、ソ連よりはまだまだマシか。。


一言ボヤくと、

古ぼけた博士自慢の事務所の中で1人窓に向かい、冬の到来を告げるかの様な、クラッチ博士にとっては骨まで沁みる冷たい風を睨みつけながら、ギーギーと鳴く床の上を歩き回る。


そろそろ準備でもするか─。


何年も愛用しているお気に入りのオイルマッチを使い、わずかばかりの温もりを与えてくれるストーブに火を付ける。


すきま風がたっぷりと入ってくる為に、暖まるまでには時間がいくらかあるだろうから、今までの事を少し整理しなければならないな……。


そう考えると、いつも通り肘掛けの半分取れかかった椅子の背もたれに体を預け、顔にハットをかぶせた。


彼にはこのポーズをした時の、メモを見返したり、新たなメモを取ると言う習慣はなかった。


彼の頭脳を持ってすれば、頭の中で計算や状況整理など、全て済んでしまうからだった。


部屋の中が暖まって来れば、眠くなってしまうかもしれない─。


世界中を忙しく飛び回る嫌われ者は、疲れていた。

眠くなってしまえば、仕事は捗らない。

そうなる前に、ある程度までは片付けてしまいたかった。


さてさて─。

事件を振り返ってみよう。


今まで起きた事件は、4件。


アメリカ→イタリア→アルゼンチン→ソ連。。


関連性は小さな村や街で、住民全員が扉の前でうつ伏せに倒れ死亡している事。


容疑者は警察関係の仕事をしていた事。


第一発見者以外は全員殺されている事。



……他には、何かないか?




何か、、、、見落としてる点は?



……他に……は……



─zzzzz

ついに、4件目が発生してしまった。

世界中を飛び回り、ソビエト連邦での被害者で容疑者の聞き取りを終え、自慢の事務所へと帰還したクラッチ博士。


いつもの考えるポーズをしながら、大事な事を思い出そうとするのだが…。

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