昼休みに。
もう少しゆっくりさせてくれてもいいよ?
昼休み。空が落ち着いたところで陸人は食事を再開しようとする。
陸人はいつもの弁当箱を持ってきて…いなかった。
あー、朝。急いでたから忘れたな。陸人はそう考えていた。
普通ならここに来る時に気づくものだろう。
「そういえば、りっくん?ご飯は?」
「今日は少し急いだから忘れた、みたいだ」
「そうなの?それなら…」
弁当を忘れる。それは普通なら昼ごはんが食べれなくて困る。しかし、その方が都合が良かったようだ。空にとってはだが。
「はい!あーん」
恥ずかしそうに、しかし嬉しそうに空は弁当箱から卵焼きを箸で出し、陸人の口元に持っていく。
「そ、空?流石に…」
陸人はそれに戸惑う。空と仲が良いとは言ってもされたことはない。もちろんしたこともないが。
そして、いくら人目がないと言っても恥ずかしいものは恥ずかしい。それとおかずをもらってしまうという申し訳なさもある。他にも嬉しい感情も、もちろんあるが唐突で陸人は自分の感情に気づけていなかった。
「ほら!口開けて!」
急かすように空が言う。それに押し負ける陸人。
「わ、わかったよ。あー、ん」
「ど、どう?おいしい?」
押し負けた陸人がモグモグと卵焼きを食べている。
それを緊張した面持ちで感想を聞く空。少し不安そうだ。
「うん…。そうだな…」
陸人は悩ましげに唸ってなかなか感想を言わない。
そんな陸人を見て空の顔は不安そうだ。それを確認した陸人は言う。
「うん…!おいしい!ほんのりした甘さがいい!」
そう声を上げた。陸人の家では卵焼きに砂糖を入れる。そんな家庭だった陸人の舌には程よい甘さの卵焼きは非常に口に合っていた。
それを聞いた空は不安そうだった顔を一転して嬉しそうにする。
「もう!美味しいなら早くそう言えばいいのに!…なんで焦らしたの?」
「それはだな。お返しみたいなものかな?昔はやられっぱなしだったしな」
陸人は笑いながら言う。そう、陸人は小学校の頃はなんだがんだで空に翻弄されていたのだ。もちろん空は無意識とかではなく意識的にしていたのだ。おそろしい女性である。
「そうかな?でも、そうでもないよ?りっくん、かっこよかったもん。あ、もちろん今もね?」
おい、空。そう言うところだぞ。お世辞だと感じているが照れてしまう陸人はそう思う。
2人はそのまま昔話に花を咲かせながら昼休みを過ごした。
2人が話していると昼休み終わりの予鈴がなる。
「さて、そろそろ戻るか」
「うん!…んん!そうね?」
言葉を大人びたようにする空。
「なぁ?空。言葉使いをかえる必要あるか?」
「その、りっくん以外と話すのはなんだか恥ずかしくて…」
そう言いながら恥ずかしそうに頬を染める空。そんな空を見た陸人は本当なことなんだろうな、と思う。
「それなら仕方ないけど、いずれは慣れないとな?」
「慣れる必要は無い、かな…?」
「それじゃ、これから教室でどうするんだよ…。まさか話すのが俺だけとか無理だぞ?空と話すときに周りから視線を感じるからな?」
「…そうなの?でも、それならりっくんこそ慣れたらどうなの。小学校の時からじゃない」
「小学校の頃はだな。まだみんな優しい視線だったよ…。今はなんていうか、圧を感じるんだよ…。よく海と話してる時も感じるしな」
小学校と高校生では体格はもちろん顔つきも違う。そして威圧感も。目立つのが苦手な陸人が耐えれる視線ではなかった。
「真昼さん…?よく話すんだ。へぇ?」
空にジト目と少し低い声で言われる。言葉外で私とは嫌で、真昼さんとはいいんだ。そう言われている気がする陸人。
「いや、その、そういう意味じゃなくてだな?」
陸人は教室に戻る間、ずっと誤解を解こうとしたが、空は不機嫌なまま話を聞いてくれなかった。
教室の前までくると、
「ふふ。そうして話してくれたらいいのよ?」
突然、不機嫌だったはずの空が笑って言う。
「はぁ、そう言うことか。…善処する」
いつもなら簡単に許してくれる空がなかなか許してくれない、と思っていた陸人は納得した。
小学校からの付き合いだからなんとなく察せるのだが、空はそろそろ機嫌をなおすだろうと陸人は思っていた。
小学校からの付き合い。それは空も同じで、不機嫌なフリをしたらおそらく陸人が誤解を解こうとする。空はそれを分かっていたのだ。
だから不機嫌なふりをする事で俺に喋らせたんだな。それでその調子でこれからも話してくれ、と。それが陸人の納得した理由だった。少しは空の悪戯な部分もあったのだが。
話すのはもちろんいいが、これから大変になりそうだ。陸人はそう思うのだった。
頭が回ってない時に書いたので後々書き換えます。