黒騎士は孤独なまま生き続けるR2
魔法栄える国。
その国の中に、一人の騎士がいた。
それは黒い鎧に身を包んだ男。
菫色の髪と瞳を持つ少女を守る、一人の男だった。
自らの主である少女を慕うその騎士は、どんな敵も葬りさってきた。
竜を倒すものや、巨人を相手取る敵にも臆さない。
そうして、大切な人を守って来た。
しかし騎士は、ある日仕える主人を亡くしてしまう。
悲嘆に暮れていた騎士は、自らもその後を追って、命を断とうとしたが、そこに声をかける者がいた。
その者の名前はネメシス。
魔女だった。
魔女は、少女を生き返らせると騎士に約束した。
騎士は喜んだが、それには対価が必要だった。
それは、大勢の命。
一度失われた一つの命の復活には、その他の大勢の命が必要だった。
だから、騎士は魔女に言われた通り大勢を葬り続けた。
騎士としての矜持をすてて、ただ一人のためにと。
多くの者達は、騎士の乱心だと言って、討伐しようとした。
しかし騎士は強く、敵う者は誰もいなかった。
その結果。
魔女は願いを叶え、騎士は少女と再会したが。
それは、騎士にとって都合のいい幻でしかなかった。
「たとえ実体がなくとも、生きていなくても、騎士にとって生きているならそれが真実」
魔女は笑う。
中途半端な取引で騎士を弄んだ魔女は嗤う。
「あなたが生き返ってよかった。もう二度と死なせたりはしません」
騎士は、ただ生きてもいない、ただの幻へとずっと微笑みかけていた。